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ホーム全日病ニュース(2022年)第1012回/2022年7月1日号医師少数区域で医師数を減らさない目標設定を可能に

医師少数区域で医師数を減らさない目標設定を可能に

医師少数区域で医師数を減らさない目標設定を可能に

【厚労省・地域医療構想等WG】次期医師確保計画における医師偏在対策

 厚生労働省の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)は6月16日、医師確保対策における目標医師数や医師少数スポットの課題を議論した。病床機能報告制度の見直しも概ね了承した。ただ、全日病会長の猪口雄二委員は、強力な医師偏在対策となる有効な対策が、厚労省の論点では見出せていないと指摘し、医師偏在指標や二次医療圏のあり方を含め、再整理を求めた。
 医師確保計画の目標医師数については、計画終了時の医師偏在指標の値が、計画開始時点の医師少数区域などの基準値(下位33.3%)に達することとなる医師数を目標医師数に設定している。このため、目標医師数と計画開始時の医師数の差が、追加的に確保が必要な医師の数となる。
 ところが、医師少数区域(112区域)のうち、54区域において、目標医師数が計画開始時点の医師数を下回るという事態が生じていた。これは、人口の変化に伴う医療需要の減少により、計画終了時までに同一の医師偏在指標を達成するのに必要な医師数が減少してしまうからだ。
 厚労省は、この状況を踏まえ、医師少数区域で、医師確保計画策定時にすでに目標医師数を達成している場合は、医師数を減らさなくてすむように、目標医師数は計画時点の医師数を上回らない範囲で設定できるようにすることを提案した。
 また、医師多数区域と中程度区域の医師目標数は、都道府県が独自に設定できる。現状では医師多数区域と中程度区域において、未設定の区域や任意の基準で設定している区域が多く、任意の基準で設定している区域では、計画開始時点の医師数より多い目標設定を行っている区域が多い。
 厚労省は、医師多数区域と中程度区域が医師数を増加させる独自の目標設定を行うと、本来医師の確保を図るべき医師少数区域の医師確保が十分に実施できない可能性があるため、「目標医師数は計画開始時点の医師数を上回らない範囲で設定する」ことを提案した。
 厚労省の提案に対し、異論は少なかったが、現状の医師偏在指標を用いて医師偏在策を行うことなどに、疑問を投げかける意見が多かった。
 猪口委員は、次期医師確保計画策定に向けた議論における厚労省の今の論点の提示の仕方では、「(医師偏在対策の)全体像が見えにくい」と指摘した。医師偏在対策の基本的な指標となる医師偏在指標についても、「病院や診療所、診療科の区別ができたほうがよい」と述べた。医師偏在対策を実施する単位である二次医療圏については、「人口・面積の違いがあり過ぎる」として、「これらを整理しないと、なかなか有効な案が出てこない」と述べ、厚労省に対応を求めた。
 また、医師少数スポットについては、設定区域の定義がなく、現状で「二次医療圏全体」や「医療機関そのもの」を設定している事例があるため、原則として市区町村単位で設定することが提案され、概ね了承された。

病床機能報告制度の改善求める
 2022年度の病床機能報告については、医療機能を報告する際に、診療報酬の障害者施設等入院基本料を「一般的には慢性期機能として報告するものとして取り扱う」ことを概ね了承した。2021年度の病床機能報告において、89%の医療機関が障害者施設等入院基本料を算定する病棟を慢性期機能として報告していることを踏まえた。
 また、病床機能報告では、地域医療構想における2025年の病床の必要量の推計を目安に、病床の機能分化・連携に向けた協議を都道府県で実施している。病床の必要量の推計に照らせば、現状は急性期が過剰で、回復期が不足しているという状況にある。
 ただ、病床機能報告の急性期と回復期の区別と、病床の必要量の推計の急性期と回復期の区別には、病棟単位の報告と病床単位の集計であることの違いがあり、医療機関の判断で医療機能を決めていることから、齟齬が生じる。
 猪口委員は、「(都道府県の協議で増床を認めてもらうために)実際は急性期の入院基本料を届け出ても回復期として報告するような実態がある。2025年の目安を今見直すのは無理なので、その後の課題となると思うが、急性期と回復期のどちらを届け出るかを明確にするなど整理が必要になる」と述べた。
 また、猪口委員は、総務省の新たな公立病院経営強化ガイドラインにおいて、「基幹病院以外の病院等は回復期機能・初期救急等を担う」との考えが盛り込まれたことに懸念を表明した。具体的には、「これまでの地域医療構想の議論と違う。回復期機能・初期救急等は民間病院が担うことができるのであるから、一部地域は別としても、公立・公的病院は、本来求められている不採算医療の提供などが中心になるべき。そうでないと地域医療構想が成り立たない」と厚労省に質した。
 厚労省は、「これまでの地域医療構想では、公立・公的医療機関は民間医療機関が担えない医療機能を担うということを念頭に、議論を進めてきたのはその通り。一律な線引きはできないが、不合理な対応があれば、きちんと議論する必要がある」と回答した。

 

全日病ニュース2022年7月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2020.11.15 No.975

    2020/11/15 ...(2)2020年(令和2年)11月15日(日). 全日病ニュース. 厚生労働省の地域医療構想に関する. ワーキンググループ(尾形裕也座長)

  • [2] 2019.2.1 No.933

    2019/02/01 ...会(片峰茂座長)に、外来の医師偏在. 対策の具体策を示した。 ... ワーキンググループ(尾形裕也座長) ... この論点に対し異論は出なかった。

  • [3] 2019.10.1 No.949

    2019/10/01 ...今回、厚労省が示した論点で、医師 ... るワーキンググループ」(尾形裕也座. 長)は9月6日、地域医療 ... ループ」(田中滋座長)は9月6日、都.

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