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ホーム全日病ニュース(2022年)第1012回/2022年7月1日号ドクターヘリ・ドクターカー、救急救命士を議論

ドクターヘリ・ドクターカー、救急救命士を議論

ドクターヘリ・ドクターカー、救急救命士を議論

【厚労省・救急・災害医療等WG】二次救急への補助金による支援を訴える

 厚生労働省の救急・災害医療提供体制等に関するワーキンググループ(遠藤久夫座長)は6月15日、第8次医療計画策定に向け、ドクターヘリ・ドクターカー、救急救命士などをテーマに議論した。全日病常任理事の猪口正孝委員や日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、補助金などによる二次救急への支援を訴えた。
 厚労省は、前回の会合で議論された救急医療機関の役割の追加資料として、第三次救急医療機関数と救急搬送件数の推移などの状況を説明した。
 第三次救急医療機関は、救命救急センターを概ね100万人に1か所を目標に整備してきたが、現在300施設まで増えた。一方、救命救急センター1施設当たり年間救急搬送件数や年間重篤患者数の中央値は、増加傾向を示している。また、救命救急センターの専従医数、専門医数はともに増加している。
 猪口委員は、「医療全体をプライマリケア、救急医療、高度医療といった階層で考えたときに、二次救急、三次救急に比べて、一次救急の部分の言及が少ない。一次救急と呼ばれるものには、休日診療や夜間診療などがあり、各地で行われているプライマリケアの段階での救急が非常に大事だ。二次、三次の救急を増大させないためにも、在宅医療などのプライマリケアが重要になる」と強調した。また、「病院の医師が少ないという話があるが、外国との比較をすると、確かに急性期病院の医師の数は少ない印象を持つので、医師の偏在対策では、早急に急性期病院に医師が集まるような対策が必要になる」と述べた。

ドクヘリやドクターカーの状況
 ドクターヘリは、46都道府県で56機が配備され、実質的な全国配備が完了している。未導入の京都府は関西広域連合として一体的に運用しており、独自に導入する予定はない。2018年度の年間出動件数は2万9,120件。40府県で28の協定が締結され、都道府県境を超えた広域連携が行われている。
 ドクターカーは、「診療を行う医師を派遣するための緊急走行が可能な車両」と定義されている。厚労省は医療提供体制推進事業費補助金により、救命救急センターに対してドクターカーの車両の購入費、搭載する医療機器等の購入費などの支援を行っている。2019年に救命救急センターが保有するドクターカーは216台で、年間出動件数は2万9,271件。
 加納委員は、「ドクターヘリは充実してきたと感じている。ドクターカーについては、救命救急センターが主体だが、今後は、在宅医療を救急で支えるため、在宅の医師と連携する地域の二次救急の医療機関を支援する形でのドクターカーの出動もあるのではないか」と支援への考慮を求めた。
 猪口委員も、「ドクターカーを転院搬送で有効に活用している病院もある。二次救急に対する支援も考えてほしい」と要望した。
 救急救命士については、昨年10月施行の改正救急救命士法により、救急救命士の活動範囲が拡大され、「病院前」から延長して「救急外来」においても、救急救命処置が可能となった。実施可能な救急救命処置は「救急救命処置の範囲等について」に規定され、「医師の具体的指示が必要なもの(特定行為)」と「医師の包括的な指示で行うもの」に区分されている。
 一方、救急救命処置の範囲の見直しについては、2015年度から、処置の追加・除外に関する提案・要望の窓口、提案・要望のあった処置の評価等を一本化するために「救急救命処置検討委員会」を設置している。
 厚労省は今後の対応として、◇「救急外来」の医師・看護師等の配置状況や業務実態の調査研究の実施◇「救急外来」の医療従事者の負担軽減の検証◇厚生労働科学研究班が研究を継続している処置(カテゴリーⅡ)を救急救命処置に追加の可否―などの課題をあげた。さらに、「救急医療を担う多職種が参画した新たな検討の場を設置する」との考えを示した。
 加納委員は、「救急救命士のさらなる追加処置の検討のため、救急救命処置検討委員会が設けられているが、今後は病院のなかで働いてもらうこともあるため、病院団体からのメンバーを追加してもらいたい」と要望した。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2018.8.1 No.922

    2018/08/01 ...厚生労働省の「救急・災害医療提供. 体制の在り方に関する検討会」. (遠藤久. 夫座長)は7月6日、今年4月から5. 回の会合の議論を整理した。来年度予.

  • [2] 全日病ニュース 2018年5月1日号

    2018/05/01 ...座長には国立社会保障・人. 口問題研究所所長の遠藤久夫氏を選出. した。 検討会では、出動件数が増加してい. るドクターヘリの安全運航や救命救急.

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