全日病ニュース

2017年度の処遇加算見直しで月平均１万2,200円の上昇

【厚労省・介護給付費分科会】新設の加算（Ⅰ）は１万3,660円の賃金アップ

　厚生労働省は、４月４日の社会保障審議会・介護給付費分科会（田中滋分科会長）に、2017年度の臨時介護報酬改定（介護職員処遇改善加算の見直し）が介護従事者の処遇状況に与えた影響を調査した結果を報告した。
　それによると、新たな介護職員処遇改善加算の（Ⅰ）～（Ⅴ）を取得した施設・事業所（全体の91.2％）における介護職員の平均給与額（常勤者・月給＝2018年９月）は、前年同月比１万2,200円の上昇となった。同様に、新たな加算（Ⅰ）を取得した施設・事業所（同64.9％）の平均給与は、全体平均を大きく上回る１万3,660円の上昇となった。
　介護職員の処遇改善は、2009年度介護報酬改定（月額9,000円）、2009年度補正予算における交付金（同1万5,000円）、2012年度改定（同6,000円）、2015年度改定（同13,000円）とすでに４回実施され、月額43,000円相当の引き上げという効果（実績）が生じている。
　2017年度臨時改定は介護職員の処遇をさらに月額平均１万円相当改善するために実施された。その目標を上回る結果が出たことについて、厚労省老健局の鈴木健彦老人保健課長は「施設・事業所の自助努力が伺える」と述べ、企業努力によって加算額を上回る賃上げが実施されたという認識を示した。
　改定の成果がみられるという厚労省の認識に対して、「有効求人倍率が高くなっている。それだけ介護に回る求職者は少なくなる」「介護分野の賃金水準は産業全体と比較してまだ低い」「賃金以外の不満が介護離職の大きな理由としてある」など、現状の厳しさを指摘する意見が目立った。
　賃金引き上げの実施方法（複数回答＝予定を含む）をみると、①給与表改定による賃金水準の引き上げ（22.5％）、②定期昇給の実施（66.4％）、③手当の引き上げ・新設（44.7％）、④賞与等の引き上げ・新設（19.1％）─と、事業者の事情に応じて様々だ。
　一方で、処遇改善加算をどれも取得していない施設・事業所が8.8％ある。
　サービス種類別の割合は、介護療養型医療施設が30.9％と突出して高い。
　処遇改善加算を取得しない理由をみると、「事務作業が煩雑」51.3％、「利用者負担の発生」39.6％になっている。
　また、「対象の制約のため困難」とする割合は全体では26.8％と相対的に低いが、介護療養型医療施設では53.0%に達している。
　「対象の制約」とは処遇改善の対象に看護職員が入っていないことを意味する。加算（Ⅰ）を取得しない理由に関する設問では、介護療養型医療施設の51.8%が「職種間・事業所間の賃金のバランスがとれなくなることが懸念される」と回答している。この問題について、この日の分科会では、数名の委員から「処遇改善加算の対象の拡大を検討してはどうか」という意見があった。
　処遇改善に関して、分科会は今後、「新しい経済政策パッケージ」（昨年12月8日）において、消費税率10%引き上げで生じる増収分1,000億円を公費投入すると明記された介護職員の新たな処遇改善（実施時期2019年10月）に向けて議論を進めることになる。

　この日の分科会に、厚労省は、2018年度改定の影響・効果を検証する調査を2018～ 20年度の3カ年に分けて実施する方針を示し、了承を得た。そのうち、2018年度に行う調査項目は以下のとおり。
①介護保険制度におけるサービスの質の評価
②介護ロボットの効果
③居宅介護支援事業所・介護支援専門員の業務等の実態（タイムスタディ調査を含む）
④福祉用具貸与価格の適正化
⑤介護医療院におけるサービス提供実態等
⑥介護老人福祉施設における安全・衛生管理体制等のあり方
⑦介護老人保健施設における安全・衛生管理体制等のあり方
　⑤の介護医療院に関しては、転換した介護医療院だけでなく、転換候補となる介護療養型医療施設、医療療養病床、介護療養型老健の全施設を対象にサービス提供の内容等を調べ、今後転換した場合の変化を比べる基礎データとする。