全日病ニュース

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病院ブランディングと街づくり

病院ブランディングと街づくり

【広報委員会】

 病院のあり方は、医療・介護の連携の枠を超え「街づくり」にまで視野を広げることが必要な時代となってきた。各病院が固有の価値を見出し、広報活動を通して行った様々な取り組みが、地域住民や行政、企業を巻き込んだブランディングへとつながっている。今回、街づくりに先進的に取り組む3病院にご講演頂いたので、その講演要旨を掲載する。なお、当委員会として全日病ニュース「広報のあり方シリーズ」上で3病院の紹介を考えている。

 地域活性化への起爆剤となるために~阪神淡路大震災を経験した地域だからこそ~

 医療法人社団十善会法人本部長
 林 政徳

 当法人は昭和6年の初代野瀬善三郎医師から二人の息子、そしてその三人の息子たちも医者になるという奇跡の法人である。平成7年、神戸市長田地区で多くの命が奪われ、地域の人口は三分の一まで減り病院存続が危ぶまれたが、平成26年8月に新病院をオープンし、来年にはクリニック、訪問介護、サ高住、疾病予防事業等を開設するまで成長した。
 6つのコンセプトを中心に患者さん、地域、職員が平等で一人一人が主役となる地域作りに貢献したい。十善会で働くことに誇りを持ち、すべてを受け入れ前向きに物事を捉えることが出来る職員を増やすこと、職員の質を上げること、仲間意識と持つことが大切と考えている。コンフリフト・マネジメントを全てに対し活用しているが、コンフリクトがあるから組織は成長するし、謙虚になれると考えている。利他の精神でこれからも十善会のスタッフ、地域の方々と共に発展していきたい。

 地域にとけこむ広報活動~なかまちーずプロジェクト~

 一般財団法人操風会岡山旭東病院企画課主任
 井上朝美

 岡山旭東病院は、幅広い広報活動を行っているが、イベント開催が多くなり、広報内容が行事中心の情報発信に陥っていた。そこで初診患者や地域住民、イベント参加者等に広報に関するアンケート調査を実施し、必要な情報を適切に発信するには情報に応じたツールを選択する必要があることを認識した。当院への受診動機は、医療機関、知人・家族からの紹介が殆どで、病院は地域の医療機関や地域住民との信頼関係で成り立っていることもわかった。地域と病院の架け橋となることが病院広報に求められている。
 そんな中、岡山市中区地域では、医療・介護・福祉施設や行政と住民を巻き込んだ「なかまちーずプロジェクト」という、地域包括ケアシステム実現に向けた街づくりが始動している。今後も地域を巻き込み地域にとけこむ病院広報のあり方を構築していきたい。

 生きる力を引き出し、繋げる、拡がる

 医療法人社団アルペン会理事長
 室谷ゆかり

 アルペングループは、医療法人社団・社会福祉法人から成り、富山市内4カ所で事業を行っている。町医者から始まり、療養病院となり、介護のため社会福祉法人を設立した。その後在宅復帰を目指し療養病院を回復期リハ病院に転換し、地域リハビリ機能を増設した。施設内託児所を設けたことで、教育の素晴らしさがわかり、東日本大震災後、地域の一助として、多世代で知り合う場─あしたねの森を開設した。
 富山医療圏では、2025年までに医療需要が1割、介護需要が4割増と予想される中、勤労人口が著減、介護職は現在学校の募集定員の半分も満たせない。私たちは生きる力を繋げる役割として、障害者の就労支援と商品価値を上げる取組みを進め、来年4月からカフェを始める。中高年のサポーターも少しずつ増えてきたが、私たちの取組みを地域のみならず都会の若者にも知ってもらい、人に関わる仕事を選択し活躍できる場を提供していきたい。

 

全日病ニュース2017年11月1日号 HTML版