全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2022年)第1022回/2022年12月1日号病院と企業の連携で治療と仕事の両立を支援

病院と企業の連携で治療と仕事の両立を支援

病院と企業の連携で治療と仕事の両立を支援

【静岡学会・人間ドック委員会企画】両立支援の体制づくりを解説

 当委員会企画は、「治療と仕事の両立支援の推進-病院医療スタッフと産業保健スタッフとの連携」をテーマに10月2日に行われ、四日市看護医療大学名誉学長の河野啓子氏と産業医科大学両立支援科学准教授の永田昌子氏が企業との連携による両立支援や病院における体制づくりについて講演した。
 冒頭、座長の西昂常任理事(当委員会委員長)から企画の趣旨を説明した。一億総活躍時代にあっては、病気を持ちながら働く方への重要性が増しており、厚生労働省からも「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」が発行され、治療と仕事の両立に向けて支援体制の充実が図られてきた。診療報酬においても、2018年度の改定で、療養・就労両立支援指導料が新設。2020年度には、相談支援加算が追加された。
 両立支援ガイドラインは、治療が必要な労働者が業務によって病気を増悪させることがないよう、就業上の適切な配慮を行うなど事業場における具体的な取組みをまとめたもの。2016年に発行され、その後、毎年改訂を重ね、がん、脳卒中、肝疾患、難病、心疾患、糖尿病の留意事項を記載している。

早期からの支援が必要
 河野氏は、ガイドラインに沿って、両立支援の流れを説明した。まず、①労働者が支援に必要な情報を収集して事業者に提出②事業者は就業継続の可否や治療に対する配慮について産業医等の意見を聴取③事業者が主治医及び産業医の意見を勘案して就業継続の可否を判断し④就業継続可能と判断した場合、就業上の措置及び治療に対する配慮の内容・実施時期等を事業者が決定し実施する―流れとなる。事業者は、周囲の関係者が支援の必要性や具体的内容がわかるように、両立支援プラン/職場復帰プランを作成する。
 河野氏は、企業と医療機関が連携して支援を行うには、お互いの役割と考え方を理解しておくことが必要と指摘。「医療関係者は事業場における産業保健体制やその活動を踏まえて支援することが求められる」と述べた。
 病気による精神的な動揺や不安から、早まって退職を選択してしまう場合もある。がんと診断された就労者の2~4割が離職しているが、その57%が治療開始前の離職だ。河野氏は、早期からの支援が必要と強調。「病気を理由に働くことをあきらめないように支援してほしい」と呼びかけた。

両立支援コーディネーターが説明
 永田氏は、療養・就労両立支援指導料の手順を説明した上で、勤務情報提供書や主治医意見書の作成について述べた。勤務情報提供書は、患者と事業者が作成し、主治医に提出する。主治医は、患者に療養上必要な指導を実施した上で、企業の産業医に主治医意見書を提出、もしくは患者の診療に同席した産業医に就労と治療の両立に必要な内容を説明する。
 永田氏は、産業医科大学病院での取組みをもとに両立支援の進め方を説明した。同病院では、職場での困りごとを聞いて、両立支援の希望があれば、両立支援コーディネーターが治療と就労の両立について説明している。過去4年間に両立支援を行った960件のうち、主治医意見書を発行したのは4分の1で、多くの場合は説明のみにとどまっている。
 病院内の体制では、両立支援担当者のチームづくりが必要になる。患者相談窓口の看護師や社会福祉士が候補となるが、「両立支援コーディネーター研修の受講から始めてほしい」と永田氏。
 チームづくりに当たっては、両立支援に関心のあるドクターを見つけることが大切で、「モデルとなる診療科をつくって、事例を回してみるとよい」と助言。モデル事例をもとに、他の診療科に拡大してく手順を説明。「両立支援は手間がかかるが、体制をつくって取り組んでほしい」と呼びかけた。

 

全日病ニュース2022年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。