全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2023年)第1045回/2023年12月1日号「重症度、医療・看護必要度」の各項目の適正化が論点に

「重症度、医療・看護必要度」の各項目の適正化が論点に

「重症度、医療・看護必要度」の各項目の適正化が論点に

【中医協総会】救急搬送後の入院等の評価日数、B項目の除外、平均在院日数の短縮などで賛否

 中医協総会(小塩隆士会長)は11月8日、2024年度診療報酬改定に向けて、急性期入院医療やオンライン診療をテーマに議論を行った。特に、急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)について、機能分化を推進する観点から、適正化の方向での論点が示された。診療側委員は、医療現場に与える影響が大きいことから、慎重な検討を求めた。支払側は、「救急搬送後の入院等の評価日数」の見直しやB項目の除外、平均在院日数の短縮などを主張した。
 また、同日の総会から、日本病院団体協議会が推薦する2号側委員として、全日病愛知県支部長でもある日本医療法人協会副会長の太田圭洋委員が、着任している。

7対1病棟の高齢患者の増加が背景
 厚生労働省は、入院・外来医療等の調査・評価分科会のとりまとめも踏まえ、「7対1病棟においても高齢患者の割合が増加する中で、医療機関間の機能分化による効率的な医療の提供を推進する観点」から、急性期一般入院基本料の施設基準における一般病棟用の「必要度」に関して、論点を提示した。具体的には、以下のとおりである。
 ◇「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」の評価日数
 ◇「注射薬剤3種類以上の管理」の対象薬剤及び評価日数
 ◇「呼吸ケア」及び「創傷処置」における必要度Ⅰ及びⅡの違い並びに「創傷処置」における「重度褥瘡処置」の扱い
 ◇入院で投与される割合にばらつきがあることを踏まえた「抗悪性腫瘍剤の使用」等の対象薬剤
 ◇7対1病棟におけるB項目の取扱い
 ◇直近における入院での実施率及び入院から手術実施までの日数を踏まえたC項目の対象手術等及び評価日数
 ◇短期滞在手術等基本料の対象となる手術等を実施する患者の取扱い
 ◇必要度Ⅱの届出施設の増加等を踏まえた必要度Ⅱの届出を要件とする範囲
 これらに加えて、「急性期一般入院料1における平均在院日数の基準の短縮化」も論点となった。
 7対1病棟である急性期一般入院料1の必要度の該当患者基準割合は、200床以上の病院で必要度Ⅰの基準値が31%、必要度Ⅱが28%、200床未満の病院で必要度Ⅰの基準値は28%、必要度Ⅱは25%。基準に該当するには、「A得点が2点以上かつB得点が3点以上の患者」、「A得点が3点以上の患者」、「C得点が1点以上の患者」のいずれかを満たす必要がある。
 最近の診療報酬改定では、毎回この「必要度」の見直しが大きな課題となってきた。急性期入院医療の機能分化を推進し、結果として7対1病床を減らすことの手段になっている。2024年度改定でも、急増する高齢者救急への対応という観点も加わって、議論の焦点になった。実際、11月初旬の中医協の議論で、これだけ詳細な論点が出てくるのはめずらしい。中医協委員からは、これらの見直しを実施した場合に医療機関にどのような影響があるかを明らかにするシミュレーションの実施を要望する意見がすでに出ている。
 一方、太田委員は、個別の議論に入る前に、病院にとっての入院基本料の位置づけを説明。必要度の見直しは医療現場への影響が大きく、慎重な検討が不可欠であることを強調した。特に、「入院基本料は病院の人的コストを賄っており、主に高齢者を受け入れる病院にとって人的コストが担保される診療報酬が不可欠」と訴えた。「それが不十分だと、手薄なスタッフで労力がかかる患者に対応せざるを得ず、医療現場の持続可能性が危うくなる」とした。
 個別の論点については、主に次のような議論があった。
 「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」の評価日数の論点は、高齢者救急問題と直接関連する。健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「急性期一般入院料1における高齢者の入院で、入院初期にこの該当項目の割合が高く、5日目を超えると該当割合が減少するのは、患者の病態ではなく、救急搬送の有無が判断基準になっているからで、軽症の高齢者が急性期病棟に搬送される誘因になってしまっている。適正化を図るべき」と主張した。
 一方、日本医師会常任理事の長島公之委員は、増大する高齢者の急性期医療のニーズに対し、適切に対応するための評価を検討することに一定の理解を示しつつ、太田委員と同様に、急激な見直しが、地域の医療提供体制に悪影響を与えることへの懸念を示した。その上で、患者の病態に合わせて、適切な救急搬送が行われることに資する評価を考えるために、さらなる資料の提示を厚労省に求めた。
 「注射薬剤3種類以上の管理」の対象薬剤及び評価日数については、2022年度改定において適正化の観点で、「点滴ライン同時3本以上の管理」から「注射薬剤3種類以上の管理」に変更したにもかかわらず、特に入院10 ~ 20日目の患者で該当が上昇する傾向がみられた。該当項目では、薬剤として「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」の割合が上昇していることから、支払側の委員は、急性期医療にふさわしい項目への適正化を求めた。
 「呼吸ケア」や「創傷処置」については、入院・外来医療等の調査・評価分科会で、「評価負担の軽減や評価基準の平準化のため、評価基準を必要度Ⅱに統一すべき」との指摘があった。「創傷処置」における「重度褥瘡処置」については、同分科会で、「急性期医療におけるケアを適切に評価する観点から、『創傷処置』に該当する診療行為から『重度褥瘡処置』の実施は削除すべき」との指摘があった。支払側の委員からは、これを支持する意見があり、診療側からは、引き続き慎重な検討を行うべきとの意見があった。
 入院で投与される割合にばらつきがあることを踏まえた「抗悪性腫瘍剤の使用」等の対象薬剤の論点については、外来での化学療法の実施の推進が阻害されない対応が多くの委員から求められた。

