全日病ニュース

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消防庁:急性期や夜間救急等を除く3,000m2未満病院のスプリンクラー設置義務化を提案

消防庁
急性期や夜間救急等を除く3,000m2未満病院の
スプリンクラー設置義務化を提案

【有床診・病院火災対策検討部会】
安藤副会長は急性期病院の義務化除外案に慎重な議論を求める

 総務省消防庁が主催する「有床診・病院火災対策検討部会」が、5月21日に2ヵ月ぶりに開かれ、事務局(消防庁予防課)は、スプリンクラーの設置基準を、(1)有床診は病院と同じ3,000m2以上とする、(2)3,000m2未満の有床診と病院に関しては、「特に必要性の高い類型の施設」かつ「一定の構造要件等」を満たしていない施設に設置を義務づける、(3)施行は公布から1年数ヵ月後とし、既存施設には8年間施行を猶予する、という案を提示した。
 「特に必要性の高い類型の施設」とは、患者の状態や看護体制の状況から「火災時に避難が困難な者が入院する施設」を意味する。そのため、有床診では「夜勤の看護職員が配置される等、夜間においても態勢が確保されている」施設、病院では「急性期医療や夜間の診察を行なっている病院」は、義務化対象から外すとした。
 ただし、病院のうちの療養病床を「特に必要性の高い類型」とすることは概念的に分かるとしても、「急性期医療や夜間の診察」の有無で一般病床にどう線引きを入れるのか、提案には曖昧さが残る。
 この点に関して、事務局は「規制の対象となる類型を外形的・客観的に特定できる仕組みとする必要がある」とし、「既存の制度を用いて対象を特定する必要がある」と論じた。
 救急告示や2次救急あるいは診療報酬上の届出を想定していると思われるが、同席した厚労省医政局の梶尾指導課長は「類型をはっきりさせるのであれば、地域でどういうポジションを占めているかという点から考えてみてはどうか」とサジェッションした。この論でいくと、あたかもDPCの機能評価係数Ⅱにも似ていく。
 事務局は、前回提示した、3,000m2未満の有床診で義務化から外れるものとして、診療科による線引きを提案したが、反対意見にあり、この日は修正案を提示した。しかし、今回の提案も議論混迷化につながる可能性もある。
 検討部会は昨年11月7日に「有床診療所火災対策検討部会」として設置され、その名のとおり、有床診のスプリンクラー設置基準を見直す議論に着手した。
 その結果、第3回会合(3月7日)で、1972年の導入以後据え置かれてきた有床診の設置基準(6,000m2)を3,000m2に引き下げることで合意。さらに、3,000m2未満でも、「職員が避難誘導に専念する必要がある施設」には、面積に係わらず設置を義務づけることで概ね一致した。
 第3回会合では、同時に、1987年に6,000m2から3,000m2に改正された病院の設置基準も見直す考え方が提起された。その結果、第4回会合(3月27日)から名称を「有床診・病院火災対策検討部会」と変え、3,000m2未満の病院に対する設置基準の検討も同時並行で進めることになった。
 四病協から委員に出ている全日病の安藤副会長は、スプリンクラーに関して、「四病協としては、医療安全の立場から、原則としてすべての医療機関に設置されるべきと考える。病院団体として未設置の病院に働きかけていきたいが、同時に、前向きな病院には補助金をつけるべきである」と訴えた。
 その上で、急性期病院等を義務化から外すとした事務局案に、「急性期病院は夜間の看護配置はそれなりに確保しているが、やはり、救急外来から入院する患者の6割以上が70歳以上であり、重症度、医療・看護必要度や介護必要度の高い方、認知症の方を受け入れるケースが多い。そうした現状を踏まえると、(義務化から)除外するという考え方はもう少し吟味される必要がある」と提起、慎重な議論を求めた。
 補助金に関して、梶尾指導課長は来年度に増額される可能性を示唆する一方で、「新たな基金の対象事業には入っていない」ことを明らかにした。
 検討部会では、スプリンクラーにとどまらず、防火扉や火災通報装置の設置についても話し合われるため、論点は多岐にわたる。事務局は、消防法ではなく消防施行令の改正案件であることから、「今年度中に結論を出せばいい」としている。