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ホーム全日病ニュース(2022年)第1012回/2022年7月1日号急性期入院医療について~入院医療を中心に~

急性期入院医療について~入院医療を中心に~

急性期入院医療について~入院医療を中心に~

診療報酬改定シリーズ●2022年度改定への対応② 全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会委員  丸山泰幸

【初めに】
 今年度の診療報酬改定は最終的に本体部分でプラス0.43%となったが、その内訳としては、特例的な対応として看護職員等の処遇改善にプラス0.2%、さらに不妊治療の保険適用にプラス0.2%など、すべての医療機関に対象となるものではなく、大変厳しい改定となった。

【重症度、医療・看護必要度の見直し】
 急性期入院医療については、今回急性期一般入院基本料に係る重症度、医療・看護必要度において、中医協で様々な議論があった。最終的に公益裁定により、A項目の点滴ライン同時3本以上の管理が注射薬剤3種類以上の管理となり、輸血や血液製剤の管理の評価が1点から2点に変更され緩和された項目もあったが、心電図モニターの管理がA項目から外される事となり、地域医療を預かる民間救急医療機関にとっては大きな影響が出る事が予想される。
 さらに許可病床200床以上の病院の急性期一般入院料1については重症度、医療・看護必要度Ⅱを用いて評価するとされ、急性期一般入院料6が削除され、従前の急性期一般入院料7が6に繰り上げられた。これら変更された急性期入院料について、今後各医療機関は柔軟に対応する必要があると思われる。

【急性期充実体制加算(新設)】
 急性期充実体制加算(右図参照)が新設され、今回改定においては高い加算点数が付いた。ただし、救命救急センターや高度救命救急センターを有する事または救急搬送の件数について実績の基準を満たす事、精神疾患を有する患者の受け入れに係る充実した体制の確保など、中小民間病院では施設基準を満たすことがかなり厳しく、高度急性期医療を提供する大学病院や公的病院などの大病院に対してある程度優遇される加算内容だが、それでも算定要件のハードルは高いものになっている。
 さらにその施設基準の中でも「特定の保険薬局との間で賃貸借取引がないこと」と、実質敷地内薬局を認めない事が算定要件として加わった。これまでは敷地内薬局に関しては賃貸借取引も黙認する姿勢だったものが、一転してはしごを外す形となり、大学病院等を含めた多くの大病院を困惑させる形となった。

【総合入院体制加算の見直し】
 総合入院体制加算の見直しに関しては実績要件の中で人工心肺を使用しない、いわゆるOPCAB(オフポンプ冠動脈バイパス術)が主流となってきている事を踏まえ算定要件の緩和が行われた。他には診療情報提供料Ⅰの注8の加算を算定する退院患者数、転帰が治癒であり通院の必要がない患者数および初回外来時に次回外来受診が必要ないと判断された患者数が直近1か月の総退院数のうち4割以上である事と要件の緩和が行われた。

【重症患者対応体制強化加算(新設)】
 続いて、重症患者対応体制強化加算に関しては集中治療室を有する医療機関側が、重症患者の対応の強化及び人材育成を要件とし、専従で5年以上の経験を有する看護師及び臨床工学士、他に3年以上の経験を有する看護師2名以上が必要であり、また様々な院内研修や、地域での研修会へ講師として参加するなど、地域における集中治療の質の向上と地域の医療機関等との協働が求められている。

【重症患者初期支援充実加算(新設)】
 また、重症患者初期支援充実加算300点に関しては、集中治療領域において、入院初期段階から医療スタッフと家族を含む患者の間に入り、両者に中立的な第三者として、医療カンファレンスへの参加と情報収集、患者家族に寄り添い不安・不信に対して綿密な話し合いを持つことにより、医療スタッフ側の説明内容、患者家族の理解度の進み具合、現時点での問題点を抽出した上で、相互理解を促進するため「入院時重症患者対応メディエーター」を配置し、医師、看護師等の他職種とともに当該患者、家族に対し治療方針・内容等の理解意向を支援する体制を整備している場合の評価として、入院日より3日を限度に入院基本料の加算として新設された。

【まとめ】
 いずれにしても今回の急性期入院医療の改定に関しては、民間中小病院にとっては算定要件を満たす事が難しく、特に新設された加算要件を満たす医療機関は少なく、極めて厳しい内容であったと言わざるを得ない。経過措置があるとは言え、特に重症度、医療・看護必要度の見直しについては内科系を中心とした急性期病院に対して、心電図モニターが算定要件から外された結果、要件を満たす事が出来ない医療機関が多く出てくる事が予想される。
 地域で急性期を支えていた病院が、急性期一般入院基本料の見直しが必要になり、結果として病棟の再編、看護職員の配置転換を余儀なくされる医療機関が今後増え、急性期からの全面撤退、もしくは最悪廃院に追い込まれる可能性もある。地域の救急医療体制にとって大変厳しい改定であり、今後四病院団体協議会を中心とした各病院団体は、次回2024年度の医療・介護のダブル改定に向けて、多くの民間病院の存続をかける覚悟で、中医協、厚生労働省、政府に積極的に意見・要望を出していく必要があると強く感じる。

 

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