全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2019年)第951回/2019年11月1日号将来の診療報酬の在り方について考える

将来の診療報酬の在り方について考える

将来の診療報酬の在り方について考える

【医療保険・診療報酬委員会】医療保険・診療報酬委員会委員長 津留英智

 「次期改定については中医協において第2ラウンドの協議がスタートしたが、本格的議論はこれから。医師の働き方改革も踏まえ、将来の診療報酬の在り方について3人の演者にご講演頂き、総合討論を行う」と司会者より主旨を説明した。要旨は以下の通り。

①「医療人(医師)の働き方改革」(同委員会 西本育夫委員)
 人口減少・少子高齢化に対して、働き方改革が推進される意義、医師の働き方改革の問題点について説明があった。厚労省より医師の宿日直、自己研鑽の通知が出たが、医師の副業規制については「労働政策審議会」の議論に注目が必要。タスクシフト、タスクシェアリングの問題として、医師事務作業補助者の配置が急性期に偏っている点、看護師が人員配置基準に縛られ人手が足りない他部署へ手伝いにも行けない点、専従・専任要件の厳しい縛りにより繁閑の柔軟な勤務対応が出来ない点、介護職員処遇改善加算により、同じ職場において介護職とその他では同一労働同一賃金となっていない点など、様々な具体例をあげ問題提起した。

②「診療報酬と、医療の質・効率化について」(全日病 猪口雄二会長)
 医療提供体制に対する影響因子として、地域医療構想における公私の役割分担、医師の働き方改革(特に副業問題)、総合医の位置づけ、救急・急性期医療の集約化、人手不足の影響として、看護補助者の不足、外国人流入の問題、病院給食提供の問題、グルーピングとして、地域医療連携推進法人、M&A等の問題提起があった。前回ダブル改定から、今年10月消費税増税分の改定、2020年度診療報酬改定に向けての問題点に触れた。重症度、医療・看護必要度の見直し、働き方改革への専従・専任の緩和、看護基準(様式9)の見直し、四病協団体協議会のタスクシフティングへの提言を説明。また複雑化した診療報酬制度、これまで薬価減に頼った改定、2年に1回の改定ペース、性善説中心の制度を変えられない現状、これらの問題点を根本的に変えるには、医薬分業の在り方再考、ストラクチャーからプロセス・アウトカム評価への変革、効率的な病院運営の実現、そのための持続可能は社会保障制度の構築が必要との説明があった。

③「医療現場におけるAI、IoTの導入について」(株CHC 河北真文社長)
 診療報酬制度は、基本的に医療行為に対する対価であり設備投資は考慮されていない。医療情報システムによって本当に業務は効率化されたのか、最新テクノロジーと病院の付き合い方には課題が多い。RPA(Robotic ProcessAutomation)とはPC 内で働いてくれるロボット、医療者はより付加価値労働を行い、単純作業はロボットに任せることが重要。病院内の様々な業務を整理して、企業依存ではなく病院団体としてRPAロボットを開発していく教育研修事業が重要。医療材料のバーコード管理にRFIDを導入して人件費削減等の紹介があった。

④《総合討論》
 介護処遇改善加算の現場での問題点を再確認した。副業問題、働き方改革、宿日直の問題については、医療機関側も部署別、職種別等の細かな対応が必要。RPAと診療報酬ついては業務洗い出しが先決だが、人事労務管理は実現可能。最新テクノロジーには新たな投資が必要だが診療報酬に転化してコスト回収が出来ない。病院が教育研修事業でRPAを開発し利益を再投資する仕組作りが必要。複雑な診療報酬制度、査定制度等に縛られ過ぎており、最低限の保険給付制度は維持しつつも、患者が自由診療、選定療養としてサービス、質を選択できる新たな仕組みが求められる等の討論があった。今後三位一体改革、診療報酬制度改革は患者本位の改革であるべきと締めくくった。

 

全日病ニュース2019年11月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2018年度診療報酬改定が意味するもの、今後の方向性について|第 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180601/news05.html

    2018年6月1日 ... 2018年度診療報酬・介護報酬同時改定をむかえ、同時に第7次医療計画、第3期介護
    保険事業計画、第3期医療費適正化計画、その他 ... できる質の高い医療の実現・充実
    、Ⅲ医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進、Ⅳ効率化・適正化を通じた制度の
    安定化・持続可能性 ... のデータをさらに解析し、入院基本料評価体系(特に急性期入院
    基本料)が見直しされ、場合によっては、高度急性期病院は、看護必要度 ...

  • [2] 働き方改革への診療報酬での対応を議論|第942回/2019年6月15日 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190615/news01.html

    2019年6月15日 ... 中医協総会(田辺国昭会長)は5月29日、2020年度診療報酬改定に向け、働き方改革
    への対応を中心に議論を行った。 .... かかりつけ医に連絡し、書いてもらうことを診療
    報酬で評価すれば、急性期の大病院の勤務医負担軽減につながる」と ...

  • [3] 医師の働き方改革の中で人員をどう確保するか|第932回/2019年1月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190101/news03.html

    2019年1月1日 ... 医師の働き方改革の中で人員をどう確保するか外国人を含めて多様な働き手を活用
    控除対象外消費税の問題は決着 .... 加納 今回の診療報酬改定では、急性期から回復
    期、慢性期に患者を早く送る動きが進んでいるため、4月以降、急性期 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。