全日病ニュース

成果をあげる特定保健指導の方法を説明

【人間ドック委員会】人間ドック委員会委員長　西　昂

　人間ドック委員会のセッションでは、「医療職のためのこれからの特定保健指導」をテーマに、特定非営利活動法人健康経営研究会の岡田邦夫理事長とあいち健康の森健康科学総合センターの津下一代センター長の講演が行われた。
　岡田氏は、「アウトカムを求める保健指導」について説明。保健指導を通じて個人の行動変容をいかに進めるかが重要であるとし、保健指導の担当者に求められる能力をあげた。
　特定保健指導は、メタボリックシンドロームに着目し、健診結果に基づいて対象者を階層化し、リスクに応じて行動変容を支援するものだが、多くの人は健康に無関心であり、体重が増えても生活習慣を変えることに消極的で、先延ばしにしがちだ。このため、対象者のヘルスリテラシーを高めることが産業保健スタッフに求められると岡田氏は説明する。
　健診の結果を正しく理解してもらうことが有効だ。健診結果から将来の発症リスクを知らせ、行動変容をサポートする。「自分ごととして健診データを理解し、リスクを認識して行動を変えるようにサポートすることが重要」と岡田氏は強調する。
　個人では生活習慣を変えるのは難しい場合も多い。岡田氏は、職場全体で取り組み、個人の行動変容を組織で支え、ワークスタイルを変えることが大切と指摘した。

行動変容をサポートする働きかけ
　津下氏は、「第３期に入った特定保健指導―実施率・効果を高めるために」のテーマで講演。保健指導は、健診のデータを活用して行動変容を促す仕組みであると説明した上で、健診結果に問題がなくても黄色信号が出ている人にアプローチすることが大切と述べた。健診のデータからメタボになりかかっている人を抽出し、生活習慣を変えることで、悪化を食い止めることが求められる。「自覚症状や痛みの感覚がない人に気づいてもらうことが大切」と述べた。
　そのためには、何から行動を始めたらいいかを一緒に考える姿勢が大切だ。本人がイメージできることを具体的に約束し、それが習慣につながるように応援していくことが保健指導の基本的な流れとなる。
　特定保健指導は、リスクの有無で網掛けをし、全員をカバーするために階層化の考え方を取り入れている。限られた資源を有効に活用するための方策だ。保健指導は自分では指導を受けたいと思わない人に会えるチャンスであり、指導者としての力量が問われる。
　「20分の限られた時間なので、難しいことを話すのではなく、できるだけ簡単にその人がメリットと感じられるように話すことが重視される。多くの人はできない理由を述べるが、何ができるかを一緒に考えることが大切」と津下氏は強調する。
　本人が自分ごととして、意欲を持って行動を変えることが重要だ。津下氏は、生活を変えてよかったと意識できるようにPDCAを回して効果を確認することを保健指導担当者に求めた。