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ホーム全日病ニュース(2019年)第951回/2019年11月1日号働き方改革への診療報酬での対応で意見が対立

働き方改革への診療報酬での対応で意見が対立

働き方改革への診療報酬での対応で意見が対立

【中医協総会】「病院のマネジメント改革は急務」猪口会長

 中医協総会(田辺国昭会長)は10月18日、次期診療報酬改定に向け、医療従事者の働き方改革への診療報酬での対応を議論した。しかし、評価のあり方をめぐり、診療側と支払側の委員が基本的な考えで対立。全日病会長の猪口雄二委員は、「急性期を中心に、病院のマネジメント改革は急務。それには人手も時間もかかる。診療報酬での手当が必要」と訴えたが、支払側の一部委員は、「次期改定での対応は時期尚早」と冷ややかな態度を示した。
 2024年度から医師への時間外労働規制が適用されるため、病院は医師の時間外労働を年960時間以内に収める必要がある。特定の病院は年1,860時間が上限(B水準)だが、経過措置との位置づけである。病院は今後5年間で様々な手段を通じて、過重労働の医師の労働時間を減らし、勤務環境を改善しなければならない。
 そのような状況で、診療報酬は対策を講じるのに要する費用の源泉になる。しかし、中医協の議論で支払側は総じて厳しい姿勢を示した。健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、「次期改定での対応に明確に反対する。一定のコストがかかるのは理解するが、タスク・シェアやICT の利活用、外来医療の機能分担などやれることを整理してから診療報酬を考えるのが順番。働き方改革、地域医療構想、医師偏在対策の三位一体の推進も、予算が相当ついたが、緒についたばかり。2024年度までに改定は3回ある」と述べた。
 このような意見に対し、診療側委員は反論したが、意見は平行線をたどった。日本医師会の城守国斗委員は、「医師の手当は大きな人件費増。医師の業務をシェアしても、シェアされた職種の増員が必要になる。院内保育所の整備でもコストがかかる」と具体的に列挙した。猪口委員は、「病院の利益率は数%で、コスト増が病院の存続に直結する」と強調した。
 一方、厚生労働省は、医師事務作業補助体制加算や総合入院体制加算など、現行で医療従事者の負担軽減に資する計画作成を要件化している診療報酬を例示。入院基本料の加算で、働き方改革への対応を評価することを示唆した。医師の働き方改革では現在、2024年度までにより多くの病院が、年960時間を満たせるよう医師労働時間短縮計画の策定を病院に求めることを検討している。計画に盛り込まれる必須事項を入院基本料の加算の要件と合わせることでの評価が考えられる。
 これに関連し、猪口委員は、「医師事務作業補助体制加算はそれ自体加算として重要だが、それとは別に病院のマネジメント改革を評価する入院基本料の加算を検討すべき」と主張した。

入院なしでrt-PA投与を算定
 同日の総会では、外来における薬剤耐性(AMR)対策と脳梗塞の急性期治療をテーマとした議論も行った。
 AMR 対策では、2018年度改定で小児抗菌薬適正使用支援加算(80点)を新設した。AMR対策は道半ばで引続きの対策を求められることから、現行での3歳未満の規定を6歳未満に拡大することを検討する。ただ、月2回以上の算定が少なくないことに対しては、適正化が必要との指摘があった。また、支払側の委員は、小児かかりつけ医診療料等の加算であることから、加算の評価自体に難色を示した。
 脳梗塞の急性期治療では、rt-PA静注療法を実施する超急性期脳卒中加算(入院初日1万2千点)が、入院基本料の加算であるため、入院しないと加算できない。しかしrt-PA 投与後に専門医療機関に二次搬送する「Drip andShip法」の安全性が確認されている。これを踏まえ、入院せず専門的な治療を行える施設に二次搬送した場合でも、算定できるよう要件を見直すことで概ね合意した。
 また、日本脳卒中学会の「rt-PA静注療法適正治療指針第2版」に定める「治療を行う施設」の基準が緩和された。このため、これにあわせて診療報酬の要件を見直す方向だ。
 10月23日の総会では、医療機器の取扱いをテーマに議論した。
 PET(陽電子放出断層撮影)は、入院中の患者が他の医療機関を受診した場合に、入院料減額が緩和される対象から外れており、共同利用に逆行する形になっているため、緩和対象に含める方向で検討する。
 画像検査による医療被ばくについては、低減に向けた取組みが進められている中で、日本医学放射線学会が推奨しない小児への頭部CT検査の適正使用の評価を検討する。超音波検査は、日常的な検査で、観察部位や検査方法、報告書の作成等は医療機関により異なる状況。標準的な機能となったパルスドプラ法の取扱いを含め、超音波検査を領域別に評価することを検討する。

 

全日病ニュース2019年11月1日号 HTML版

 

 

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