全日病ニュース

がん対策、腎代替療法、移植医療で次期改定の論点提示

【中医協総会】人工透析の評価は緩和と適正化

　中医協総会（田辺国昭会長）は10月９日、次期診療報酬改定に向け、がん対策・腎代替療法・移植医療をテーマに議論した。がん拠点病院加算や緩和ケア病棟入院料、外来緩和ケア管理料、人工腎臓、在宅時自己腹膜灌流指導管理料、経皮的シャント拡張術・血栓除去術の評価見直しが課題にあがった。見直しの方向性に委員から大きな反対はなく、今後具体的な内容を詰める。
　がん拠点病院加算については、地域がん診療連携拠点病院に、同一医療圏に一つだけ認める「高度型」と要件が満たせない場合の経過措置的な位置づけである「特例型」が昨年度に新設された。７月１日時点で、「高度型」が14カ所、その他が325カ所。「特例型」は、今年度の適用はない。また、がんゲノム医療中核拠点病院に加え、９月19日に、がんゲノム医療拠点病院が34カ所指定された。このような整備状況を踏まえ、がん拠点病院加算の算定要件等を見直す。
　緩和ケア病棟入院料については、2018年７月１日時点で、416病院が届け出ている。ただ、緩和ケアチームによる緩和ケア病棟と在宅緩和ケアの連携が求められている中で、緩和ケアチームの診療を評価する緩和ケア診療加算の届出は、入院料届出病院の22％、外来緩和ケア管理料は21％、在宅療養支援診療所・病院の医学管理を評価する在宅がん医療総合診療料は14％にとどまる。このため、外来や在宅における緩和ケアの提供を要件とする方向で、緩和ケア病棟入院料を見直す。
　一方、心不全患者に対する緩和ケアは、がんよりも経過予測が難しく、心不全多職種緩和ケアチームがかかりつけ医をサポートするなど、地域の実情に応じた柔軟な活動を行うことが期待されている。2018年度改定で、末期心不全の患者が緩和ケア診療加算の対象患者に加えられたが、外来緩和ケア管理料には加えられていないため、整合性を図る。
　透析患者に対する腎性貧血治療では、治療に用いるエリスロポエチン製剤が、人工腎臓の技術料に包括されている。それによりエリスロポエチン製剤の使用量が減った経緯がある。最近では、最も使われるダルベポエチンの薬価が７割になるバイオ後続品も薬事承認されており、適正化される見通しだ。
　一方、ESA製剤とは別の機序の新たな腎性貧血治療薬であるHIF-PHD阻害剤が、９月に薬事承認された。ESA製剤よりも治療効果が高い症例があることが確認されている。従来の考え方に従うと、HIF-PHD阻害剤も技術料に包括されることになるが、HIF-PHD阻害剤は経口内服薬であり、院外処方の場合などでの取扱いを整理しなければならず、評価体系を見直すことが論点となった。
　在宅時自己腹膜灌流指導管理料は、現行では血液透析を他施設で行う場合の算定は認められない。しかし腹膜透析を実施できる透析施設は全体の17％にとどまり、「透析療法選択の自由を奪う」との指摘が出ている。このため、他施設で血液透析を実施した場合の評価を認めることを検討する。
　血液透析において、血液をスムーズに流すため、血管をつなぎ合わせる内シャントの作製は、近年増加傾向にあり、７割が外来で実施されている。臨床実態に即した評価を行うため、経皮的シャント拡張術・血栓除去術の３カ月に１回の算定を緩和し、手技の評価を適正化することを検討する。
　移植医療については、日本の臓器移植数が諸外国に比べて少ない中で、臓器提供時の施設や担当医の負担が大きいことへの対応が論点となった。脳死下臓器提供では、脳死判断から摘出まで平均64時間かかる。また、約50名の医療関係者が関わる。診療報酬では、脳死臓器提供管理料（２万点）と各臓器の採取術（心臓だと６万2,720点）がある。臓器提供時の負担は施設の66％、担当医の77％で負担が大きいと感じているとの調査結果が出ており、特に「患者家族への説明・フォロー」「院内スタッフの調整」で回答が多かった。負担の大きさが、家族に臓器提供に関する選択肢の情報を提示する頻度の低さにつながっていると考えられ、診療報酬での評価を検討する。