全日病ニュース

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病院経営改善をデザインするための機能評価

【続報・全日本病院学会 in 石川】

病院経営改善をデザインするための機能評価

【病院機能評価委員会】

 最初に座長である、病院機能評価委員長の木村厚よりパネルディスカッションの趣旨を説明した。病院機能評価に対する希望として、認定されることで病院経営にプラスになる経済的なインセンティブが欲しいという声をよく聞く。今回は、全員サーベイヤーの経験のある機能評価委員にパネリストをお願いし、自分の病院が機能評価の認定を受けたことでどのように病院経営改善をデザインできたかを話し合うことを目的とした。
 1番目は全日病副会長でもある群馬県伊勢崎市の美原記念病院の美原盤院長に、急性期のDPC病院の立場から発言してもらった。同病院は、機能評価受審を経験している205名にアンケート調査を行ったが、①約7割が受審してよかったと回答、②病院の目指す方向が明確になることで、業務の標準化と効率化が促進され、医療の質・安全性の向上が期待できる、③病院スタッフの取り組みの変化により、間接的ではあるが病院経営上のメリットも考えられるとの結果が得られた。
医療の質が向上し病院経営に貢献
 2番目は慢性期病院の立場から、福島県郡山市の土屋病院の土屋繁之理事長に発表してもらった。東日本大震災で被災した病院から昨年新築移転したばかりで、人間ドックや健診にも力を入れている。最初の前提として、病院機能評価の評価ツールは、医療の質向上のために作られており、病院経営に直接つながるものではないことを挙げた上で、機能評価受審で見えてきた数値をピックアップした。①抗菌薬使用量が3年で42%減少した、②検診受診者数が6年で2.9倍に増加した(新築病院に移転した事も一因となってはいる)、③准看護師から正看護師になる人数が増加した、④医療事故防止の研修会に参加する人数が増加したなどで「医療の質が向上することで病院経営に貢献している」と述べた。
 3番目は看護管理の立場から、東京の聖母病院の岩渕泰子副院長の発表である。前職の聖マリアンナ医科大学ナースサポートセンターでの経験をお話しいただいた。キックオフミーティングの際に院長から「認定取得後こそが真価を問われる。継続的な改善に努めることが、患者満足に繋がる」との訓辞を頂いたことが披露された。
 数値化できた効果として、①転倒・転落発生件数が4年間で70%減少した、②入院単価が3,200円アップした、③看護師の退職率が2.5%減少した、④看護師の入職率が66%増加した、等の報告があった。
 4番目は事務管理の立場から、埼玉県白岡市の白岡中央総合病院の朝見浩一事務長に発表してもらった。同病院は、関東全域に医療・介護施設を展開している上尾中央医科グループの一員であり、病院機能評価はグループ全体で取り組んでいるので(AMQI)、その視点からの話となった。グループの基本姿勢としては、医療の安心・安全の確保は当然として、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、患者自身が納得して主体的に医療を選択できるようにすることが重要と考えている。具体的な数値としては、①薬剤師1人当たりの収入が18年で5.5倍になった、②エラスポールの購入本数がAMQI介入後急激に減少し7年間の減少累積額は2億円を突破、③血液製剤廃棄率が減少し2年間で118万円のコスト削減となったと説明した。
 最後に当委員会の外部委員で東邦大学の長谷川友紀教授から、病院機能評価のメリットとして、「細かい経営上の数値も大事だが、病院の医療の質の向上があって初めて考えられることである」とのコメントを頂いた。

 

全日病ニュース2017年11月1日号 HTML版