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ホーム全日病ニュース(2023年)第1045回/2023年12月1日号日本の外国人介護労働者受け入れの現状と課題

日本の外国人介護労働者受け入れの現状と課題

続報・全日本病院学会 in 広島
日本の外国人介護労働者受け入れの現状と課題

【外国人材受入事業企画】

 外国人材受入事業の企画では「日本の外国人介護労働者受け入れの現状と課題」をメインテーマとして、100名超の方々が参加されたシンポジウムを行った。
 座長、各演者のテーマは下記のとおり。
 ・「外国人技能実習生(介護分野)の受入れについて」座長 外国人材受入事業会議 担当役員 山本登
 ・「技能実習制度30年の経験と今後への示唆」演者 東海大学 教養学部 人間環境学科教授 万城目正雄
 ・「技能実習生受入れ法人の報告」
 ① 現地面接の重要性<ベトナム・ミャンマー訪問を振り返って>
  演者 医療法人社団誠和会 牟田病院 理事・事務部長 義本正二
 ② ベトナム人実習生1名とミャンマー人実習生16名~外国人実習生を受け入れてみて~
  演者 社会医療法人博愛会 開西病院 看護科長 櫻井すみれ
 始めに座長の山本担当役員から、全日本病院協会での外国人材受入事業発足の経緯を説明。1993年に外国人技能実習制度が制定され、2018年から全日病が監理団体として外国人技能実習生受入事業を開始。現在はベトナム人45名、ミャンマー人68名の実習生の監理を実施。本事業の特徴として非営利事業であり、全国対象のため監理費は割高だが、相対コスト低下で監理費の値下げが可能。高度人材育成を掲げ、入国時には日本語能力N3レベル相当で入国を進めている。外国人が日本の病院・施設で介護士(病院においては看護補助者)として実習を行い、日本の医療・介護技能等の移転を図り発展途上国の医療レベル向上を担う人材育成を目的としている。
 次に第1部の講演として東海大学教養学部人間環境学科教授の万城目正雄氏より講演いただく。日本の在留外国人は近年増加傾向にあり1990年から約30年で3倍へと増加。また様々な目的をもって日本に在留する外国人が増加したことにより、「多文化社会」へと推移。医療・福祉の外国人労働者数においても2018年からの5年間で約3倍へと増加。
 現在、技能実習制度及び特定技能の在り方に関する有識者会議にて今秋に最終報告書が出る見込み。
 外国人材の確保育成を目的とした在留期限3年の「育成技能」を新たに創設。一定の条件はあるが転籍も可能。新制度創設によって、より企業の受け入れ体制を整えていく必要がある。
 OECDの受入国に入国してから5年以内に20%~ 50%の外国人が母国に帰還している。帰還意識を低下させるには、言語能力、親友、組織活動への従事、ネットワーク、アイデンティティの形成が重要であると示唆。
 第2部の講演として、医療法人社団誠和会牟田病院理事・事務部長の義本正二氏より、ベトナム、ミャンマーに現地面接を行った様子、現地で面談することの重要性等をお話しいただく。
 候補生から興味を持ってもらえるように、病院の紹介やその地域等の紹介を行い、候補生がイメージできるようアピールが必要。これにより当初配属を希望していた候補生が1名から6名に増えた。
 WEBを通じて面接も行えるが、現地面接のメリットとして、候補生の国民性・地域性を直接肌で感じ取ることができ、信頼関係構築の第一歩であると説いた。
 続いて社会医療法人博愛会開西病院看護科長の櫻井すみれ氏より、ベトナム人・ミャンマー人実習生を受け入れてからの現状について発表いただく。
 もともとベトナム国では高齢者が少なく、老人ホームのような施設はほとんど無いため、配属後は見学・見守り・実施のステップを踏み順調に実施ができた。日本語学習については職員がテキストを使用して指導を行い、交換日記、WEBサイト等も活用。
 実習生の尊厳を大切にして関わることで実習は円滑に進み、チームの一員として役割を果たすことが出来る貴重な人材となり、病院、施設等で外国人が働くことは、医療・介護現場の働き方改革に繋がると発表された。
 最後に座長の山本担当役員、演者の方とディスカッションをし意見交換を行った。

 

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転籍  OECD