全日病ニュース

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新基金:提供者側が自ら動いて都道府県に提案していくことが大切

新基金:提供者側が自ら動いて都道府県に提案していくことが大切

将来予測が必要量より多くても、既存施設に機能変更を求めることはない

西澤寛俊会長 

 地域における医療介護総合確保法案は多くの法改正からなるが、ここでは、病床機能報告制度と新基金制度の2つを取り上げる。
◎病床機能報告制度
 報告制度は、現時点で、各病院が病棟ごとに主たる機能を明記、レセプトに病棟のコードを付加することによって、提供している医療の内容を把握することが決まっている。
 ただし、併せて報告する機能ごとの「今後の方向」の考え方など、引き続き検討すべき課題も残されている。
 法案が通ればこの10月から施行されるが、レセプトへの病棟コード追加は次期改定からとしたので、初年度は、7月現在の設備構造・人員を病棟単位で、7月診療のレセプトを病院単位で、報告するになった。
 この報告結果にもとづいて各都道府県は、各2次医療圏の、機能ごとの病床必要量を予測して地域医療ビジョンに明記し、医療計画の一部とする。
 この制度によって、ビジョンで予測された機能ごとの病床数と、各病院が時系列で報告してくる「今後の方向」を踏まえた数との乖離をどう調整していくかという課題が生じる。
 この調整を担うのが、各2次医療圏に設置される「協議の場」である。
 ここで調整ができない場合、都道府県知事は医療審議会の意見も聞いたうえで、①開設・増床許可に不足している機能を担うという条件を付ける、②過剰な機能への転換の中止を求める、③遊休病床の削減を求める、などの権限の行使ができるとされた。
 拡大される都道府県知事の権限で、開設・増床許可時に条件を付すというのは分かるが、「今後の方向」の段階で「過剰な機能への転換の中止を求める」ということがあれば、それは大変おかしなものとなる。
 この辺りは、今後、よく議論しなければならない。
 これらの権限行使は、もちろん、既存の病棟に機能の転換を求めるということではない。その点はご安心いただきたい。
◎新たな基金制度
 新基金は、いわば、今までの補助金の考え方を改めようということである。
 具体的には、この基金には、医療の現場したがって関係団体に色々と話し合いをさせようという意図がある。その中に病院団体が入ったという点が大きい。
 単年度のもの、継続のもの、それぞれに我々は提案できる。しかし、ばらばらにやってもダメで、連合を組んでやらなければならない。
 整備対象はどれをとっても病院なはずである。そこで、病院関係団体の皆が議論し、納得できる使われ方をしてほしいということだ。
 新基金については、全日病として3月に支部長および全会員宛に文書を出した。
 我々の懸念は、地域の病院に何も説明もせずに事業計画をまとめてしまうという、今までのやり方を都道府県がとることである。
 医師会に働きかけることもよいし、県内の病院協会が集まって動くことも必要だが、今回の基金は、各病院が自分から動いて提案していくこと、これがきわめて大切である。
◎質疑応答から
 2025年に向けた分化の推進は(次の同時改定の)18年が1つのめどとなろう。報告制度における「今後の方向」の時期は18年以降がいいかもしれない。
 必要な既存データはある。そして報告の結果、地域ごとに提供体制のばらつきが分かる。したがって(機能の)変更は必然的に生じる。そして、18年ぐらいまでに、ある程度フィックスにしていくことが望ましい。その後に協議による話し合いとなる。
 なお、「今後の方向」が必要量より多くても、既存のところに変更命令は出ない。
 しかし、例えばオーバーしたらいずれかの病院はやっていけない。県による指導とは別に、我々が自主的主体的に対応していくことが大切だ。