全日病ニュース

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在宅医療のエビデンス集作成で会議体を設置

在宅医療のエビデンス集作成で会議体を設置

【厚労省・全国在宅医療WG】3団体合同の診療ガイドラインも作成

 厚生労働省の全国在宅医療会議ワーキングループ(新田國夫座長)は10月20日、新田座長の下に、在宅医療のエビデンス集の作成に向けた会議体を設けることで合意した。病院から在宅への移行期の介入の有効性など、在宅医療のエビデンスを蓄積することがねらい。国立長寿医療研究センター、日本老年医学会と日本在宅医学会合同の在宅医療診療ガイドラインは来年4月の公表に向け、作業を続けている。
 全国在宅医療会議は重点的に取り組む分野として、①在宅医療に関する医療連携・普及啓発モデルの構築②在宅医療に関するエビデンスの蓄積―を位置づけ、WGで具体的な検討を進めている。同日は、国立長寿医療研究センターの三浦久幸氏が、日本老年医学会と日本在宅医学会合同による在宅医療診療ガイドラインの作成状況を説明した。ガイドラインは来年4月の公開を目指している。
 在宅医療診療ガイドラインは現場で行われている在宅医療の有効性を示し、今後の課題を明らかにするのが目的。
 疾病の治療方法を目的としたものではなく、例えば、次のようなクリニカル・クエスチョン(CQ)がある。◇在宅緩和ケアは在宅療養患者に有効か◇在宅での看取りは有効か◇在宅医療は入院医療や施設入所より費用負担削減に有効か─など。
 ただ三浦氏は「他の学会の診療ガイドラインのような十分なエビデンスはなく、論文集に近い」と指摘。さらに、病院から在宅、在宅から病院への移行期のケアの評価などを考慮していないことも課題として指摘した。
 これを受け委員から、在宅医療診療ガイドラインの課題に応えるべく、学識者を中心とする少人数の会議体を設けるべきとの提案が出た。①病院から在宅移行に関する阻害要因への介入効果②在宅から病院への再入院の抑制効果③看取り期の介入効果などを課題とし、設置することで合意を得た。
 他の委員からは「対立構造を作るような在宅医療ありきの議論にしてはいけない。入院医療と外来、在宅医療を選択できる体制が必要」との意見が出た。全日病副会長の安藤高夫委員は、在宅医療を評価する指標が恣意的に使われることのないよう釘を刺すとともに、「超高齢化と療養病床などからの移行分で、特に大都市では在宅医療の需要が急増し、人材確保が深刻」と指摘。病院が提供する在宅医療の積極的な活用や入院医療との適切な連携体制が求められることを主張した。
 また、厚労省は今後、在宅医療連携モデル構築のための実態調査を実施することを説明した。地域で有効に機能している10 ~ 15地域の連携モデルを選定し、構築に至るまでの経緯や役割分担の詳細などを把握する。来年1月に調査を実施し、3月に報告書を作成する予定だ。

 

全日病ニュース2017年11月1日号 HTML版