全日病ニュース

地域包括ケアを支える中核医療機関の役割・機能のあり方

【高齢者医療介護委員会】

　全日病では平成28年度「老人保健事業推進費等補助金」を活用して「地域包括ケアを支える中核医療機関の役割・機能のあり方に関する研究事業」を行った。全国の病院（8,452病院）を対象としたアンケート調査を行い、1,894病院から回答を得た。「７：１又は10：１病棟を有する病院」、「７：１又は10：１以外の一般病棟を有する病院」、「一般病棟を有しない病院」の３グループに分けて集計を行った。
　地域包括ケアを進める上で一番重要と思われる在宅・施設患者の急変時の入院受入は、「７：１病棟等一般病棟」が多く、「一般病棟を有しない病院」では低めであった。退院前カンファレンスの参加依頼でも同様の傾向が見られた。病院規模や機能によって差は見られたが、それぞれの地域にあった取り組みが行われていた。そこで全日病の会員病院の取り組みをパネルディスカッション形式で発表した。
　芳珠記念病院の仲井培雄理事長・院長は、地域包括ケア病棟の取組みを発表した。同病院は、全身麻酔手術を担う320床のケアミックス病院で、地域包括ケア病棟のポストアキュート、サブアキュート、周辺機能、在宅・生活復帰支援の４つの病棟機能を駆使しつつ、他の病棟や併設老健と通所、訪問の各事業所機能を活用して、「ときどき入院　ほぼ在宅」を実践している。
　院内多職種協働は、リハビリ、NST、リハ栄養、認知症ケア、多剤投薬対策を包括的に提供し、オンデマンドでリアルタイムのPOCリハに注力している。
　2018年春には幼老障の共生型事業を開始し、仲井理事長自身の夢として、「2005年に合併した能美市を2025年までにヘルスケアサービスで一つにして“のびのび能美！ヘルスケアコミュニティ” を創造したい」と語った。
　光風園病院の木下牧子副理事長は、療養病床からの地域包括ケア病棟への転換が少ない中で。2010年に回復期リハ病棟、2016年に地域包括ケア病棟を立ち上げた。「いずれの病棟でも慢性期医療の実績が病棟運営や患者アウトカムに大きな貢献をしている」と報告。
　慢性期病棟から転換した地域包括ケア病棟では、リハやケアが充実しており、また緩和ケアや神経難病のケアにも実績をあげている。「医療と生活のコーディネータとしての潜在能力は地域包括ケア病棟運営の大いなる利点と思われる」と述べた。
多機能型慢性期病院の取組み
　池端病院の池端幸彦理事長・院長は、在宅医療を支える病院の役割について述べた。国の調査結果では、終末期に自宅で最後まで療養したいとの回答は約１割に過ぎない。「本人の希望に添って在宅限界を少しでも高める一方、必要なとき、必要な期間、入院できるベッドが求められる。その入院を支える病床こそ、地域包括ケア病床や療養病床ということになる」と強調した。同病院では、30床の療養病床１病棟を『多機能型慢性期病院』と位置付け、機能強化型在宅療養支援病院として運用している。それを可能にするために、①在宅復帰・在宅医療支援機能、②リハビリテーション機能、③終末期医療機能を高めながら、かかりつけ医、ケアマネジャー、地域包括支援センターとの連携を重視し、在宅支援を行っていると報告した。
　恵寿総合病院・けいじゅサービスセンターの中川一美課長は、地域包括ケアにおいては、医療介護ニーズの増大のみならず、社会や地域の変化とともに生活者の抱える課題そのものが複雑・多様化していることを認識し、地域の医療機関として、急性期の段階から介護福祉生活までを一体的に捉える視点を持つことが重要であると指摘した。
　地域包括ケアにおける病院の役割として、在宅療養支援機能と急性期からの退院支援体制の充実の二点を挙げた上で、「地域を知り、地域住民の生きる力を応援する活動、地域医療介護連携を継続していく」と意気込みを語った。