全日病ニュース

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地域包括ケア病棟を想定。減収は在宅復帰機能強化加算で補う

□7対1病院の進路選択/一部病床の地域包括ケアへの転換を検討
地域包括ケア病棟を想定。
減収は在宅復帰機能強化加算で補う

在宅に向かう流れを強化。訪問看護と訪問リハにも注力。高度急性期の受皿も目指す

医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院理事長 仲井培雄 

●初めに
 全日病には、第1回医療機関トップマネジメント研修コースやヤングフォーラムなどに参加し、色々勉強させていただきました。
●当院の現状
 当院は、人口5万人の石川県能美市に建つ、まじめなケアミックス病院です。
 一般病床(200床)は7:1で、そのうちDPC対象病床が140床、亜急性期病床が28床、障害者病棟が32床という構成で、さらに、療養病床(120床)は医療療養60床と介護療養60床からなり、急性期から慢性期までの医療を提供しています。
 予防医療介護複合体として、健診センター、居宅介護支援事業所、介護老人保健施設、小規模多機能型介護施設、訪問看護ステーション、高齢者対応賃貸住宅を併設していますが、診療所は持たず、地域のかかりつけ医と連携しています。
 開設以来31年、地域の準公的病院としての機能を果たしてきました。小児科・産婦人科等の他、精神科と心臓血管外科以外はほぼ標榜している旧総合病院のような体裁をなしていますので、生まれつき財務基盤は脆弱です。
●地域包括ケア病棟
 2014年度診療報酬改定で「地域包括ケア病棟」が新設されました。高度急性期等からの患者の受け入れ(post -acute)、在宅療養あるいは居住系介護施設等に入所されている高齢者の急性疾患の患者の受け入れ(subacute)、在宅復帰支援の3つの機能を持ち、地域包括ケアシステムの要となります。
 要件として、在宅復帰率7割以上(入院料・管理料1のみ)、重症度、医療・看護必要度10%以上、リハビリテーションを含む包括点数、データ提出加算の届け出が特徴的です。病床単位でも届け出できます。
●当院の対応策
 当院は元々PPC(progressive Patientcare)システムを採用していましたので、病棟は前述のように細分化されています。亜急性期病床では回復期のリハビリを、障害者病棟ではPost-acuteと難病等を診ています。まず、7:1が何床維持できるか、2014年4月の実績からシミュレーションしてみました。
 「重症度、医療・看護必要度」は新基準で14.1%です。新基準の「A項目2点以上かつB項目3点以上」の延患者数は459人ですので、7:1の限界ベッド数は102床(459÷0.15)となり、利用率が80%であれば、7:1の必要ベッド数は128床(102÷0.8≒128)となります。在宅復帰率は79%(≧75%)ですから、7:1は140床から128床へと12床の削減で稼働させます。 一方、2014年4月の実績から、バーチャルな地域包括ケア病棟を亜急性期病床+障害者病棟で作ってみました。入院日数60日以内の実患者83人(延患者数1,196人)を対象としました。
 病床数と利用率を50床と80%に設定すると、「重症度、医療・看護必要度」は16.5%、在宅復帰率は85.7%、1件1日単価は4月実績で28,400円となりました。 地域包括ケア病棟入院料1に看護加算と看護補助加算を加えると、単価は実績値より高くなります。
 リハビリ提供単位数は1日平均4.1単位でした。亜急性期病床との比較によるシミュレーションでは、地域包括ケア病棟のリハビリ提供は4単位までなら実施可能と思われますので、点数設定はうまくできています。
 話を現実に戻します。入院日数60日を超えた難病等の方17人をどこで看るかという課題と、9月30日までの経過措置期間中は病棟構成変更が制約されることから、7:1や障害者病棟の病棟構成の変更は時期尚早と判断しました。
 亜急性期病床は9月30日までなので、9月1日から1ヵ月の実績を取り、10月1日に地域包括ケア病棟を届け出ます。実際の病棟は亜急性期病床28床+7:1病床12床のB1F病棟を、実際の患者は亜急性期病床と障害者病棟のpost-acuteの患者を想定しています。収入は7:1の削減で減収となります。
 7:1病床のみの病院が、DPC2SD越えの受け皿として一部病床を地域包括ケア病棟(病床)にする場合は、包括点数のおかげで増収になる場合もあります。また、療養病床からの参入の場合は、人員を増強し、救急受け入れの文化を醸成すると、やはり増収になると思います。
 しかし、当院のように既に亜急性期病床を持っていて、「重症度、医療・看護必要度」の低下によって7:1を減らさざるを得ない病院にとって、減収は避けられないと思います。つまり、地域包括ケア病棟の点数が低いのではなく、7:1の減少が問題なのです。
 この穴をどうやって埋めるか?当院では、医療療養病棟の在宅復帰機能強化加算取得を目指します。 同時に、7:1病床、地域包括ケア病棟、医療療養病床はダムのない急流のように変化するので、流れを止めないオペレーションを実践し、在宅復帰へと導き、訪問看護、訪問リハビリに注力します。
 病床利用率を上げる事も重要なので、病病連携を活性化させて、高度急性期の受け皿も目指します。後はいろんな事の3Sです!
●最後に
 地域包括ケア病棟はこれからの病棟です。現在の国状に合わせて質と効率化を求められていて、本病棟に相応しい医療の提供や人財の育成、経営のあり方が重要になると思います。できれば多くの皆さんと勉強を重ねていきたいと思っています。ちなみに、5月15日に地域包括ケア病棟協会が設立され、協会長を拝命しました。