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ホーム全日病ニュース(2019年)第951回/2019年11月1日号重症度、医療・看護必要度の基準②の妥当性めぐり議論

重症度、医療・看護必要度の基準②の妥当性めぐり議論

重症度、医療・看護必要度の基準②の妥当性めぐり議論

【中医協・入院医療等調査分科会】地域の急性期病院に重要な指標

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は10月16日、次期診療報酬改定に向け、厚生労働省の追加資料をもとに、「重症度、医療・看護必要度」など入院患者の評価指標の妥当性をめぐり議論を行った。特に、2018年度改定で設けた基準②について、急性期病棟の評価としての適切性を問題視する意見があることに対し、全日病副会長の神野正博委員は、一般病院の急性期医療の実態を示しつつ、「重要な評価指標」と強調した。
 一般病棟の「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合は、例えば、急性期一般入院料1だと30%以上。該当基準は3つあり、基準②(患者の状況等を測るB項目の「診療・療養上の指示が通じる」または「危険行動」に該当し、A得点1点以上かつB得点3点以上)は2018年度改定で新設した。
 認知症やせん妄のある患者などへの医療が通常より労力を要するため、それを評価した側面がある。検証結果をみると、基準②のみに該当する患者は、高齢で認知症やせん妄、要支援・要介護の割合が高く、自立の割合が低い傾向にあることが確認された。また、病床規模の小さい病院で該当割合が高い。
 また、「重症度、医療・看護必要度」の「Ⅰ」「Ⅱ」の両方を算定する病棟で、「Ⅰ」の割合が相対的に低いと、基準②の該当患者割合が高いことや、基準②の該当患者は基準②のみに該当する患者が多いことも、指摘されている。
 今回、厚労省は、入院料ごとに基準②のみに該当する患者割合を調べた。それによると、7対1特定機能病院入院基本料は1.7%、一般病棟の旧7対1が4.7%、療養病棟入院基本料Ⅰは14.6%だった。患者の状態等のA項目の該当では、急性期病棟は療養病棟と比較して、「創傷処置」の割合が低く、「心電図モニターの管理」が高かった。
 神野委員は、「認知症、せん妄の患者が療養病棟に多いのは当たり前。創傷処置が多いのも褥瘡の治療などだろう。慢性期と急性期の違いは、急性期は急に患者の容態が変わるということ。何らかのイベントがあって、その結果、経過観察が必要な状態であり、心電図モニターの管理の該当が多いのも説明できる。地域で、救急車を多く受け入れる一般の急性期病院が、いかに急性期医療を提供し、その後別の機能に受け渡していくかが重要視される中で、基準②は意義がある評価指標だ」と強調した。
 他の委員からも神野委員の意見に賛同する声があがった。ただ、法政大学教授の菅原琢磨委員は、神野委員の意見に一定程度同意しつつも、「療養病棟の患者の方が高い割合となる評価指標を用いて、急性期病棟において、急性期の患者の評価指標とすることの妥当性はあるのかという問題は残ると思う」と述べた。
 また、厚労省は、B項目が「ADLを含む患者の状態」と「看護職員等による当日の介助の有無」が一緒に評価されていることの是非を論点とした。B項目のうち、「寝返り」などが患者の状態であるのに対し、「移乗」「口腔清潔」「食事摂取」「衣服の着脱」の4つは介助を評価している。患者の状態と介助の有無は分けて評価すべきとの意見に、日本看護協会の委員を含め、多くの委員が賛同した。
 C項目(手術等)については、現行の評価指標には含まれていないが、外来ではなく、入院で実施される割合が高い手術などが示され、C項目の候補となった。一方、C項目に該当させる上で、侵襲性の高さや医学管理の労力を見込む必要があり、診療報酬点数との相関のデータも示された。

療養での高カロリー輸液投与を調査
 特定集中治療室等については、2018年度改定で報告対象とした入退室時の生理学的スコア(SOFA)の詳しい報告があった。傷病によって点数のばらつきが多いこともわかったものの、「重症度、医療・看護必要度」と一定の相関があり、SOFAによる評価指標に有用性があることでは、委員の同意が得られ、引続き検証していくとともに、救命救急入院料などにも拡大すべきとの意見が相次いだ。
 療養病棟入院基本料の医療区分については、医療区分3に該当する中心静脈栄養が継続されている期間を把握するため、高カロリー輸液の投与状況を調べた。それによると、高カロリー輸液を投与されている患者割合は、ゼロ%の病院が最も多いが、50%以上の病院もあった。投与日数の平均は、30日未満が最も多いが、90日以上の病院もあった。一部の病院で、医療区分3の患者を確保するために、中心静脈栄養の患者が選択されていることが改めて示唆された。
 長期間の中心静脈栄養の実施は、感染リスクを高めるため、神野委員が「カンファレンスの実施など取り外す努力を必須化することや、患者・家族との話し合いを行うなどの対応が求められる」と述べるなど、感染リスクへの対応が必要との意見で一致した。

 

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