全日病ニュース

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医師偏在の原因と対策

医師偏在の原因と対策

【特別講演6】国際医療福祉大の高橋泰教授が偏在対策を提言

 学会2日目に行われた特別講演6では、国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授が「医師偏在の現状」のテーマで講演し、各種のデータを駆使して、医師偏在の原因を解き明かした。
 1県1医大構想に基づいて、1970年代に32校の医学部が新設され、医師の養成は年間8,000人体制となった。毎年4,000人の医師がリタイアし、差し引き4,000人くらい医師が増えた。現在、医学部の定員増によって毎年9,000人の医師が誕生するが、今後、新設医大の卒業生がリタイアの時期を迎え、6,000~ 7,000人がリタイアする。これまでは毎年4,000人の医師が増えていたが、2,000人しか増えなくなる。「厚生労働省は2028年から2033年頃に医師の需給が均衡すると予測しているが、思ったほど医師は増えないので、誤差が生ずる。厚労省の予測通りにならない可能性がある」と高橋教授は指摘した。

女性医師は今後も確実に増える
 次いで高橋教授は、3師調査のデータを基に過去20年間の変化を分析した。
 1996年から2016年を比べると、女性医師と40歳以上の男性医師の増加により医師の総数は33%増えた。一方、若い世代は増えておらず、30代に限れば男性医師は21%も減少している。実は日本の女性医師の比率は世界で一番低い。「どうみても女性医師はもっと増えていく。それを前提に制度をつくる必要がある」と高橋教授は述べる。
 大都市・地方都市・過疎地で分けると、1996年から2016年にかけて大都市は41%、地方都市は30%増えているのに対し、過疎地は4%しか増えていない。大都市の増え方が激しい。
 病院と診療所でみると、2006年から2016年にかけて病院勤務医は20%増えたが、診療所の医師は8%しか増えなかった。若い医師は、開業しなくなったためだ。

外科医の減少が問題
 診療科別にみると、外科だけが減っている。「厚労省は小児科と産科に焦点を当てているが、外科に焦点を当てて対応を考える必要がある」と高橋教授。
 医師の地域偏在は、若い男性医師が過疎地に行かなくなり、男性以上に大都市志向である女性医師が急増していることが原因だ。若い医師が大都市に集まり、過疎地に行かなくなった。過疎地では医師の数が増えず、さらに高齢化が進む。「これまでがんばっていた医師がリタイアするようになると、病院の当直が組めなくなる」と懸念した。
 これらの分析結果を踏まえ高橋教授は、「働き方改革が始まり、女性医師が4割まで増えることを考えると、今後医師が充足するとは考えにくい。医学部の定員増をやめるのは間違っている」と述べた。
 その上で具体的な対策を提言した。医師需給に大きな影響がある若い医師の動向に焦点を当てた資料を公開し、それをもとに偏在対策を議論するべきだと主張。さらに、緊急に過疎地に医師を派遣する仕組みをつくることを提案し、「開業を含め法人の長になるには指定の地域で半年以上働くことを義務化することで、過疎地の問題は解決に向かうだろう」と述べた。

 

全日病ニュース2019年11月1日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20130501/news03.html

    2013年5月1日 ... また、横倉日本医師会長が参考人として出席。 ... 12人の見解表明には、国民会議委員
    以外に、国際医療福祉大学の高橋泰教授(全日病広報委員会特別委員)が、権丈委員
    の要請で参加した。 ... 権丈委員(写真右)は、自説の根拠となるデータとして、高橋教授
    が作成した、2次医療圏別の人口動態と医療・福祉資源を中長期的に予測 ... ただし、
    診療報酬にはできないものがあり、それは地域偏在の是正である。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2013年11月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2013/131101.pdf

    2019年8月2日 ... このため、田中滋部会長代理(慶應大学経営大学院教授)は「機能別の区分を定めるが
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    高橋泰教授(全日病広 ... 予測をデータベース化した高橋教授は、.

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