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ホーム全日病ニュース(2019年)第949回/2019年10月1日号診療実績データ提出の要件化の対象病院を拡大へ

診療実績データ提出の要件化の対象病院を拡大へ

診療実績データ提出の要件化の対象病院を拡大へ

【中医協・入院医療等分科会】短期滞在手術等基本料は想定と実態で齟齬

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は9月19日、次期診療報酬改定の入院医療の課題として、診療実績データ提出の要件化と短期滞在手術等基本料の見直しを論点とした。診療実績データ提出の対象病院は前回改定に引き続き、拡大させるべきとの考えで概ね一致した。
 診療実績データの提出の主な目的は、DPC対象病院と同様に、包括評価となっている部分の医療提供の中身を把握することである。データ提出の対象病院は段階的に広げており、2018年度診療報酬改定では、すべての急性期一般入院料と地域包括ケア病棟、200床以上の回復期リハビリテーション病棟入院料と療養病棟入院基本料に拡大している。
 次期改定でも拡大を行うとすると、回復期リハビリテーション病棟5、6と療養病棟入院基本料の200床未満が対象になる。厚生労働省は、仮に50床以上に拡大した場合、経過措置の対象を含め、回復期リハ病棟では62.3%から87.2%、療養病棟では29.5% から91.7%に上昇すると説明した。
 また、回復期、慢性期や精神病院で必須の項目である要介護度やFIMのデータ提出を、急性期病棟にも拡大することにも、賛成する意見が多かった。ただ、全日病副会長の神野正博委員は、方向性に賛意を示しつつ、病院によりデータ提出が可能な体制は異なるため、現場の状況を踏まえた対応を求めた。
 提出データの質の高さを評価する提出データ評価加算については、未コード化傷病名の割合を引き上げるなど、基準を見直すとの論点が示された。
 短期滞在手術等入院基本料についても、見直しの方向性が示された。厚労省の分析により、当初想定した日数や医療資源投入量と齟齬がある事例が多くあることがわかったからだ。
 特に、一泊2日を想定した短期滞在手術等基本料2で10日前後入院する対象手術が多く、ばらつきも大きく、算定回数も少ないなど、想定と異なる状況になっていた。委員からは、「重症な患者だと入院期間が長くなりがち」との指摘のほか、「『2』はすでに役割を終えた」との意見があった。
 短期滞在手術等基本料3については、外来で実施される対象手術が散見されることを確認した。一方、「3」は4泊5日までの入院の医療資源投入量を包括した報酬なので、入院で実施するインセンティブになってしまっていることを、厚労省が指摘。見直しの必要性を示唆した。なお、DPC対象病院は「2」、「3」を算定できない。

「基準2のみ該当」で様々なデータ
 「重症度、医療・看護必要度」の追加調査の結果が示され、「基準2」の妥当性が議論された。「基準2」は、2018年度改定で導入した基準で、「診療・療養上の指示が通じる」、「危険行動」に該当すれば、「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たしやすくなる。2018年度改定でせん妄や認知症の患者の負担に配慮したためだ。しかし、同分科会で厚労省が提出するデータから、急性期病棟にふさわしくない患者が該当しているとの指摘が出てきた。
 追加調査では、『基準2のみに該当』の患者の状況が様々なデータで示された。神野委員は、「『基準2のみに該当』はけしからんという風潮がある中で、何らかのイベントがあり、『基準2のみに該当』することになったとのデータがあり、心を強くした」と述べ、『基準2のみに該当』が急性期病棟の患者の重症度を測る評価指標として、一定の妥当性があると主張した。
 一方、「重症度、医療・看護必要度」の「Ⅰ」で、『基準2のみに該当』した患者の1日当たり医療資源投入量がゼロの患者が約4~5割を占めるとのデータも示された。これに対しては、「医療資源投入量がゼロというのはあり得ず、実際の医療提供が記録されていない」との指摘があり、記載の不備の問題とされた。ただ、『基準2のみに該当』の患者は、療養病棟の患者と病態が近く、急性期の指標としては、適正化の議論が必要との意見も複数の委員から出ている。
 療養病棟入院基本料の医療区分・ADL区分の追加調査の結果も示された。医療区分3の該当項目で「中心静脈栄養」の割合が高く、入院基本料を満たすために、患者を選んでいる施設があるのではないかとの指摘がある。該当患者の半数以上が180日以上の在院期間があり、感染リスク上の観点からの懸念もある。
 追加調査では、中心静脈栄養の該当患者割合が10%未満の施設が最も多かったが、50%以上の施設もあった。日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「90%以上該当の施設もあり、そこは患者を集めていると言わざるを得ない」と述べた。
 なお、日本麻酔科学学会の「安全な中心静脈カテーテル挿入・管理」の手引書によると、「留置期間が長いほど感染のリスクが高まる」と指摘しているが、期間は明示せず、「臨床的必要性に基づいて決めればよい」としている。
 また、地域包括ケア病棟で行われている手術(短期滞在除く)は、「水晶体再建術」と「内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術」が多いことがわかった。

 

全日病ニュース2019年10月1日号 HTML版

 

 

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