全日病ニュース

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ホーム全日病ニュース(2021年)第995回/2021年10月1日号「病院から健院へ」地域のコミュニティセンターに

「病院から健院へ」地域のコミュニティセンターに

「病院から健院へ」地域のコミュニティセンターに

【招聘講演】邉見公雄・全国公私病院連盟会長

 コロナ禍だからなおさら、生命を輝かさなければならない。医療者を含めてであり、そうでなければ、患者は「この病院は大丈夫かな」と思うだろう。
 私は、医療と教育は日本の2大基幹産業だと思う。明治政府は医療と教育に力を入れてきた。耕地が狭くて、鉄や石油、石炭もあまり採れないこの国が諸外国と互角にわたりあえたのは、子どもたちに健康と教育を与えてきたからだ。しかし、第二次世界大戦後、日本はこの医療と教育を軽視してきた。私にはまったく理解できない。
 私は阪神・淡路大震災を兵庫県で経験したが、「あんな病院必要あるのかな」と思っていた病院が、実は震災でがんばった。いつも満床の病院は近くにけが人がいても入院させられないし、いい経営者のいる病院の倉庫には薬がない。そういったなかで、「あんな」と思っていた病院が非常に活躍した。これを東京で言っても、前は誰も聞いてくれなかったが、新型コロナで見事に病床不足の問題が浮き彫りになった。
 病院こそが地域のコミュニティセンターになる。中世では教会や神社仏閣がこの役割を担った。その後はメセナやシティホールとなった。21世紀こそ「病院」、あるいは健康づくりのための建物である「健院」が地域のコミュニティセンターになるだろう。
 地域医療構想の再編統合の俎上にのぼった436の病院は、医療保険からお金をもらって医療を提供するから怒られるので、健康な人からお金をとってプレホスピタルケア・ポストホスピタルケアを行えば生き残れるのではないかと思っている。
 病院院長として、職員に言っていたのは、「愛院心」を持ってほしいということ。また、朝出勤したときと帰る前に自分の患者をみてほしい。その間に、別の仕事をしていても患者は自分のことを気にかけていると勘違いする。この「よい勘違い」を続けてほしい。
 受付と電話交換手は、病院の顔だ。この2つがうまく機能しないと、患者との関係は一期一会になってしまうおそれがある。患者を怒らせた場合、病棟ではいつでも謝ることができるが、外来はそこの対応次第で二度と患者が来なくなる。地域をひとつの病棟と考えていただきたい。入院前と入院後の患者の居場所について、病院としてもある程度把握しておく必要がある。
 私は2018年7月に、地域の医療と介護を守るための支援や情報発信などを行うNPO法人の地域医療介護研究会JAPNを設立した。医療と教育を一番重視し、限界集落のような地域に行って、病院の存続を呼びかけている。
 病院が、隣に「健院」をつくって、まちづくりの中核を担ってほしい。病院は、給食における地産地消や住民の雇用などいろいろなことができる。

 

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