全日病ニュース

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医療情報管理の要諦

続報・全日本病院学会 in 広島
医療情報管理の要諦

【学会企画6】COVID-19の失敗を繰り返さないために


大毛氏


三原氏


市川氏

 学会企画6として、「医療情報管理の要諦─COVID-19の失敗を繰り返さないために」のテーマで3人の演者が講演した。座長の広島大学大学院教授の大毛宏喜氏は、「新型コロナで、情報管理にどのような問題があったかを振り返る。今後の新興感染症だけでなく、病院の中で今後起きる有事への対応を考えるきっかけにしてほしい」と述べた。
 大毛氏は新型コロナにおける国の情報管理について、「死亡者数を最小限に抑える」という政策の基本方針をもっと明確に周知すれば、社会・経済活動の制限に対する理解が得られたかもしれない。また専門家の意見と政治判断を区別すべきだった」と述べた。
 大毛氏は、病院ではゼロリスクを目指さず、リスクの低減を目指して、正確な情報に基づき対応方針を決定することが重要と述べた。
 広島大学病院医療情報部教授の三原直樹氏は、医療データの活用における課題を述べた。
 医療データの活用基盤に関する国際比較を行うと、電子カルテ等のデータ構築と利活用において日本はOECD加盟国では最低レベルにあると指摘した。
 情報の活用が進まない実態の背景として、①医療分野におけるデジタル化の全体像や包括的なシステムの体系が存在していないこと②民間医療機関が多く医療データのシステムが多様で拡散しており、国際整合性を踏まえて標準化された医療データを共有するための情報基盤が存在しない③データの取得・管理・利活用や同意の行い方、医療従事者が見るべき範囲などについて、基本的なルールが定められていない─の3点を挙げた。
 広島大学客員准教授の市川衛氏は、コロナに関する公衆衛生上の課題として注目された「インフォデミック」の概念について説明した。
 インフォデミックとはインフォメーションとエピデミックを合わせた新たな概念で、いわば「情報の感染爆発」ともいえる。インフォデミックの実例として、新型コロナワクチンについて2021年秋にリスクを誇張する情報がSNSを中心に拡散し、特に東欧諸国でワクチン接種を忌避する動きが広がった結果、死者数が増加した事例等がある。
 インフォデミックは、流布する情報のなかに誤解を招く情報が混ざっている状況で生じる。現在、さまざまなSNSで医療・健康に関する情報が日々、膨大に生成されている。「情報がありすぎて、どれを見たらよいのかわからない状態に人々が置かれている」。
 市川氏は、インフォデミックの発生には、公的機関やメディア、医療機関への「信頼感」の有無が関係していると分析されていることを説明した。政府や伝統的ニュースメディア、製薬企業、医療システムへの不信感がある人がSNSで誤った情報を得ると、ワクチンを忌避する傾向があるという。「SNSで不適切な情報に触れることは止めようがないが、その先の公衆衛生上の危機を招くような行動を起こすかどうかという点には介入の余地がある」と述べた。

 

全日病ニュース2023年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 病院のあり方に関する報告書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2021_arikata.pdf

    加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で明らかとなった医療・介護分野に. おける諸課題は、国や各自治体、提供体制側それぞれにあり方の再考を迫るものである。

  • [2] 第4章 会員へのメッセージ:「病院のあり方に関する報告書 ...

    https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2021/04.html

    コラム:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらしたもの. 東邦大学 社会医学講座 教授 長谷川 友紀公益財団法人 東京都医療保健協会 練馬総合病院 理事長 飯田 ...

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