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ホーム全日病ニュース(2022年)第1022回/2022年12月1日号感染症対応の設備整備への支援と人材確保を訴える

感染症対応の設備整備への支援と人材確保を訴える

感染症対応の設備整備への支援と人材確保を訴える

【国会】星北斗参議院議員が厚生労働委員会で初登壇

 感染症発生・まん延時における保健・医療提供体制の整備等などを図るための感染症法等改正法案の参議院厚生労働委員会での審議が、11月15日に行われた。自民党の星北斗議員(全日病理事)が初登壇し、病院の理事長として、また県医師会担当役員として、新型コロナ対応に奔走した経験を踏まえ、感染症に対応する医療機関の設備整備への支援と人材確保の必要性を訴えた。
 星議員は、「新型コロナで、国民が一番心配したのは、自分が感染したときにしっかりとした入院医療を受けられるかであったと思う。しかし、感染拡大の当初は入院体制・病床確保が思うように進まなかった」と述べた。その理由として、「大多数の医療機関の構造が、動線分離や検査場所の確保、ゾーニングを想定しておらず、物理的な課題があった」ことと、「医療機関で新興感染症に対応できる医師・看護師などが確保できなかった」ことをあげた。
 その後、政府の財政支援もあり、新型コロナ対応の取組みが進んだ。星議員は、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の医療機関の設備整備にどれだけの支出があったかを質問した。
 厚生労働省の榎本健太郎医政局長は、「交付実績は2020年度で約1,366億円、2021年度で約1,403億円」であると回答。星議員は、「それ程の金額が投入されたことに感謝と驚きを感じる。それだけ事前の体制、準備ができていなかったことの裏付けともいえる」と述べた。
 その上で、今回の感染症法等改正法案における医療機関への設備整備の支援について質問した。榎本医政局長は、「今回の法案では、都道府県と協定を締結する医療機関に対する施設整備の一部を国が補助できることを盛り込んでいる。都道府県の予防計画を踏まえ、必要な支援の内容を検討したい」と説明した。感染まん延時ではない平時に、「感染症指定医療機関に支出されているような運営費の補助は行われるのか」との星議員の質問には、「協定を締結する医療機関は、平時は一般医療を提供するために稼働している。平時の運営費に対する補助は想定していない」と回答した。
 星議員は、「新興感染症の感染拡大時に、より多くの医療機関が対応することのできる、いわば感染症に強い国を目指すため、すべての医療機関に対する財政支援が必要だと考える」と述べ、加藤勝信厚労相に適切な対応を求めた。
 人材確保については、新型コロナ対応で都道府県ナースセンターを通じた潜在看護師の活用の実績を質問。榎本医政局長は、「2020年4月から2022年10月までで延べ3万427人をワクチン接種会場や宿泊療養施設に派遣。ただし、病院への派遣は329人にとどまる」と回答した。星議員は、「復職して、急に新型コロナの最前線の現場に行く心構えも訓練もすぐにはできないことは理解できる。平時から、感染症対応の専門性の高い人材育成が課題だ」と強調した。
 その観点で、自衛隊の予備自衛官を参考にした「災害等即応看護師等事業」の創設を提案したが、これに対する政府からの直接の回答はなかった。
 加藤厚労相は、「潜在看護師の活用については、即戦力を求めるニーズが病院にあり、マッチングがうまくいかなかったところがある。潜在看護師ではなく、専門性の高い看護師を養成し、派遣するための事業にも取り組んでいる」と説明した。星議員は、「感染症に立ち向かうのは機械や設備ではなく、結局は『人』。そこへの投資をどう考えるかだ」と述べ、締めくくった。

 

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