全日病ニュース

来年度改定の基本方針策定に向け議論開始

【社保審・医療部会】地域医療構想の診療実績データの取扱いも議論

　社会保障審議会医療部会（永井良三部会長）は９月20日、2020年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論を開始した。全日病会長の猪口雄二委員は、改定に当たっての基本認識として、働き手不足が深刻になることの記載が重要だと強調するとともに、中医協で改定の個別項目の議論が終盤を迎える12月初旬に基本方針が策定されることに違和感を表明した。
　診療報酬改定は、医療保険部会・医療部会が基本方針を12月初旬に策定し、内閣が12月中下旬に改定率を決定。それに基づき、厚生労働大臣は中医協に改定内容を諮問する形を取る。しかし、実際は、中医協が夏までに全体の方向性を議論し、秋以降は個別事項を論点とする本格的な議論に入っている。
　猪口委員は、「（基本方針を意味あるものにするのであれば）もう少し早く出すべきで、９月頃に出れば中医協の議論に間に合う」と述べた。厚労省からの返答はなかった。
　改定の基本認識としては、◇健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障の実現」◇医師等の働き方改革の推進◇患者・国民に身近な医療の実現が例示された。
　猪口委員は「医師の働き方改革の推進」が例示されたことについて、「政府の働き方改革があるから、医療従事者の業務負担の軽減や業務効率化が必要というよりも、今後の人口減少社会、働き手・支え手不足が深刻であることがより重要だ」と強調した。
　改定の基本的視点は、概ね近年の改定を踏襲している。財政的観点では、医薬品の適正化に関して列挙しており、◇後発医薬品の使用促進◇残薬や重複投薬、薬剤耐性、ポリファーマシーへの対応や長期処方時の適正使用等◇費用対効果評価◇市場実勢価格を踏まえた適正な評価─などを示した。
　そのほか、地域医療構想や医師の働き方改革をめぐる議論を行った。
　地域医療構想については、再編統合が必要な公立・公的病院の診療実績データを分析して、再検証することになっている。公立・公的病院や自治体に関係する委員からは、「山間部、離島・へき地など公立・公的病院が不可欠な地域があり、その地域の体制を維持すべき」、「再編統合の必要のある病院として公表されれば、医師・看護師が離れてしまう」などの意見が相次いだ。
　日本医療法人協会会長の加納繁照委員は「中小病院よりも大病院で診療実績が多くなるのは当たり前。病床当たりの診療実績などを考慮すべき」と指摘。厚労省は「病院の効率性を示す追加データは提供したい」と回答した。