全日病ニュース

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歴史と組織率を誇る病院協会が根を張る中、3桁の会員を目指す

▲山本登神奈川県支部長

【支部訪問/第8回神奈川県支部】

歴史と組織率を誇る病院協会が根を張る中、3桁の会員を目指す

「横浜市の公的偏重を変えたい」―支部増強と並行して横浜市民間病院協会を育む

 病院協会が林立する神奈川県で病院団体として存続し続けるのは容易ではない。その中で、神奈川県支部は全日病の松明を絶やすことなく掲げてきた。これまで県とは没交渉であったが、今回の基金では事業案を独自に出し、初めて県との単独交渉を実現した。
 山本登支部長(医療法人五星会菊名記念病院理事長)に神奈川県支部の現況と直面する課題をうかがった。(支部訪問は不定期に掲載します)

 神奈川県支部の会員数は88人。病院数は344(2011年度)、そのうち民間病院は292なので、県内全病院に対しては25.6%、民間病院に対しては30.1%と、組織率は決して低くはないが、近年の会員増加は低迷している。
 しかし、山本支部長が語る神奈川県支部が置かれている状況は、公民の確執と組織率を誇る都市部病院協会によって存在感が脅かされるという、全日病支部として、あまり例のないものだ。
 「神奈川県には、県の病院協会以外に、川崎、横浜、相模原の各政令指定都市で病院協会が組織されています。それ以外も厚木市など全部で11の病院協会があり、それぞれが活発に活動している。早い話、全日病の入り込む余地がないんです(笑)」
 例えば、県病院協会の組織率は85%、横浜市も80%を超えている。県と政令指定都市の間に競合意識があるように、政令指定都市の病院協会には県に自己主張するプライドがあるなど、県と政令指定都市と県西部の3層構造が医療界にはあり、県として1つにまとまりにくい特殊性があると指摘する向きもある。
 県病院協会は民間病院の役員が多いが、横浜市は公的が中心。そこに救急などの補助金等がからむので、横浜市は、今、公民の関係が必ずしも円滑にいっていないとの声もある。
 「そういうこともあるかもしれないが、どこも歴史があって、学会などの集会も熱心です。しかも、神奈川県支部は結構公的病院が入っているし、多くの会員がそれぞれの地域の病院協会に入っているので、全日病のありがたみがないんです(笑)。そういう意味で、民間を代表する全日病という決め台詞が通用しない。じゃあ全日病の存在意義って何なのって…」
 「ただ、そうもいっていられない。例えば横浜市は公的中心にお金を出している。それを変えさせるには、やはり、数が大切。ということで、とりあえず100ほどを目標に会員増強をしたいとは思っています」
 そこでというわけでもないが、山本支部長は、今回の基金に「女性医療従事者支援」の事業案をまとめ、県に提出した。支部会員から案を募った結果だという。
 「そう、おかげで県は初めて全日病支部を交渉相手として認めたわけです。日病さんと一緒にという話もあったのですが、時間が間に合わなかった」
 大袈裟にいえば神奈川県支部の文化革命だが、山本支部長は、もう一つ隠し玉をもっていた。
 「実は、有志の手で横浜市民間病院協会を2011年10月に立ち上げたんです。色々な事例報告とか病院職員も参加した勉強会をしています。参加病院はまだ20弱ですけどね」
 問題は、しかし、支部活動の実態だ。
 「本部からの情報はこまめに全会員に回しています。講師を呼んだ勉強会も年に2~3回やっていますが、参加者は40人程度かな。そのうち院長クラスは15名程度。どうも集まりがよくない。もっとも、それは我々の責任で、天に向かって唾を吐いても仕方がないんだけどね(笑)」
 会員も含む県民の関心は東京に向かう。内には行政や公的病院との葛藤がある。そして病院協会が根を張っている。そんな中、山本支部長は3桁の支部を目指している。
 「支部長を引き受けて、100人に増やすってアドバルーンを上げたんですが、正直、なかなか大変だなと思っています(笑)。個人的な関係で入会を訴えることはできます。しかし、組織ですから、魅力を感じて入ってきてくれる何かを模索するしかない」
 そして、「求心力を本部に求めるのはおかしい。我々の力で支部を強化しないと」と結んだ。
 自主自立が山本支部長の信念だ。そういえば、インタビュー中「支部に金がない」という話は一度も出なかった。