全日病ニュース

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論点に「定期巡回・随時対応」を特養・老健に認める方向性

論点に「定期巡回・随時対応」を特養・老健に認める方向性

【介護給付費分科会】
総論の議論を開始。複合型サービスや訪問看護等を議論

 5月23日に開かれた社会保障審議会の介護給付費分科会は、2015年度介護報酬改定に向けた総論的な議論を開始。 この日は、①定期巡回・随時対応サービス、②小規模多機能型居宅介護、③複合型サービス、④訪問看護を議題にとりあげた。
 地域包括ケアを中核的に支えるものとして期待される、訪問介護と訪問看護が一体的または密接に連携しながら訪問する定期巡回・随時対応サービスについて、厚労省の老健局振興課は、5月19日に、2014年3月末の事業所数等を公表している。
 それによると、制度開始2年目の13年度における事業所数は277から434へと57%、利用者数は2,417人から6,792人へと187%増加し、認可している保険者数も142から196に38%増えた。しかし、全国に1,742ある保険者(市区町村)の11.2%に過ぎず、青森、秋田、宮城、栃木、島根、徳島の6県はゼロだ。
 第5期介護保険事業計画における同サービスの実施見込みは、13年度で283保険者と到達度は69.3%に達したものの、利用者数(6,792人)は厚労省の見込み(1万2,000人)をさらに下回る56.6%にとどまった。
 こうした伸び悩みに、前回4月28日の分科会では「老人保健施設で夜間訪問介護ができるよう配置基準など柔軟な対応を図ってほしい」という声も出たが、この日も、委員からは「訪問看護との連携」を含む基準や要件の緩和を求める意見が相次いだ。
 この日示された論点で、事務局(厚労省老健局老人保健課)は、「特別養護老人ホームや老人保健施設による定期巡回・随時対応サービスへの参入促進に資する兼務要件」を提起、サービス提供者を介護保険施設に広げる方向性を打ち出した。
 さらに、同サービスにおける24時間訪問についても、「オペレーターについて、特に人材が不足する夜間・早朝等における配置基準や資格・兼務要件についてどう考えるか」と、緩和の方向での議論を促した。
 また、「看取りに取り組む体制づくり」および「同一の集合住宅の利用者とそれ以外の住居の利用者に対する介護報酬」や「集合住宅に併設された複合型サービス事業所の運営」のあり方も、論点に織り込んだ。
 定期巡回・随時対応サービスと同じく12年度に創設された複合型サービスも、医療ニーズの高い利用者に、通い、泊まり、訪問看護、訪問介護を組み合わせて療養を支援する地域包括ケアを支える重要なサービスであるにもかかわらず、請求事業所数は103、利用者数は約1,580人と低迷している(14年2月審査分)。
 請求事業所を開設主体別にみると営利法人が約46.6%と最も多い。登録利用者1,042人についてみると、84.5%が何らかの医療ニーズをもち、5.9%に「看取り期のケア」が実施されている(13年10月1日時点)。
 しかも、要介護3以上の中重度者が利用者の約62.5%を占めているにもかかわらず、社会福祉法人(社協以外)と医療法人の割合は40%弱しかない。
 訪問看護ステーションの指定がある場合は複合型サービス登録利用者以外にも訪問看護を行なえるため、請求事業所の約6割がその指定を受けており、1事業所あたりの看護職員数(常勤換算)は平均4.3人となっている。
 登録定員は通いと宿泊の合計で25名以下とされているが、事業者調査によると1事業所あたりの定員は平均24.8人に達しており、事務局は、「定員の増員希望や定員の柔軟な運用を希望する事業者が多い」と説明した。
   訪問看護指示書の利用者が6割を超える事業所は約4割に達し、特別管理加算の算定者が2割を超える事業所は4分の1を占めている上、看護職員数が多数になるほど特別管理加算を算定している傾向にあるなど、訪問看護ステーションとの連携・併設がますますキーとなっている。
 そのため、論点には、複合型サービスにおける看護業務のあり方、特別な管理や重度者対応のあり方など、地域における訪問看護の展開をどう強化していくかという視点が優先課題に取り上げられた。
 さらに、訪問看護ステーションの参入を促すために、「開設時の公的支援や事業開始時支援加算(14年度末までの時限措置)」の延長可否も論点に織り込まれた。
 訪問看護の利用者数は約34万9,700人、ステーションの数は6,992ヵ所(14年2月審査分)と、増加傾向にある。
 事務局は、論点に「引き続き規模拡大を推進すべきではないか」と書き込んだ上で、「14年度改定で新設された機能強化型訪問看護ステーションについて、次期介護報酬改定における対応をどう考えるか」と提起、介護報酬でも同様の対応を図る方向を明示した。
 その一方で、訪問看護の利用を望まない利用者本人・家族に「単価の高さや限度額との関係を理由」とする向きが多く、「訪問看護ステーションに空きがない」というのはきわめて少ないことや、訪問看護ステーションの看護職の不満に、給与水準とともに通所系・施設系に比べて過重な勤務形態が多くあげられているという現状を説明。
 論点で、訪問看護職員の確保については「実態に即した推進が必要不可欠と考えるがどうか。その際、新たな施策の展開も必要と考えるがどうか」という認識を示した。
 同時に、13年度までの訪問看護推進事業を新たな財政支援制度に付け替え、「在宅医療推進協議会の設置・運営」や「訪問看護の促進・人材確保を図るための研修等の実施」に必要な経費に対する支援を行なう方針を明らかにした。

