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ホーム全日病ニュース(2022年)第1012回/2022年7月1日号入院料に100種類の点数を設定するとばらつき小さい

入院料に100種類の点数を設定するとばらつき小さい

入院料に100種類の点数を設定するとばらつき小さい

【中医協・入院・外来医療等分科会】看護の処遇改善でシミュレーション結果示す

 厚生労働省は6月10日の中医協の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(尾形裕也分科会長)に、看護の処遇改善を診療報酬で行うための制度設計に向け、前回のデータ分析に基づいたシミュレーション結果を示した。入院料等の算定回数と看護職員数を紐づけると、入院料に100種類の点数を設定した場合に、各病院の処遇改善の必要額と、上乗せ点数の合計の過不足のばらつきが、かなり小さくなることが明らかとなった。

入院料等と看護職員数の相関強い
 前回(5月19日)の同分科会では、各病院の入院料や初再診料の算定状況、介護職員の分布などを分析し、いずれのデータでも、病院ごとのばらつきが大きいことを確認した。今回は、入院料等の算定回数と看護職員数のデータを病院ごとに紐づけて分析し、算定回数と看護職員数の相関を把握した上で、点数のシミュレーションを実施した。
 入院料等の算定回数でばらつきが大きくなる要因の一つは、病床稼働率と考えられたため、入院料等の算定回数と看護職員数の相関を調べた。すると、相関係数0.94という非常に強い相関があることがわかった。病棟部門別看護職員数と外来部門職員数の相関関係も0.78であり、強い相関があることを確認することができた。
 これを踏まえ、対象病院の看護職員に対し、月額1万2千円を支給する処遇改善を実施するために必要な点数を入院料等に上乗せする場合に、どのような方法であれば、各病院の過不足が小さくできるかを8通りのモデルを設定して、シミュレーションを行った(下図を参照)。
 それぞれのモデルにおいて、点数のバリエーションを設けて区分すると、ばらつきは一定の範囲内に収まる。当然、区分を細分化すると、ばらつきの範囲は小さくなる。モデルでは、入院料等ごとに、5種類と100種類に細分化した場合の結果を示した。
 その結果、100種類に細分化すると、分散が小さくなることがわかった。下図の①-2(点数の種類は100種類)、②-2( 同6,800種類)、③-2( 同115種類)、④-2(同6,815種類)がそうだが、病院全体でも病棟単位でも、外来部門を含めても含めなくても、分散の程度はあまり変わらない。
 「② -2」は、入院料の区分(68区分)ごとに100種類の点数を設定するため、6,800種類になってしまう。
 看護の処遇改善の制度設計では、「きめ細かさ」と「シンプルさ」の両者が求められていることから、委員からは、「① -2」と「③ -2」がモデルの中では、点数の上乗せの候補になり得るとの意見が相次いだ。
 上乗せの点数としては、例えば、入院では、「①-1」が「30点」「40点」「50点」「61点」「75点」の5種類であるのに対し、「①-2」では、1~ 100点の100種類としている。外来部門では、「④-1」が「3点」「4点」「5点」「7点」「10点」の5種類であるの対し、「④-2」では、1~ 15点の15種類としている。

最大で不足額はどれだけか
 これらの結果を踏まえ、全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「シミュレーションの結果をみると、モデルによっては、分散が小さくなることがわかった」と評価する一方で、「看護職員数は変動するので、どの期間を取るかが重要になる。安定的な数字を使うためには、直近1年間などを考えるべき」と述べた。
 全日病常任理事の津留英智委員は、分散が一定の範囲に収まっているとしても、過不足、特に不足が生じている病院があることに着目。「マックスでどれだけの過不足が生じているかのデータも示してほしい」と要望した。
 また、「(入院料等と看護職員数の相関が強いことが示されたが)多くの病院では、必要に応じて加配を行っており、データをみてもばらつきはある。中医協総会では、『過不足は患者変動により必ず生じる。そのため、余裕のあるバッファーを設けることも考える必要がある』との意見が出ており、そのようなバッファーは検討するべきだ」と述べた。
 「収入が不足する病院は、最大でどの程度不足するのか」(牧野憲一委員・旭川赤十字病院院長)など同様に、分散の外れ値の「値」を明らかにすべきとの要望は、他の委員からも出ており、厚労省は、今回用いた2020年度のデータを次回示す見込みだ。
 なお、厚労省が示したシミュレーション結果では、プラスマイナス50%の過不足がある病院があることは示されているが、それを超える過不足の状況は明示されていない。
 また、1~ 100点の100種類に細分化しても、100点を超える点数でないと、不足が生じてしまう病院がある。そのような病院が一定数存在する。このため、不足となる病院がなくなるまで、点数を細分化すべきとの意見も出された。

患者負担増の問題を考慮
 分散の程度とは別に、妥当なモデルを考える際に、ポイントとなったのは、患者負担の問題だ。
 猪口委員は、「特に外来で、患者の負担が増加することの影響を考える必要がある。外来を含めず、入院料だけにする場合も、診療報酬の単価が低い患者にとっては問題になる」と懸念を示した。
 法政大学教授の菅原琢磨委員は、「2018年度改定での妊婦加算、今回の電子的保健医療情報活用加算の例もある。看護の処遇改善は、比較的理解が得られやすい対応だと思うが、患者負担増につながる問題は難しい」と指摘。その上で、「幅広く負担を求めるという観点では、外来も含めるべきかもしれない。また、大病院が一般外来を減らしていることを踏まえると、当初の見込み額が確保できなくなる可能性も考える必要がある」と述べた。

 

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