全日病ニュース

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病院におけるDX推進事例紹介

病院におけるDX推進事例紹介

【静岡学会・広報委員会企画】

 広報委員会は「病院におけるDX推進事例紹介」と題し、病院DXに関する先進的な取組みを行っている3病院にお話しいただいた。発表されたご本人からの講演要旨を掲載するので参考にされたい。

「次世代基盤となる病院DX」
社会医療法人石川記念会 HITO病院 理事長 石川賀代

 医療を取り巻く環境は激変期にあり、加えて2024年は、医師の働き方改革を含め様々な施策が開始される。当院では、ミッションである「誰からも選ばれ信頼される病院を目指す」を改革の基盤として、2017年からICTの利活用を進めてきた。
 スマートフォンがキーデバイスとなり、チャット機能の活用、電子カルテの閲覧、WEB会議の参加、教育コンテンツの参照などが可能となることで、働き方改革に向けた環境の醸成を目指している。グループチャットは、多職種間の情報共有、行動承認により、モチベーションの向上や離職の防止につながっている。医師においては、院外から電子カルテにアクセスできることで、時間外の救急外来からの緊急呼び出しにかかる時間数が減少し、医療の安全性を担保し、メリハリのある働き方が可能となった。事務系スタッフの働く環境もフリーアドレスとし、テレワークに対応でき、多様な働き方を提供している。マニュアル参照や教育コンテンツがアプリ上で閲覧可能となることで、時間と場所を選ばずに学べる環境につながっている。
 今後も、患者、スタッフや地域住民など、次世代に信頼される病院への変革を図っていきたい。

「AI・ICTを地域医療でいかに活用するのか」
社会医療法人祐愛会織田病院 副院長 織田良正

 当院は病床数111床の急性期病院である。入院患者の年齢層は年々高齢者の割合が増加し、2020年度は75歳以上が56%、85歳以上が29% に上っている。自宅に戻ってからの生活に不安を抱える患者も多く、限られた資源で地域医療を支えるためには、急性期病院とはいえ入院中はもちろん在宅においても「生産性の向上」が必須である。
 当院では1999年から電話回線での遠隔診療を開始したが、デバイスの進化に伴い、クラウド化した電子カルテの在宅医療での活用や患者宅のテレビを用いた遠隔診療など、20年以上前からICTの活用に積極的に取り組んできた。
 2019年からはスマートベッドシステムを全ベッドに導入し、夜勤看護師の廊下滞在時間は減少、仮眠時間は増加した。在宅医療では、生体情報(主に呼吸数、心拍数)を遠隔でモニタリングし、自宅の患者のデータを見える化することで、患者情報が院内からも共有しやすくなった。外来診療では、かかりつけの患者に対するオンライン診療を行っており、2020年4月からの約2年半で4,500件を超え、さらに発熱外来ではAI問診をフル活用している。
 少子高齢化の進む地方でこそ、AI・ICT を活用し「適切なケアを効率的に」行い、地域医療を支え続けていきたい。

「医師の働き方改革に伴う他職種業務の負担分散を目的にしたIoT・ロボットの活用事例」
医療法人徳洲会湘南鎌倉総合病院 事務長 芦原教之

 2020年からはじまった新型コロナウィルス感染症の拡大は、医療業界のあり方において大きな転換期となり、さらに、2024年の医師の働き方改革、2025年の地域医療構想という医療機関のあり方を問われる時期が迫っている。今後の医療提供体制ならびに環境は大きく変化することが予測され、安定した経営が大きな課題となる。この課題を解決するべく、ロボット・ICTの活用が必須である。
 ICTは業務の効率化・合理化を行う目的で導入をすべきである。喫緊の課題である医師の勤怠管理でビーコンを用い、医師の打刻をストレスフリーとし、事務職の管理業務の負担を軽減することが可能となった。
 さらに、当院で導入した3本のロボットならびに9本の実証事例から、ロボットの可能性と現場でのあるべき姿を知ることができた。医療サービスでのロボットの活用方法は、人が行う業務すべてをロボットに代替するのではなく、人とロボットがひとつの業務を共同し行うハイブリッド型でないと活用は難しい。
 最後にロボットの導入費・維持費は、医療機関にとっては高額であるため、ロボット・ICTの促進での大きな障壁となる。今後、この課題をロボット企業とともにどのように解決していくかが必要である。

 

全日病ニュース2022年12月1日号 HTML版

 

 

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