全日病ニュース

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支部訪問/第6回 大阪府支部:「他団体との連携を大切にしつつ、全日病の独自性を出したい」

支部訪問/第6回 大阪府支部
「他団体との連携を大切にしつつ、全日病の独自性を出したい」

会費負担に悩む病院は入会メリットを問う。だが、支部には資金不足という問題も

▲「全日病の独自性を出したい」と語る行岡大阪府支部長

 2011年度に河﨑晃前支部長の後を受け継いだ行岡正雄支部長(医療法人行岡医学研究所行岡病院理事長・院長)は、その前からの会員増加傾向を受け継ぎ、在任3年間で104人から117人に拡大した。
 「何か秘訣でも」と話を向けると、返ってきたのは、支部が置かれた複雑な状況の説明であった。
 「大阪府には病院が535あります。うち373病院を国公立を含む大阪府病院協会(大病協)が、313病院を私立病院協会(私病協)が組織しています。ほかにも96病院が医法協に加盟し、別途、日精協も支部を持っています。最近は日慢協も支部をつくりました。
 全日病には117病院が入っていますが、会員の多くは重なっているため、会費や集会参加費の負担が大きくのしかかっています。それと、大阪府との交渉は医師会が担い、その医師会との関係は、歴史のある大病協や私病協が担うという役割分担ができています。
 こうした状況にあるので、支部としては、なによりも他団体との連携を大切にしていますが、その中で、全日病ならではの独自性も打ち出していかなければならない。この点をどうするか、悩むところではあります」大阪は全日病生誕の地ではあるが、歴史的に日本病院会や日本医療法人協会の存在感が大きく、現在は、社団法人である大病協と私病協がオピニオンリーダーとなっている。
 喫緊の課題である新基金への対応も、医師会と大病協・私病協間の協議に基本的に委ねるつもりだという。こうした状況は、しかし、全日病の影響力を広げる上で有利にははたらかない。
 では、どうして会員が増えているのか。
 「病院はどこも中央の情報を欲しているので、会員以外も参加できる講演会が大切になります。今回の改定でも、急遽3月に猪口副会長にきていただきました。ここ数年、講演会後に会費制の懇親会をもっていますが、病院がもつ色々な問題を話し合うことができると好評です。しかし、支部長や副支部長だけでは動員に限界がある。そこで、主だった出席者に声をかけて運営幹事になっていただき、より広い範囲に参加の声かけをしてもらっています。いわば“支部応援団”です」全日病は行政に積極的に物申している、中医協など生の情報が早く入る、あるいは公益法人であるなど、信頼を得る理由はいくつかあるが、支部として大きいのはこうした地道な努力ではないかと、行岡支部長は支部の取り組みを振り返る。
 また、他団体の幹部を務める会員には相談役になってもらい、色々と助言をもらっていることも明らかにした。
 こうした努力が、例えば、支部事務所の確保につながった。
 今まで、大阪府支部の事務所は支部長の病院の事務方が担当してきた。そのため、会議する場所にことかくこともあった。しかし、大病協・私病協が入っている大阪府病院年金会館に事務所をもつ医法協の協力を得ることができ、今年に入ってから、医法協と共同で事務処理を行なう態勢を徐々に整えつつあるという。
 「これで、中央の四病協と同様の関係が築けます。これまで大阪では、全日病だけ事務所がなかったから」と、医法協への事務委託の実現を評価した。
 「それにしても」と、行岡支部長は悩みを語る。「活動費が足らない。集会を増やしたくても、会員は複数加入でかさばる年会費や参加費に苦しんでいるので、高い参加費をとるわけにはいかない。支部としては講演会も年2回打てば赤字になる」と。
 大阪府支部は支部会費を徴収していない。全国で5番目に多い会員を誇っているが、本部からの助成金にも限りがある。そこで、「兵庫県や他の関西支部と共同で大きな講演会を行なって収益を確保することも必要」と考えている。

民間病院は地域にどうかかわるのか。我々は説明を求められている

 では、支部として全日病の独自性をどう出していくのか。
 1つの案として、「本部がやっている研修会を関西にも投げてもらって、複数支部による共同事業にしていく。そして、それで得た資金を会員に還元していく、そういう循環経路をつくれれば」と、行岡支部長は関西支部としての心情を吐露した。
 その上で、現下の問題意識をこう語った。
 「支部の会員病院は多くがケアミックスですから、当然、慢性期もやっているし、新しくできる地域包括病棟に近い一般病床もあります。この辺りで色々新しい動きが出てきていますが、どうも、はっきりしません。こうした問題に的確な情報を出していかないと、病院は声の大きな方に動いていきます。
 そこで、支部としても情報提供していかなければならないと思うのです。そうしないと全日病の存在感が薄れてしまうのではないかと心配しています。
 高度の急性期は基本的に民間病院には関係ない話ですが、慢性期、地方包括ケア、介護というのは、多くの民間病院にとって守備範囲です。中でも、地域包括ケアというのは地域によって全然違う。だから、地域とどういうふうにかかわっていくのかとかは、我々が発言していかなければならない。これこそ、今、支部がやらなればいけないのですが、そのためには本部がその基となる話をしてくれなければならないのです」「全日病・日病という過去のしがらみ」を乗り越え、病院団体との連携に努めてきた大阪支部は、今、「複数加入による会費負担に悩む病院」による淘汰に直面している。そうした実感を真摯に受け止める行岡支部長は、インタビューをこう締め括った。
 「全日病のアイデンティティーをどこに置くのかが問われる時代になっています。地域を支える民間病院が、今後、どう地域を支えていくのか。支部としては、その問題に答えていかなければ会員も減っていくのではないかと懸念しています。そのためにも、本部に期待することが大なのです」

支部訪問/第6回 大阪府支部
全日病各支部の現状と地域医療の課題を探る

大阪府支部の会員数は117人。会員数は年々拡大をたどり、2007年度から25%も増加した。大阪府は歴史のある
病院団体がしっかり根を張っている。その中で全日病の存在感をどう打ち出し、今後も組織強化を果たしていくか―。
行岡支部長に大阪府支部の現況と今後の展望をうかがった。
(支部訪問は不定期に掲載します)