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ホーム全日病ニュース(2022年)第1022回/2022年12月1日号法改正後に病院救命士は今後どこまで活躍できるか

法改正後に病院救命士は今後どこまで活躍できるか

法改正後に病院救命士は今後どこまで活躍できるか

【静岡学会・救急・防災委員会企画】

 2021年10月のいわゆる救急救命士法の改正・施行により、救急救命士は病院内で救急救命処置を実施することが可能となった。しかしながらすべて無条件で解禁されたわけではなく、現時点ではいくつかの制限があることに留意しておかなくてはならない。それは、対象者の制限、場と期間の制限、実施者の制限である。
 救急救命処置を実施することが許される対象は、重症傷病者に限られる。また実施可能な場所は、主として救急外来とされ、期間は当該傷病者が病棟に入院するまでの間と定められている。実施者の制限とは、事前に必須教育を修了していること、さらには所属する地域MCの認定を受けていることが要求されていることによる。救急救命士が実施可能な救急救命処置のうち28行為の実施に際しては、救急医学会と臨床救急医学会が合同で作成したガイドランなどで定められた「医療安全」「感染対策」「チーム医療」など3項目の受講修了が必須とされた。また、特定行為と称されてきた医師の具体的な指示に基づく気管挿管や乳酸リンゲル液による静脈路確保やアドレナリンの静脈内投与など5行為の実施には、地域MC の認定が必要とされている。
 このような種々の制限が存在してはいるものの、必要な研修を修了し、認定を得れば、対象傷病者を救急外来で受け入れて必要な救急救命処置を行い、入院までの間、救急救命士は医師や看護師と共に身に付けた技量をいかんなく発揮して救急医療提供に貢献することができる。働き方改革が進む救急医療の現場において、医師や看護師のタスクシフトの重要な担い手になることは間違いないだろう。
 今回の委員会企画では「法改正が救急救命士の活躍に繋がっているか?」をテーマに、救急救命士を育成している立場から2名、実際に病院に勤務している救急救命士の立場から2名の方々の講演を拝聴した。
 救急科医師である田邉晴山氏からは、救急救命士制度の発足から法改正に至る経緯をご説明いただき、公務員たる消防機関の救急救命士を育成している立場から、病院救急救命士の長期雇用における課題について問題提起があった。同じく教育機関に所属している中澤真弓氏からは、消防機関での救急救命士としての実務経験を踏まえて、これからの救急救命士の養成について問題提起があった。
 現場で勤務している渡部晋一氏と蒲池淳一氏からは、病院内で救急救命士が果たすことができる種々の幅広い役割について紹介があった。
 これらの講演を踏まえて、救急救命士の歴史から現状を振り返り、救急医療と災害時医療での救急救命士の活躍の展望まで、聴衆とともに活発な議論を深める場となった。
 最後に筆頭座長の山本保博特別委員からは、「救急救命士たるもの医療職として生涯研鑽を積むべき」とのエールが送られ、委員会企画が締めくくられた。

 

全日病ニュース2022年12月1日号 HTML版

 

 

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