全日病ニュース

全日病ニュース

病院事務職の矜持

病院事務職の矜持

【シンポジウム5】組織管理と人材育成の経験を共有

 病院で働く医療専門職がプライドを持ってスキルを発揮できる職場環境をつくるには、事務職のお膳立てが不可欠であり、事務職の働きが病院経営の原動力となっている。学会2日目の午前に行われたシンポジウム5「病院事務職の矜持」では、3人のパネリストが自らの経験をもとに病院事務職としての矜持を語った。
 木沢記念病院病院長補佐兼事務長の佐合茂樹氏は、「病院事務職41年の経験からみた『らしさ』の醸成」について発言した。大学を卒業して同病院に就職してから現在まで、佐合氏は4人の病院長の下で働き、様々な経営課題に関与してきた。「性格の違う4人の院長にうまく使われるのが私の使命だった」と佐合氏。病院長を支えるためには、事務長の下で働き、使える部下を育てておかなければ何もできない。
 佐合氏は、木沢記念病院における中間管理職養成の取組みを説明した。同病院では、通常の人事考課による昇任ではなく、役職者資格認定に通らなければ役職につけない仕組みになっている。推薦書を提出し、病院長面接を受け、小論文を提出した上で、役職者任命会議の承認を得る必要がある。一回で認定を通ることはなくて、管理職者としての考え方を徹底して確認する。
 管理職としての「らしさ」は年をとれば自然に身につくものではなく、そうなろうとする努力が必要。仕事に対する厳しさや考え方をしっかり持つことが大切で、「事務職としての矜持はそうした積み重ねで生まれてくる」と佐合氏は述べた。

医療の質と経営の質の両立に取り組む
 上尾中央医科グループ協議会の病院管理室室長の朝見浩一氏は、「Ourquality is our pride~事務管理者の立場から~」について発表した。Ourquality is our prideは、職員の目標として示しているもので、「自分の病院を家族や友人に胸を張って紹介できるか。地域でオンリーワンの病院になろうと話している」と朝見氏。
 朝見氏は、病院事務長職のほかにAMQI(上尾医療の質向上委員会)で、医療の質と経営の質(経営改善)を両立させる仕事に取り組んでいる。「収支を追いかけるだけでは病院の機能としては十分ではない。質を高めなくてはいけない」と朝見氏はいう。
 AMQIでは、医療の質の評価指標(QI)を収集・分析し、グループ内の病院の相互評価を行っている。日本医療機能評価機構の病院機能評価の受審にも取り組む。
 指標の一つとして、患者満足度調査の状況を紹介した。外来の患者満足度は改善傾向にあるが、グループ内でばらつきもある。「ベンチマークによって自院の立ち位置を知ることが大事だ」と朝見氏は述べた。
 廿日市記念病院事務長の新山毅氏は、「事務職のできること~黒子であり要になる~」のテーマで発表した。新山氏は、一般企業に就職し、営業部門で勤務した後に同病院に入職した。当時は病院の管理部門の強化を図っている時期であり、企業組織を知る若い人材で、医療の常識にとらわれない病院組織をつくる狙いがあった。
 同病院は、1991年の開設で若い組織。「ゼロからのスタートだったが、企業での勤務経験は役に立った」と新山氏はふり返る。新山氏は、人事考課制度の構築に取り組み、年功序列から職能給へ移行。当初は、職員の理解が得られず苦労したが、段階的に制度を整え、目標管理制度を立ち上げることができた。
 新山氏は、「人事考課は職員がやりがいを持つために重要な骨組み。中小民間病院に重要な制度である」と述べ、現場をよく知り、経営感覚を持った事務職が組織力を高めると考えている。

 

全日病ニュース2019年11月1日号 HTML版