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ホーム全日病ニュース(2022年)第1022回/2022年12月1日号「医師確保計画の見直しに向けた意見のとりまとめ」を了承

「医師確保計画の見直しに向けた意見のとりまとめ」を了承

「医師確保計画の見直しに向けた意見のとりまとめ」を了承

【厚労省・第8次医療計画等検討会】歯科医師・薬剤師・看護職員の確保策も整理

 厚生労働省の第8次医療計画等に関する検討会(遠藤久夫座長)は11月11日、全国の医師偏在の是正を目指す「医師確保計画の見直しに向けた意見のとりまとめ」を大筋で了承した。また、第8次医療計画に反映させる歯科医師・薬剤師・看護職員の確保策についても、概ね合意を得た。
 「意見」は、「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」がまとめたもの。主に、医師確保計画策定ガイドラインの改定に向けた見直しの内容を盛り込んだ。医師偏在指標により、「医師少数」、「医師多数」、「それ以外」の県・区域を把握し、医師少数の県・区域の医師数を増やすことなどを主要な目的としている。
 今回の医師確保計画の見直しでは、医師の多寡を判断する医師偏在指標において、三師統計で把握する複数の医療機関に勤務する医師の状況が、一定程度、指標に反映されるよう算出方法を変更するなど、精緻化を図る。診療科間の偏在の指標への反映は、現段階では技術的に困難だが、すでに公表されている三師統計の診療科別医師数を参考にすることを都道府県に求める。
 医師少数スポットについては、原則として市区町村単位で設定する。これまでは設定単位が、都道府県により異なり、医療機関を「スポット」として設定する場合もあったので、単位を明確にする。ただ、へき地や離島では、市区町村よりも小さい地区単位の設定も可能とする。
 医師少数都道府県の目標医師数が、計画開始時の全都道府県の医師偏在指標の下位3分の1に相当する医師偏在指標に達するための必要な医師数であることはこれまで通りだ。一方、すでに目標医師数に達していると判断される医師少数都道府県以外の取扱いも明確に定めた。それによると、医師少数都道府県以外の都道府県の目標医師数は計画開始時の医師数を上限とし、その範囲内で各二次医療圏の目標医師数を設定するとしている。
 これに対し、全日病副会長の織田正道委員や日本医療法人協会会長の加納繁照委員は懸念を表明した。加納委員は、「例えば、高齢者救急は都会で今後急増する。子育て支援を含めより多くの医師を必要とする働き方の変化も起きている。医療需要が増える地域に対して、それに逆行する医師数を抑制する『枠』をはめるのはおかしい」と訴えた。
 織田委員は、「医師偏在指標はあくまで、相対的な医師の多寡を表す指標であり、医師少数都道府県以外で、医師が足りているというわけではない。診療科別の医師数も反映されず、精緻な指標にもなっていない。指標を機械的に適用することは避けるべきだ」と強調した。
 厚労省は、地域の医療提供体制の維持を考慮し、必要な医師数を確保するために、指標を機械的に適用することはせずに、目標医師数の設定を行うべきであるとの考えを示した。全国医学部長病院長会議理事の大屋祐輔委員も、医師の働き方が、いままさに変わりつつあるので、医師の必要数の前提となる医師需給推計を含めたデータの妥当性の検証を継続していくことを求めた。
 医学部における地域枠・地元出身者枠の設定をめぐっては、都道府県が「地域枠に加え、柔軟に運用できる地元出身者枠の恒久定員内への設定について、積極的に大学と調整を行う」とした。地域医療を担う医師を養成する観点では、都道府県、大学、関係機関が連携して、有効な取組みについての「情報共有を行う機会を定期的に設ける」としている。

病院薬剤師などの確保策
 歯科医師・薬剤師・看護職員の確保が議題となり、厚労省からそれぞれの取組みについての説明があった。
 歯科医師の確保については、病院における歯科医療提供の例が示された。入院患者や要介護者の口腔の管理を行うことで、在院日数が削減されることや、肺炎発症を抑制することが知られるようになった。地域の実情を踏まえ、病院に歯科専門職を配置することや、病院と地域の歯科専門職との連携を推進することが重要とされている。
 地域医療介護総合確保基金を活用した事例では、徳島県歯科医師会が主体となり、歯科標榜のない病院において常勤の歯科衛生士を配置し、入院患者に口腔ケアを提供する事業を行っている。このような取組みの推進を次期医療計画ガイドラインに反映させることを了承した。
 薬剤師の確保については、病院薬剤師と薬局薬剤師のそれぞれの役割を明確にした上で、地域の薬剤師の就労状況を把握し、地域の実情に応じた薬剤師の確保策を講じることを医療計画に記載することなどが決まった。
 また、地域医療介護総合確保基金を活用した薬剤師就学資金貸与事業が紹介された。都道府県が策定するプログラムを満了すると、修学資金の返済を免除される。プログラムでは、都道府県が、薬剤師が不足する地域・医療機関として、都道府県が特に指定する医療機関における就業期間を定めている。まだ、実績はゼロだが、四病院団体協議会などが、さらに使いやすい事業とすることの要望を行っており、現在、厚労省で検討中であることの報告があった。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、薬剤師就学資金貸与事業について、「是非、病院薬剤師の増加につながるよう、効果的な仕組みにしてほしい」と期待を示した。また、「就業先として病院が選ばれるためには、例えば、管理薬剤師になる要件に、病院での勤務を義務付けるなどの規則が導入されれば心強い」と述べた。
 看護職員の確保については、◇「マイナンバー制度を活用した看護職員の人材活用システム」などを活用した都道府県ナースセンターによる復職支援や離職防止の取組みの推進◇訪問看護の必要量の推計を参考とした訪問看護に従事する看護職員確保の推進◇特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の養成の推進─が論点となった。
 このうち、「特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の養成の推進」については、2025年に向けてさらなる在宅医療の推進を図るために、特定行為に係る看護師の研修制度が2015年10月に制度化された経緯がある。一方、最近は、コロナ禍もあり急性期の専門性の高い看護師の養成に注目が集まった。
 織田委員は、2025年に10万人を目指しているにもかかわらず、2022年9月の看護師の特定行為研修修了者は6,324人。訪問看護ステーションに勤務する看護師は200人程度(2020年末)に過ぎないことを踏まえ、「全日病でも特定行為研修指導者講習会を開催し、後押ししているが、目標と比べるとだいぶ差がある。在宅医療を支えるために制度が始まったということを忘れずに、医師の判断を待たずに行動できる『総合力』の高い看護師を養成してほしい」と強調した。
 厚労省の担当者も、「制度の一丁目一番地は、在宅医療を支える看護師の養成であると認識している」と述べた。

 

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