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入院医療に関する2017年度調査の結果を報告

入院医療に関する2017年度調査の結果を報告

【中医協・入院医療等分科会】病棟群単位の届出は微増だが要件見直しが課題

 中医協の「入院医療等の調査評価・分科会」(武藤正樹分科会長)は10月5日、厚生労働省から2016年度診療報酬改定の影響に関する2017年度調査の報告を受けた。経過措置があり、一定期間後の影響を調べる必要があった項目を調査対象とした。調査結果は分科会で分析した上で、中医協の基本問題小委員会・総会に報告される。
 2017年度調査の対象は、◇一般病棟入院基本料・特定集中治療室等の「重症度、医療・看護必要度」◇短期滞在手術基本料と総合入院体制加算◇救急医療管理加算等◇療養病棟入院基本料等─。一般病棟等から1,270病院(回収率51%)、療養病棟から789病院(回収率44%)の回答を得た。
 病棟群単位の届出は14病院
 2016年度改定で導入した病棟群単位の届出の状況をみると、利用する病院は、全体の2.0%に当たる14病院にとどまった。この14病院に今後の届出の意向をきくと、「7対1への再度の届出を検討」が3病院、「10対1への転換を検討」が5病院、「未定」が6病院となっている。2016年度調査では8病院だったため、わずかに増えた。
 病棟群単位の届出は、7対1入院基本料から10対1入院基本料に変更する際に限り、7対1と10対1の病棟の混在を認めるもの。今年4月以降は7対1が病床全体の60%以下でなければならず、原則として、届出後に10対1から7対1への転棟はできない。董仙会理事長の神野正博委員は、「7対1病院に戻れないなど、使い勝手が悪いことが利用の少ない原因。要件の見直しを検討すべき」と主張した。
 特定集中治療室の「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合は、2017年3月で88.1%、ハイケアユニット入院医療管理料が88.9%でほほ同じ。病床利用率は、特定集中治療室が73.3%、ハイケアユニット入院医療管理料が71.3%で、平均在院日数は、特定集中治療室管理料が7.2日、ハイケアユニット入院医療管理料は6.2日となっている。特定集中治療管理料の在院日数は3日以上4日未満、ハイケアユニット入院医療管理料は2日以上3日未満の割合が高いが、いずれの管理料でも10日以上の患者が約2割いた。
 総合入院体制加算は、「十分な人員配置および設備等を備え、総合的かつ専門的な救急医療を24時間提供できる体制および病院勤務医の負担の軽減および処遇の改善に資する体制等を評価した加算」。入院から14日を限度に算定できる。しかし手厚い評価を行っている加算1(240点)の算定が2016年度改定前の時点で、5病院だけだった。2016年度改定で要件緩和を行った結果、加算1は2017年7月1日時点で37病院に増えた。
 2016年4月以降、新たに総合入院体制加算1を届け出た理由をきくと、20病院のうち17病院が、「化学療法の件数緩和で、要件を満たすことが可能になった」と回答した。2016年度改定では、化学療法について「年4千件以上」を「年千件以上」に緩和しており、その効果が現れた形だ。
 また、総合入院体制加算には、加算1~3のいずれでも精神科要件がある。総合入院体制加算の要件のうち、満たすことが困難な要件として最も多かったのは「精神病床を有し、精神病棟入院基本料等を届け出て、現に精神疾患患者の入院を受け入れている」(77.9%)だった(複数回答)。今後、精神科要件の取扱いが課題となりそうだ。
 救急医療管理加算は、緊急に入院を必要とする重症患者に対して救急医療が行われた場合に、入院から7日を限度に算定できる。加算1(900点)と加算2(300点)がある。2016年度改定では、加算1の対象に「緊急カテーテル治療・検査またはt-PA療法を必要とする状態」を含むことを明確化し、点数を100点上げた。一方、加算2は100点下げた。加算2の適正化の背景に、重症患者の状態に「準ずる」状態であれば、算定できる曖昧さがある。委員からは基準の明確化を求める意見が出た。神野委員は、「厚生局によって判断が異なるのも問題ときいている」と指摘した。
 療養病棟2の1割が5%減算に
 療養病棟では2016年度改定で、医療区分2、3の患者割合が入院基本料2で、5割以上であることを求める一方で、医療区分または看護職員配置基準のみを満たせない病棟については、5%減算した上で、2018年3月末までの算定を可能とした。入院基本料2で5%減算を算定する病棟は約10%(23病棟)で、算定の理由は、1病棟を除き、医療区分2・3の患者割合を満たせないと回答した。
 療養病棟の看取りの状況が議論になった。看取り患者に対する対応方針を定めている療養病棟は43%で、定めていない療養病棟の方が多かった。対応方針を定めていない理由としては、「個別の患者ごとに対応できているため」が大部分で93%を占める。神野委員は「93%が個別に対応できているとの結果に注目すべき」と述べた。
 また、厚労省が作成した「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の利用状況では、ガイドラインを利用している病棟は約2割。「ガイドラインを知らない」と回答した病棟が約1割で、「利用していない」と回答した病棟は約6割だった。

 

全日病ニュース2017年11月1日号 HTML版

 

 

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    12月15日号 HTML版。21 ... 平成27年12月11日の中医協総会における議論をもって
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    881回/2016年10月15日号 HTML ... ○894病院が回答 調査は、日病協に加盟する
    13団体を通じて7対1入院基本料を届け出ている病院の意向を確認する目的で7月に
    実施。 .... 【報告 2016年度診療報酬改定 これまで中医協の議論より】 .

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