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Ⅰ群、Ⅱ群病院の機能評価係数Ⅱの重み付け変更見送り

Ⅰ群、Ⅱ群病院の機能評価係数Ⅱの重み付け変更見送り

【中医協・DPC 評価分科会】委員から慎重な意見が相次ぐ

 中医協のDPC 評価分科会(山本修一分科会長)は9月1日、DPC 対象病院の基礎係数(Ⅰ群、Ⅱ群)の機能評価係数Ⅱの重み付け変更について議論したが、委員から慎重な意見が出たため、変更しないことを決めた。厚生労働省は、Ⅰ群病院は平均在院日数短縮(効率性係数)、Ⅱ群病院は総合的な体制(カバー率係数)の係数の割当て分を増やすことを論点としたが、見送る。
 DPC 制度の機能評価係数Ⅱは現在8項目(保険診療指数、効率性係数、複雑性係数、カバー率係数、救急医療係数、地域医療係数、後発医薬品係数、重症度係数)。次期診療報酬改定では、後発医薬品係数と重症度係数は廃止し、導入時の基本6項目に戻す方針だ。その上で、現在は「等分」で評価している基礎係数(Ⅰ群、Ⅱ群、Ⅲ群)ごとの重み付け変更を課題とし議論してきた。
 特にⅢ群については、病院間のばらつきが大きく、重み付けの変更が議論された。しかし、例えば、専門病院とその他病院で分けて、重み付けを変更し、相対評価を行うと、専門病院が得意とする複雑性係数は下がり、苦手とする地域医療係数は上がるなど、変更後の方が、評価が低くなった。このため見直しは行わないことを決めている。
 今回、厚労省は残る課題のⅠ群とⅡ群の重み付けの変更を議題にした。
 具体的には、①Ⅰ群は在院日数短縮の努力を促すため、効率性係数を重くする②Ⅱ群は総合的な体制をより評価するため、カバー率係数(1カ月12症例以上算定する診断群分類数を評価)を重くする─の2点が論点になった。
 Ⅰ群を構成する大学病院本院は、多くが高度な機能の医療を提供する特定機能病院で、総合的な体制があり、症例の特性から在院日数が他の病院と比べると長くなる傾向があると指摘される。複数の疾患で2003年と2016年の状況を比べると、平均在院日数は短縮し、病院間のばらつきは小さくなった。
 しかしそれでもⅡ群やⅢ群と比べると、長い傾向があり、在院日数短縮の取組みを促すことが提案された。しかし委員からは、「地域性の問題が大きい。大学病院も在院日数短縮に努力するが、転院・退院が難しい事情がある」、「軽症患者を多く入院させれば、見かけ上は、平均在院日数が下がる問題がある」など慎重な意見が相次いだ。一方で、全日病副会長の美原盤委員は、「重症患者が大学病院に多いという明らかなエビデンスがない以上、平均在院日数が長くてよいとの理由にはならない」と指摘。ただ「必ずしも重み付けをする必要はない」と主張した。
カバー率係数の重み付けは変えず
 Ⅱ群については、「診療密度」、「医師研修の実施」、「一定の医療技術の実施」、「一定以上の複雑性」の要件で、Ⅲ群より高い基礎係数が設定され、より高い総合的な体制が期待されていると、厚労省は指摘した。Ⅰ群よりカバー率係数は低く、Ⅲ群を含めた全体との比較でも、カバー率係数が低いⅡ群病院があるため、論点にあがった。
 しかしこちらについても、「同じ地域にⅡ群病院があり、得意分野を活かして連携する病院がある。カバー率係数の割り当て分を増やせば競合し、地域医療構想にも反する」など、慎重な意見が多かった。美原委員も、「今回重み付けを変更する必要はないと思う。
 ただDPC 制度は、効率性と複雑性が評価されるものであってほしい」と述べた。これらの意見を踏まえ、分科会としては、Ⅰ群とⅡ群の重み付けは変更しないことで合意した。
 救急医療係数についても議論した。
 現在、「救急医療管理加算」を算定している病院は、その算定患者を対象に係数を計算し、算定していない病院は別の要件で対象患者を計算している。対象患者の基準が異なる上に、それぞれの算定患者の判定でも病院の判断が異なっているとの指摘がある。このため中医協での「救急医療管理加算」の見直しの議論を踏まえ、整理を行う。

 

全日病ニュース2017年9月15日号 HTML版

 

 

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