全日病ニュース

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福岡学会 過去最高の2,789人。改革の主要課題が俎上に

福岡学会
過去最高の2,789人。改革の主要課題が俎上に

【第56回全日本病院学会in福岡】
「地域の病院」による「機能分化・連携」研究集会の様相

 「第56回全日本病院学会in福岡」(学会長・陣内重三福岡県支部長)が、福岡県支部の担当で、9月20日、21日に福岡市のヒルトン福岡シーホークで開かれ、全国から過去最高の2,789人が参加した。
 医療介護総合確保方針の告示(9月12日)を受ける一方、10月1日の病床機能報告制度施行を控えた福岡学会は、同報告制度、地域医療構想(ビジョン)、新たな基金そして地域包括ケアと、2025年一体改革のカギとなる改革を冷静に受け止め、各病院の行き方を探る、まさに「機能分化・連携」の研究集会となった。
 他方で、一体改革の下で地域医療とプライマリ・ケアを再興するために、病院はどうあるべきかと見定める「地域の病院」による研究集会となった。

 2,555人という昨年の埼玉学会を上回る参加者を集めた「第56回全日本病院学会in福岡」は、一般演題も557題にのぼり、首都圏以外で開催された全日病学会としては異例の規模となった。
 福岡学会は、また、佐賀県支部の協力を得て開催を成功させるという新たなモデルをつくった。
 その開会式で実行委員会(津留英智委員長)は参加者に能楽を献じた。
 壇上に地謡、笛、小鼓がたたずむ中、登場した観世流シテ方能楽師の梅若六郎玄祥(梅若家56世当主・人間国宝)は、約15分にわたって、歌舞伎「勧進帳」の基となった能「安宅」から終盤のハイライトである「延年の舞」を舞った。
 主君の義経を案じる弁慶の舞は、厳かな中に力強さが秘められ、全日病学会「延年の隆盛」の祈念がこめられた斬新な演出となった。
 来賓として、二川一男厚生労働省医政局長(代理・佐々木医師確保等地域医療対策室長)、横倉義武日本医師会長、小川洋福岡県知事、松田峻一良福岡県医師会会長、山崎學日本精神科病院協会会長(四病協代表、代理・林道彦常務理事)、日野頌三日本医療法人協会会長が列席した。
 陣内重三学会長は、開会の挨拶で、テーマに「病院医療をプライマリ・ケアの現場から考える-地域の未来を診療所と共に」を掲げた福岡学会の問題意識を、「高齢化、少子化したがって人口減少の社会がおとずれる中、地域には質の高いプライマリケアの機能が求められる。地域における病院医療も、この観点から見直す必要がある」と説明した。
 「改革は進められつつある」と注意を喚起した西澤寛俊会長は、「本学会は、改革に向けて病院とその現場がすでに動き出していることを証するものだ」と、医療法改正を正面から取り上げた福岡学会のプログラムを評した。

佐々木室長 「新たな基金は地域医療構想を実現する手段」

 厚労省医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長は、「動き出した改正医療法」と題した特別講演で、第6次医療法改正の主要項目を分かりやすく解説。その中で、地域医療構想が医療計画の実効性を高める新たなツールであること、そして、新たな基金が地域医療構想を実現する、診療報酬と両輪の手段であると述べた。
 その上で、「今年度は地域包括ケアの底上げに資する基金の使い方を都道府県に求めている」と、民間医療機関が主力となる地域レベルの事業が初年度の重点であることを明らかにした。
 そして、「基金は毎年度交付されるので、将来にわたって計画的に活用していく必要がある。したがって、医療現場の皆さんが一緒に考え、かつメニューを決めていく作業が必要になる」と、地域の病院にエールを送った。

武田審議官「地域医療・介護支援病院」機能の必要を認める

 シンポジウム「病床機能報告制度から病院の明日を探る」で、厚労省の武田俊彦審議官は病床機能報告制度の検討過程を振り返り、日医・四病協の提言(2013年8月)が機能の4区分を導いたと評価、「この提言は非常に大きな意味を持っている」と述べた。
 そして、同提言でサブアキュートを含む急性期の定義が示されたと評価。
 また、四病協の追加提言(13年11月)で亜急性の概念にポストアキュートとサブアキュートという2つの機能があること、さらに、病床だけでなく、病院の機能の類型が示された、と評価した。
 その上で、同審議官は「軽度急性を含めて急性期と考えるのが素直な考え方だ」と述べ、地域包括ケア病棟に求められる軽度急性への対応は急性期機能であるという見方を明らかにした。
 また、「急性期の概念には、高度なもの、通常の急性期、地域で受けとめるべき軽度の急性期があるが、これ(軽度急性期)が今進んでいない。これを、きちんと患者が流れるようにしていこうということではないか」とも発言、軽度急性期の整備が焦眉の課題であるという認識を示した。
 その上で、高齢者救急の面からサブアキュート機能の必要性に言及。「一定程度の急性期医療をもつ病院」や「高齢者救急・在宅医療のバックアップを行なう病院」が地域に必要であると述べ、四病協が提言する「地域医療・介護支援病院」機能を果す病院の必要性を認めた。
 福岡学会では、現在議論が進行している「非営利ホールディングカンパニー型法人」が取り上げられ、医療制度・税制委員会のセッションなどで様々な意見が示された。
 同法人に先鞭をつけた武田審議官は、病床機能報告制度のシンポジウムで再三同法人の意義と必要性に言及。統合された医療法人群による分化・連携が地域医療構想の実現手段の1つに想定されていることを示唆した。

陣内学会長の開会挨拶(要旨)

 世界のどの国も経験していない、少子高齢化したがって人口減少の社会に備え、わが国の医療と社会保障は大きな変容を余儀なくされている。
 高齢者の増加は、すなわち、多疾病・多死社会の到来であるが、すべてを専門医に委ねることは難しい。したがって、地域には質の高いプライマリ・ケアの機能が求められる。病院医療も、この観点から見直す必要があり、診療所に対するバックアップ機能を提供することも重要である。
 高齢者は地域で医療を受けざるを得ない。地域の病院は存続して医療を提供しなければならない。地域は、生・老・病・死に対応できる機能をもつべきである。そうして初めて未来への展望が開かれる。
 福岡県支部はこうした問題意識の下、今学会のテーマを「病院医療をプライマリ・ケアの現場から考える―地域の未来を診療所と共に」とした。