全日病ニュース

今こそ示せ、機能評価認定病院のプライド

【病院機能評価委員会】病院機能評価委員会委員　朝見浩一

　病院機能評価は、1997年に運用が開始された（公財）日本医療機能評価機構による病院機能評価事業であるが、評価方法、評価項目、機能種別など年々見直され、2018年4月からは3rdG：Ver2.0として運用されている。
　当委員会では、今年度の学会テーマに沿い、「今こそ示せ、機能評価認定病院のプライド」と題して、機能評価でＳ評価（秀でている、特に良いと認められた評価）を取得した部門の代表者に演者をお願いした。普段、病院の中では裏方的な存在となっている栄養部門、薬剤部門、地域連携部門、リハビリ部門、事務部門の立場で、それぞれの部門のプライドをかけ、どのようにＳ評価を取得したのか、そこに至る経緯など具体的な事例を含め発表頂いた。
　最初に千春会病院栄養科の谷中氏に「積極的な栄養管理の仕組みと実際」と題して発表頂いた。60床という小規模病院ではあるが栄養部門に20名配置され、管理栄養士を厨房と病棟にも配置し、多職種連携の中で、随所に工夫されたきめ細やかな食事の提供をされていた。さらに管理栄養士が地域活動にも参加されていることは地域貢献にもつながる取り組みである。
　次に、総合大雄会病院薬剤科の後藤氏に「安全な薬剤の使用について薬剤師ができること」と題して発表頂いた。口頭指示を原則禁止、薬剤師が24時間体制で処方・注射薬監査を実施、病棟に注射薬を極力配置しない取り組みや、病棟での薬剤師と看護師の連携による注射薬の調製など、日頃の取り組みが高い評価を受けた実例であった。
　続いて、西岡病院医療ソーシャルワーカーの岡村氏に「PDCAサイクルと地域連携」と題して発表頂いた。地域連携を推進する「とよひら・りんく」の活動を通じて、在宅療養支援診療所等とタブレットを活用した情報共有、看取り介護に向けた冊子作成や情報提供、アドバンス・ケア・プランニング（ACP）への地域支援活動、さらに災害時を想定した体制作りなど、積極的な地域連携活動を推進されていた。
　次に、美原記念病院言語聴覚科の腰塚氏に「今こそ示せ、リハビリ専門職のプライド」と題して発表頂いた。回復期リハ病棟のFIM目標の設定では、ADL目標を数値化し予後予測表、歩行動画、介護保険リハビリの説明など患者側の視点で具体的な情報提供をされていた。また、畑プロジェクトというリハビリの活用効果では、患者の生きがい作りや行動変容を促すユニークな成果のある取り組みをされていた。
　最後に、木村病院常務理事の木村氏より「地域包括ケアシステムが進む中で中小病院ができる地域への情報発信」と題して発表頂いた。都市型の高齢化が進む地域の中で、災害時医療救護訓練、地域連携の会、地域包括ケアシステムを考える会、市民医療フォーラムなどの活動を行い、さらに、地域のお祭りやイベントにも積極的に参加されており、活発な取り組みが評価されたということであった。病院の診療機能を活かした活動に止まらず、地域密着型病院として、地域と共に活動されている特徴的な取り組みの実例であった。
　その後、フロアからいくつかの質問と演者を交えた意見交換が行われた。機能評価を受審する負担はあるものの、それ以上に病院機能が向上するなど得られるもの方が大きいということであった。また、それぞれの病院の取り組みに共通する点として、機能評価受審を目的化することなく、PDCA を回しながら、患者のため、地域のために活動されていた。日頃の取り組みが高く評価され、病院機能評価を通じて医療の質向上につながっている事例は、他の会員病院にとっても大いに役立つ内容であったのではないだろうか。