全日病ニュース

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コロナの影踏まえ2022年度改定を展望

コロナの影踏まえ2022年度改定を展望

【医療保険・診療報酬委員会】医療保険・診療報酬委員会委員長 津留英智

 冒頭、座長より「2020年改定は新型コロナの影響により、様々な経過措置が再々延長となるなど異例の事態となっている。中医協における8月第2週までの議論を中心に、新型コロナによる影響と次期改定の展望について3名の演者にご講演いただき、特別コメンテーターを交えて総合討論を行う」と主旨説明を行った。内容要旨は以下の通り。

①新型コロナを踏まえて2022年度診療報酬の展望について~急性期医療~
島  弘志(現)中医協委員 日本病院会副会長 社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院院長

 急性期における、新型コロナに対する診療報酬上の特例的な対応、政府支援策、経過措置等の取扱い、それらの算定状況、また3病院団体経営調査よる医業利益への影響と支援金の補填状況について講じられた。また、今秋10月以降病床確保の予算問題、第8次医療計画の策定、医師の働き方改革、特に外来定額負担の対象拡大・金額上乗せし保険給付から控除する問題、次回改定に関しては特にオンライン診療、特定不妊治療の保険適応化の推進の方向性、最後に厚労省科研費による重症度、医療・看護必要度Ⅱのソフトウエア9社の調査結果について報告された。

②コロナが促す地域包括ケア病棟の診療の質、報酬の質
仲井 培雄 地域包括ケア病棟協会会長 医療法人社団和楽仁芳珠記念病院理事長

 主に入院医療等の調査・評価分科会の報告より、地ケアが自院一般病棟からの転棟が多い問題、回リハでは入棟時のFIMが低下している問題点を指摘。また補完代替リハのうち、特にPOCについて、腰HAL心不全リハの効果とモーニング・イブニングのリハマネの効果についての研究結果、次回改定に期待する事柄について講じられた。今後、地ケアのあり方として、地域包括ケアシステムや地域医療構想のニーズや人口ビジョンに基づいて、医療介護複合ニーズの変化、在宅医療の進化への対応、multimorbidity (マルモ)患者増加への総合診療等での対応の重要性について論じられた。

③ウィズコロナ時代における慢性期医療の課題と展望~ 2022年度診療報酬改定を見据えて~
池端 幸彦 (現)中医協委員 日本慢性期医療協会副会長 福井県医師会会長 医療法人池慶会池端病院理事長・院長

 慢性期の視点から、「かかりつけ医病院」の重要性、外来定額負担の問題、今後経過措置(注11)病棟・療養2の移行先、医療区分3の中心静脈栄養の患者割合の問題、療養病床退棟先が死亡退院55%と高い問題、障害者病棟については、療養病棟と実態差がないというデータが示されている点を講じて、ウィズコロナの医療提供体制について、地域包括期(急性期多機能病院+慢性期多機能病院)、慢性期(慢性期多機能病院+慢性期治療病院)という新たな機能区分の提言、①在宅復帰・在宅医療支援機能②リハ機能③終末期医療機能(看取り)の充実、選択と集中の必要性、地域包括ケアパッケージ戦略、地域包括ケア機能、多機能型慢性期病院について論じられた。

④《総合討論》特別コメンテーターとともに
猪口 雄二 (前)中医協委員 全日本病院協会会長 日本医師会副会長 医療法人財団寿康会寿康会病院理事長

 猪口会長より、新型コロナ禍において、また人口減少・少子高齢化時代において、これからの地域医療・医療提供体制のあり方の視点から様々なコメントをいただいた後、総合討論を行った。コロナ禍であり経過措置延長となっている中での次期改定については不透明ではあるが、財源がないことから厳しい改定になる見込みであること、どのような改定を迎えたにしても、地域におけるニーズを踏まえ、地域における自院の役割をより明確化して対応することが重要であるという論点では、概ね意見が一致した。

 

全日病ニュース2021年10月1日号 HTML版