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ホーム全日病ニュース(2022年)第1012回/2022年7月1日号10月以降も病院がコロナに対応できる方法を検討

10月以降も病院がコロナに対応できる方法を検討

10月以降も病院がコロナに対応できる方法を検討

【第10回定時総会】看護の処遇改善は100通りの加算で対応する案が有力

 全日本病院協会は6月18日に第10回定時総会を開き、2021年度の事業報告を行い、決算を承認した。総会では、猪口雄二会長が出席者の質問に答えて新型コロナ感染症の今後の対応や看護の処遇改善に関する診療報酬の対応について、現在の検討状況を説明した。処遇改善は、100通りの加算で対応することで、「消費税の対応より実測に近いものになる」と見通しを示した。なお、新型コロナウイルスの感染防止の観点から、来賓の招待は控えた。

一番心配なのは医師の働き方改革

 冒頭に挨拶した猪口会長は、新型コロナの感染状況について、「感染者数は徐々に減っているが、これから外国人観光客が入ってくるので減っていくかわからない気がする」と慎重な見方を示した。
 6月17日の新型コロナ感染症対策本部で、病床確保の協定を都道府県と医療機関が結ぶなどの方針が示されたことを受けて、「コロナの入院を受け入れることに対し、ある程度、法的な整備がなされる。命令のような形ではなく、協議の上でどのような形で受け入れるかを決めることになってほしいが、法的整備は厳しい処置だと思う」と述べ、新たな対応は秋口頃から始まるとの見通しを示した。
 骨太の方針に「かかりつけの制度化」が書き込まれたことについては、「どのような形でつくっていくのか、近々に議論が行われる」と述べた。
 猪口会長は「一番心配なのは医師の働き方改革である」と述べ、実施まで2年を切っている段階で一般病院は4割程度、大学病院は2割程度しか医師の働き方の実態を把握できていない状況であるとし、「本当に2年後に始まるのか、極めて不透明だ」と懸念を示した。また、宿日直許可について、四病協・日医の要望を受けて、厚生労働省に相談窓口が設置されたことを紹介。「ガチガチの規則ではなく、事情があれば認められるようになっている」と述べ、多くの病院が宿日直許可を取得できるように働きかける考えを示した。
 猪口会長は、「全日病は中小の民間病院が主体であり、地域の中で自分たちの役割を確立していくことが最も重要だ。それぞれの病院が自らの存在価値を高めるようにしていただきたい」と呼びかけた。

2021年度の事業を報告、決算を了承
 続いて議事に入り、織田正道副会長が2021年度事業報告を行った。2021年度は、新型コロナ感染症に対応するため、理事会等で感染状況を確認し対応を協議したほか、厚労省等からの情報をホームページや会員向けメールで随時情報提供した。各方面から寄せられた寄附金をコロナに対応した病院に配布。3病院団体合同で病院経営調査を実施し、必要な支援策を検討し要望活動を行った。5年ぶりに「病院のあり方に関する報告書」を発行し、2040年における理想的な医療・介護体制を実現するための提言を行った。第62回全日病学会を岡山支部の主催で、初めてのWEB開催で行ったことを報告した。
 次に、中村康彦副会長が2021年度決算を説明し、承認された。2021年度決算は、経常収益が11億3,309万円、経常費用が11億3,305万円で、38,000円の黒字となった。新型コロナウイルス感染症対策で、5億3,500万円の寄附が寄せられた。

感染爆発に対する備えは当然必要
 総会では、当面する課題について質問があり、猪口会長が答えた。
 兵庫県の古城資久理事は、新型コロナに対する補助金が9月で打ち切られる見通しであることから、10月以降の対応を質問。「コロナ患者に今まで通りの対応はできないことを世間に知らしめてほしい」と述べた上で、「空床補償は難しいとしても、発熱外来の補助は続けてほしい。入院に対しても診療報酬で対応してもらわないと民間病院はコロナ患者を診られないし、世間からバッシングを受けることになる。コロナ患者が来た場合の補償を準備してほしい」と要望した。
 猪口会長は、「今のまま感染者数が減っていけば、現在のやり方は9月いっぱいで終る」とした上で、その後は前年度保障という案が検討されていることを明らかにした。「財務省は一点単価を変えて補償すると言うが、これは乱暴な方法だ」として、財務省の主張とは別の方法を検討し、「病院が損害を被ることなくコロナに対応できる方法を話し合っていきたい」と述べた。
 また、「爆発的に入院患者が増えることがないという保証は一つもない。当然備えが必要だ」と述べ、空床補償を含めて多面的に検討する考えを示した。

看護の処遇改善の検討状況を説明
 また、古城理事は、看護師・介護士に対する処遇改善事業補助金が9月末で打ち切られ、診療報酬と介護報酬で対応することとされているが、どのように対応するか明らかになっていないとし、「かつての消費税対応のように外来の再診料にも薄く乗せられると病院としてはたまらない。処遇改善を診療報酬でどのように対応するのか」と質問した。
 猪口会長は、中医協の入院・外来医療等の評価・調査分科会の検討状況を説明。「看護職の人数に応じて、病院がもらわなければいけない金額が出るので、それをどうやってニアリィ・イコールにするかという話になっている」とした上で、有力な案として、必要な金額を入院料の回数で割り込んだ点数(1~ 100点)を上乗せして支払う方法が検討されていることを明らかにした。「1~ 100点の100通りの点数を上乗せすることで、ほぼイコールのものが出せるところまで近づいている。消費税の対応よりもはるかに実測に近いものがつくれるのではないか」と述べた。

診療報酬で人件費をみるべきか
 茨城県の鈴木邦彦副支部長は、看護師の処遇改善補助金は、新型コロナに対応する医療機関が対象と言いながら、実際は救急搬送が年間200台以上の救急病院に限定されたことを指摘。「病院を分断する話になっている。すべての看護職に拡大すべきではないか」と質問した。
 猪口会長は、200台の線引きについて予算上の理由があったのではないかと推測する一方、「後方支援をしたり、外来に対応した病院もあり、この切り方がよかったとは思わない」と述べた上で、今後の対応について、「すべての看護師を対象にしてほしいと言うつもりであるし、日看協からもそういう要望が来ると思う」と述べた。
 その一方で猪口会長は、「それをやると今回よりも大きな額が診療報酬で出ることになる。本来あるべきではない診療報酬の中で人件費を直接みるというやり方を広げることになるが、それはいいことなのか」と述べ、次の診療報酬改定に向けて、「原点に返ってどういう方向で要望していくのかを考えていく必要がある」と述べた。

 

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