B項目は急性期になじまないか
 7対1病棟におけるB項目の取扱いをめぐっては、さまざまな意見が出た。B項目は、患者の状態と介助の実施の項目の組み合わせで評価する項目であり、看護・介護の手間を表している。支払側の委員からは、急性期医療を評価する項目としては、「なじまないのではないか」との意見が相次いだ。
 これに対し、診療側からはさまざまな意見が出された。
 太田委員は、「誤嚥性肺炎や尿路感染症など軽症とされる高齢者医療に対して、どれだけの人的コストがかかっているのかを把握し、分析の結果が出るまでは、B項目の見直しは控えるべき」と主張した。長島委員は、「B得点を廃止すると、A得点2点の患者が全く評価されなくなる。A得点2点の患者に提供されている急性期医療をどう評価するかを検討する必要がある」と述べた。
 日本医師会常任理事の江澤和彦委員や日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、急性期病棟に入院する患者のADLをきちんと評価し、維持するための取組みが行われ、適切なリハビリテーションが実施されることを促す評価が必要であることを強調した。池端委員は、ADL維持向上等体制加算の大幅な評価の引上げを求めた。
 日本看護協会常任理事の木澤晃代専門委員は、「B項目の測定は急性期から回復期、慢性期にわたって重要な役割がある。必要度においてB項目を除外する場合であっても、B項目で評価していることの測定は必要」と述べた。
 C項目の対象手術等及び評価日数については、診療側・支払側双方とも、直近のデータに基づいて、適切に評価が設定されることを求めた。
 短期滞在手術等基本料の対象となる手術等を実施する患者の取扱いについては、松本委員が、外来で実施することのできる手術等は外来での実施が促されるようにすべきとの観点から、必要度の対象に、短期滞在手術等基本料を加えることを主張した。一方、長島委員は、「地域包括ケア病棟など別の入院料との取扱いの考え方と逆行する」と慎重な検討を求めた。
 必要度Ⅱの届出を要件とする範囲については、必要度Ⅱが要件となっていない医療機関でも、届出が増加していることから、範囲を拡大することが論点となった。支払側からは範囲拡大に賛成する意見があり、診療側からはさらなる検証が必要との意見があった。
 在院日数の要件については、短縮が論点となった。調査では、「急性期一般入院料1における平均在院日数は、90%以上の施設で施設基準よりも2日以上短い。また、届出病床数が小さい場合にばらつきが大きい」、「急性期一般入院料1のうち平均在院日数の長い群では、特定集中治療室管理料の届出割合が小さく、地域包括ケア病棟または回復期リハビリテーション病棟の届出を行っている割合が大きい」といったデータが示されている。
 松本委員は、「機能分化を推進する観点から、(急性期一般入院料1で18日以内となっている)平均在院日数を短縮すべき。急性期一般入院料1以外の入院料についても対応すべき」と主張した。長島委員は、「データをみると、平均在院日数は短くなっているが、そういう数字の追いかけっこが本当に患者のためになるのか」と問いかけた。

急性期充実体制加算等の施設基準
 高度急性期医療を提供する病院が届け出る診療報酬であることが想定されている総合入院体制加算と急性期充実体制加算の施設基準をめぐり議論が行われた。地域における総合的な入院体制を支えるための両者の施設基準のあり方や、化学療法が外来で実施されることや心臓胸部大血管手術の集約化が行われることを促すための施設基準の見直しが論点となっている。
 急性期充実体制加算は2022年度改定で導入され、24時間の救急医療体制や手術等の実績で厳しい基準を設ける一方で、高い点数がついた。総合入院体制加算から急性期充実体制加算への移行が一部で起きており、総合的な入院体制の確保に懸念が生じている。このため、急性期充実体制加算の要件見直しや、総合入院体制加算の点数を引き上げるべきとの意見がある。急性期充実体制加算の300床未満に適用される基準は不要との意見も出た。

 

全日病ニュース2023年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。