DPC/PDPSに係る今後の検討方針・スケジュール等

5月28日 中医協総会1面記事を参照

(1)「診断群分類点数表」に係る検討課題
①基本方針について
(ア)ICD-10(2013年度版)に係る対応について
 現行のDPC制度はICD-10(2003年度版)を元に運用されているが、平成26年度中にICD-10(2013年度版)が告示される。DPC制度における対応について検討が必要。
(イ)重症度を考慮した評価手法(CCPマトリックス)について
 厚生労働科学研究班(伏見班)で研究が行われている新たな評価手法(CCPマトリックス)について、どのように対応するか検討が必要。
(ウ)点数設定方式Dのあり方
 現在、点数設定方式Dは高額な薬剤や材料を使う診断群分類に適用されているが、診療の標準化が進んでいる診断群分類等、現行の他にもふさわしい分類があるか検討が必要。
(エ)短期滞在手術等基本料3との整合性
 平成26年改定で大幅に拡大された1入院あたりの包括支払に近い「短期滞在手術等基本料3」とDPC/PDPSによる包括支払いとの整合性について検討が必要
②DPC検討WGにおける検討について
[WGにおける検討課題]
・MDC毎に最新の診療実態を踏まえた適切な診断群分類の検討
・診断群分類の見直しに合わせた「DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト」の見直し

(2)「医療機関別係数」に係る検討課題
①基本方針について
○適切な医療機関群のあり方に関する検討
○調整係数の置き換え完了に向けた枠組み
○激変緩和措置のあり方②各係数の見直し
○機能評価係数Ⅱの各7項目の見直し
<今後の検討方針と考え方>
○平成26年度中に①を一定程度取りまとめた上で、機能評価係数Ⅱの各項目等について、平成26年度の調査結果等を踏まえつつ、医療圏別の評価のあり方や医療の標準化等の観点も含めて検討を行う。

(3)「算定ルール」等に係る検討課題
①検討すべき課題
・同一傷病による7日以内再入院(再転 棟)ルール
・持参薬の使用に関するルール(退院 時処方を含む)
・DICでコーディング際の症状詳記の 添付
・特定入院期間超えの化学療法に係る 算定方法 等

(4)「DPC導入の影響評価に係る調査(退院患者調査)」に係る検討課題
①平成25年度・26年度退院患者調査 の取りまとめ
②調査項目の整理(簡素化)と新規の追加 項目

(5)その他、中長期的な検討課題
①特定入院料の差額加算のあり方について
 平成22年改定以降DPCデータ(EFファイル)により特定入院料の包括部分のより詳細が把握可能となりつつあり、その結果を踏まえた課題の整理等が必要。
②DPCデータの質の向上について
○ DPC データの質の向上に向けて、DPCデータの記載内容にかかる確認の方法や評価方法等について、課題の整理等が必要。
○各病院が独自に指標を作成し公開することについて、実現に向けた課題の整理や機能評価係数Ⅱとして評価すべきかどうか等も含め、引き続き検討する必要がある。
③請求の仕組みについて
○請求の仕組みの簡素化やより適切なレセプト請求の実現等に向けて、下記の観点から具体的な対応案について課題の整理等が必要。
・差額調整の仕組み
・特定入院期間超えの出来高算定ルール
・「コーディングデータ(包括範囲内の診療情報)」の取り扱い
・コストアウトライヤーの算定方法 等
④その他(DPC制度のあり方等)
○小規模病院や単科専門病院等、多様な施設がDPC制度に参加していることを踏まえ、医療提供体制全体の見直しの方針との整合性も踏まえつつ、DPC制度の対象病院のあり方や対象範囲等について中長期的な課題の整理が必要。
<今後の検討方針と考え方>
○検討すべき課題について論点の整理を行いつつ、必要に応じて特別調査等を実施しつつ検討を行う。