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ホーム全日病ニュース(2019年)第951回/2019年11月1日号医療安全管理体制相互評価の意義と対応

医療安全管理体制相互評価の意義と対応

医療安全管理体制相互評価の意義と対応

【医療の質向上委員会】医療の質向上委員会委員 飯田修平

1.本企画の趣旨
 医療の安全確保は、病院団体、職能団体、医療機関および医療従事者の責務である。しかし、昨今、安全に関する問題が多発し、医療における安全の確保は国民の強い要請となっている。
 かかる情勢を受けて、厚生労働省は、2006年の医療法改正で、医療機関に医療安全管理体制の整備を課した。
 医療安全管理体制相互評価は、特定機能病院に義務化されているが、それ以外の医療機関は任意であり、いくつかの団体が自主的に実施している。
 2018年4月の診療報酬改定では、医療安全対策地域連携加算が新設された。しかし、相互評価の方法や内容は標準化されていない。同一の考え方、同一の評価基準、同一の評価表で、自己評価し、他院の評価を受けることが重要である。
 したがって、当委員会では、医療安全対策地域連携加算に適切に対応するために、標準的安全管理点検表を作成することとした。現時点では、研修会の受講は施設基準の要件ではないが、感染管理加算と同様に、近い将来、体制構築および運用の実態が問われることは必至と認識している。
 本企画は、本制度の意義を理解していただくとともに、実践する参考に資することを目的にした。

2.講演概要
2-1 「標準的相互評価点検表の開発の経緯とその役割」を永井庸次氏(株式会社日立製作所ひたちなか総合病院名誉院長)が解説した。2018年度に4回の「医療安全管理相互評価者養成講習会」を開催した。最初の3回の講習会の知見等に基づいて、標準的安全管理点検表とその点検表の解説をまとめ、『医療安全管理体制相互評価の考え方と実際: 規模別・機能別に適用できる標準的相互評価』を出版した(メディカ出版 2018年12月)。2019年1月には、本書に基づいた標準的安全管理点検表の実践に基づいて、第4回目の講習会を開催した。
2-2 「相互評価の評価者の教育研修について」を藤田茂氏(東邦大学医学部社会医学講座講師)が全日病の研修会を開催した経験を基に解説した。
2-3 「標準的相互評価点検表を用いた相互評価の実際」について、「評価側の立場から」小澤里美氏(磐田市立総合病院医療安全管理者)が、規模、機能の異なる病院間の調整が困難であるが、標準的点検表を使用したので、可能であったと工夫を解説した。
2-4 「標準的相互評価点検表を用いた相互評価の実際」について、「受入側の立場から」金内幸子氏(練馬総合病院薬剤科長)が、事前の院内調整と評価側との調整の工夫と留意点を解説した。
2-5 総合討議では、演者間および会場との活溌な質疑応答があった。

3.まとめ
『医療安全管理体制相互評価の考え方と実際』を出版できた最大の要因は、委員会委員と研修会参加者との相互意見交換に基づいて標準的相互評価点検表を段階的に改訂して作成したことである。
 真の意味の「医療安全対策地域連携」体制を構築することとその実践が求められている。医療安全委員会(医療の質向上委員会から分離)主催の研修会に参加いただき、相互評価を模擬体験していただきたい(第2回相互評価研修会開催予定2019年12月21~ 22日)。

 

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