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ホーム全日病ニュース(2023年)第1045回/2023年12月1日号支払側が地域医療体制確保加算廃止を主張

支払側が地域医療体制確保加算廃止を主張

支払側が地域医療体制確保加算廃止を主張

【中医協総会】診療側は「むしろ2024年度以降に重要となる加算」と反論

 中医協総会(小塩隆士会長)は11月15日、2024年度診療報酬改定に向けて、働き方改革の推進をテーマに議論を行った。2020年度改定で導入し、医師の働き方改革に対応するための象徴的な診療報酬項目である地域医療体制確保加算について、支払側の健康保険組合理事の松本真人委員が、「廃止が妥当」と主張したため、診療側委員からは、反対意見が相次いだ。
 地域医療体制確保加算は、地域の救急医療体制において一定の実績(救急搬送件数が年間2千件以上)を有する医療機関について、適切な労務管理などを実施することを前提に創設された。「医師労働時間短縮計画」の作成と定期的な評価・見直しが求められ、入院初日に620点を算定できる。算定医療機関は2022年9月時点で1,045医療機関となっている。
 厚生労働省の調査によると、「時間外労働時間が月155時間(年1,860時間相当)以上の医師はごくわずかだが、時間外労働時間が月80時間(年960時間相当)以上の医師の割合は、2020年から2022年にかけて増加」した。松本委員は、同加算の効果を疑問視するとともに、救急医療に対しては、「救命救急入院料や救急医療管理加算、DPC/PDPSにおける係数などですでに評価がある」と主張した。
 支払側の意見に対し、診療側は反発。日本医師会常任理事の長島公之委員は「地域医療体制確保加算はむしろ2024年以降に重要となる加算だ。大学病院から市中病院への医師の派遣を含め、施行後の状況はまだみえない。今後起こり得ることへの対応として加算が必要になる。長時間労働の医師の割合がわずかに上昇したのは、コロナの感染拡大の影響があると考えている。廃止はあり得ない」と反論した。
 診療側の猛反発を受け、松本委員は「廃止が認められないのであれば、存続の期限を区切った上で、労働時間短縮の効果を高める方向での要件見直しを行うべき」と主張した。
 長島委員は「取組みの成果が必ず毎年の労働時間減少に表れるとは限らない。減り方にも差がある。労働時間短縮の実績の要件化は相当厳しい」と難色を示した。また、「一般企業なら働き方改革への対応は当たり前との意見も出たが、一般企業はコストを価格に反映させる。診療報酬は公定価格で価格転嫁ができない。価格の交渉は、まさにこの中医協で行われる」と述べた。

 

全日病ニュース2023年12月1日号 HTML版

 

 

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