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ホーム全日病ニュース(2022年)第1022回/2022年12月1日号医療事故調査制度への医療機関の対応と課題―適切に報告できる院内体制の構築

医療事故調査制度への医療機関の対応と課題
―適切に報告できる院内体制の構築

医療事故調査制度への医療機関の対応と課題
―適切に報告できる院内体制の構築

【静岡学会・医療安全・医療事故調査等支援担当委員会企画】
医療安全・医療事故調査等支援担当委員会 副委員長 細川吉博

 医療事故調査制度が施行されて7年経つが、未だに多くの病院では本制度の理解、認知が浅く、この制度が十分に活用されていない現実がある。この制度は死亡患者の遺族に対して死亡原因を究明することで、安易に刑事訴訟に踏み切られない可能性、さらにはそのような訴訟から医療従事者を守る結果に繋がると考えられる。これらは本委員会の主催するセミナーなどでも強調してきた。今学会においても更なる理解を得られる場として開催した。
 講演では初めに飯田修平委員から本セミナーの趣旨説明ののち、大前提として「全死亡例を管理者が把握する必要がある」ことを強調した。特に報告の際、医療に起因する点、予期しない事例についての解釈が多くの団体にて異なる点を指摘し、事故調査の報告は医療行為の過誤、過失の有無ではないこと、対象とするのは医療に起因して予期しない死亡例であることを強調した。
 続いて永井庸次特別委員からは、管理者として医療事故調査制度における対象事例が示された。事故発生時での管理者業務について、医師法第21条との関連について説明し、医療事故調査制度の役割、職員への対応などについても示された。特に本年度から医療法第25条第1項にて立入検査時には医療事故に対する講習会などへの参加状況の確認があることも知らされた。本制度を円滑に運営するためにも職員教育さらには地域住民への周知、啓蒙の必要性を強調された。
 長谷川友紀特別委員からは、医療事故調査委員会における外部委員としての役割、活用方法について講演された。外部委員は公平、中立性を確保し、質の確保、有効的である必要があるとした。改めて本制度の目的は医療安全の確保であって、個人追求ではなく、その結果として必ずしもその原因が究明されるとは限らなく、併せて再発防止になるとも限らない点を示された。外部委員は当該病院の状況に配慮が必要であり、最終判断は管理者にあるとのこと。結語として事例から学び改善していくことが組織の構築、育成になると強調された。
 宮澤潤特別委員からは、適切に報告できる院内体制について法律家の立場から講演された。なぜ報告が少ないのか?それは医療関係者として、報告後どのようになるのかを知らないため、不安があり、この法の趣旨の理解が必要と指摘した。管理者への報告は決して責任追及が目的ではないとした。遺族への報告では院内調査報告書をもとに話しあうことで、長引く民事訴訟が回避され、さらに示談されることで刑事罰に問われることも少ない点を示した。センター報告を行い、その上で遺族もしくは病院の申し立てによりセンター調査となることで個人の責任追及ではなく、その事故の経過、責任所在が明らかになり、遺族と話し合うことで訴訟の可能性が減少する点を強調された。
 その後、飯田委員を座長にパネルデスカッションがあり、本制度に対してフロアーから多くの質問があり、演者からの適切な答えを得られることで、出席者のさらなる本制度の理解に繋がったと思われた。

 

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