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地域包括ケアの中で、近未来へ投資せよ

地域包括ケアの中で、近未来へ投資せよ

【看護師特定行為研修委員会】看護師特定行為研修委員会委員長 神野正博

 学会2日目の午前に看護師特定行為研修委員会企画による「地域包括ケアを担う中小病院が看護師特定行為研修を実施するわけ」を開催した。
 まず、推進する行政の立場で島田陽子氏(厚生労働省医政局看護課課長)から、社会構造の変化の中で特定行為研修を修了した看護師に期待することとして、急性期、回復期、慢性期、在宅といった、いかなる環境においても地域包括ケアの担い手としての役割をあげ、そのために指定研修機関、指導者講習、さらには診療報酬上の評価など体制整備を実施するとした。
 それを受けて、まさに地域包括ケアを担う中小病院として指定研修機関となった3病院(地方の2病院、都会の1病院)からそれぞれの導入戦略としての意義を紹介、その後、ディスカッションとなった。
 福岡県の横倉義典氏(社会医療法人弘恵会ヨコクラ病院病院長)は、人口減少下における地方の地域医療構想の中で、医療レベルの向上は生き残りのための一つの道とし、地方においての卒後教育、経営者、チーム医療における同僚という視点で有用性をまとめた。特に、地域で働く同僚が理解し、正確性を担保し、責任感を持つ体制を醸成する、この教育研修を自院の中で行うことの意義を訴えた。さらには、この研修を通して手順の標準化を図れば、地域に拡張、ネットワーク化することができ、地域の医療レベルの向上を図ることができるとした。
 同じく地方の病院の立場から、山形県の柴田聡氏(社会医療法人青嵐会本荘第一病院診療部長)は、地方においては状況に応じて医療職に求められる役割は異なってくるとして、ポリバレントプレーヤー(複数のポジションをこなせる選手)が必要であるとし、ポリバレントドクターとして総合医、ポリバレントナースとして特定行為研修修了看護師の養成が必要とした。その教育の負担を近未来の投資と位置付け、指導者にもやりがいと誇りを持てるような体制づくりが重要とした。
 看護師の流動性が高い都市部の高橋素子氏(医療法人財団慈生会野村病院副院長兼看護部長)は、中小病院においても看護師が求める職場環境は「研修が充実していること」だとし、あらゆる場で全国標準を目指し、教育環境を整備する必要を訴えた。特に、特定行為研修の中でも臨床推論を看護師が養成機関で習ってこなかった卒後教育と位置付け進めているとした。
 その後のディスカッションを通して、中小病院であってもこの研修の研修機関となるための手続き的なハードルはeラーニングの導入や厚生局の指導で、高くないことを確認した。それ以上に研修機関となることは、単なる看護師の研修というよりは、地域包括ケアの中での経営戦略に他ならないことを確認した。また、訪問部門や介護保険施設での特定行為研修修了看護師が少ないことに関しては、無理な施策を講じることよりも看護師のキャリアパスの中での移行の可能性が現実的解決策として示唆された。

 

全日病ニュース2018年12月1日号 HTML版