全日病ニュース

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未来へつながる地域づくり

続報・全日本病院学会 in 広島
未来へつながる地域づくり

【広報委員会企画】ファン作りを通して地域を共に創る病院広報

 今回の広報委員会委員会企画は、「未来へつながる地域づくり」というテーマで、基調講演と5人の演者による指定演題の発表という形式で行った。
 基調講演は一般社団法人 病院マーケティングサミットJAPAN 代表理事の竹田陽介先生による「マーケティング視点から始める『愛され病院の作り方』」。竹田先生は循環器専門医だが、病院広報コンサルティング、学会イベントの企画・プロデュースなどをされている。病院マーケティングサミットJAPAN は2018年スタート。中でも「病院ファンづくり部」という部活動で合同勉強会を開催している。
 マーケティング視点では、性能が大きく違わなくてもパーセプション(認識)が異なれば新たな価値を創造でき、新たな市場を開拓できる。今まで病院は病気で困ったとき信頼される、機能依存、サービス購入型であった。しかしこれからの病院は愛される:認識依存、その病院が好きでサポーターになる、対話・共創型となる。
 「病気を治してもらう」+「暮らしを共創する」病院へ認識を変化させる。それには大人だけではなく若者の力が必要。地域住民と病院が地域活動を通して世代、地域、専門を超えて地域の未来を共創する。認識を変えることで新たな市場(価値)を創造できると考えられる。
 指定演題の第1席は、医療法人八女発心会 姫野病院 企画管理室の川上勇貴さんの「病院が目指す未来へつながる地域づくり」。
 病院は医療を提供するだけでなく地域貢献が必要。病院が楽しい場所となるよう2万冊の漫画やゲームの用意、マルシェの開催、職業体験、婚活イベントなどを行っている。また、医師の専用サイトを作り、医師の魅力をアピールしている。地域の駆け込み寺を目指し、病院×医療サービス×人が集まる場所・災害拠点で可能性が広がると考えている。
 第2席は、社会医療法人三愛会 大分三愛メディカルセンター 地域連携センター 秦圭治さんの「地域を巻き込む病院ブランディング戦略の展望」。
 病院の知名度の向上、ブランド確立のため様々な企画で地域を巻き込んだ。定期的な地域住民との意見交換会の開催、地域の店舗の広報誌への掲載、地域の子供たちが参加するマスコットキャラクターの作成、医師の出張講座など地域住民が病院の広報となるような風土を醸成している。リクルート対策として学童保育の設立を進めており、それに地域住民、企業が協働している。
 第3席は、医療法人玉昌会 キラメキテラスヘルスケアホスピタル 田島紘己先生「キラメキテラス~ 30年後の鹿児島への贈り物~」。
 キラメキテラスは、「30年後の鹿児島への贈り物」をコンセプトにした再開発による街づくり構想で2病院、ホテル、マンション、小売店等がある。高度急性期、周産期のいまきいれ総合病院と回復期・慢性期、在宅医療を提供する当院が切れ目のない医療、介護、予防まで連携して行っている。2つの病院は屋内連絡通路で連結されている。CT、MRIの協同使用、健診・ドックの連携、カンファレンス、地域活動を連携して行っている。
 第4席は、医療法人愛和会 愛和病院 秦弘樹さん 「産後ケア施設パタニティ・マタニティハウス 6年間の歩み~地域コミュニティとしての役割を果たす~」。
 2017年開設の父親の育児参加を目的とした産後ケア施設。初産の夫婦と赤ちゃんが滞在中に授乳、沐浴など助産師と練習し、子育ての不安を解消する。会員制でいつでも宿泊できるサロンで保育士による育児相談が可能。この施設を利用した群では第2子出産割合が有意に高かった。サロンは、地域の子育て夫婦にとって孤立を防ぐコミュニティとして役立っている。
 第5席は医療法人社団永生会 南多摩病院 関裕先生 「地域のハブ病院になる~新しい地域医療への挑戦~」。
 搬送先の決まらない、高齢患者に対してERで救急医がAdvanced Triageを行い、病院救急車を用いて他院へ搬送し、地域のハブ病院として機能している。さらに夜間に看護師がいない施設や自宅から搬送されてくる患者に対して、ER機能を持つ救急車両Ermoに医師、看護師が同乗して現場に行き、入院の要否を判断し治療を開始する。必要があれば地域の病院へ搬送を依頼するという試みを開始している。
 会場に集った方々は地域で様々な広報活動を展開している。予算や専任の広報職員の確保が難しい病院も多い中、広報活動にはトップの理解とサポートが重要である。新しい発想によりファン作りを通して地域を共に創る活動がこれからの病院広報には求められている。

 

全日病ニュース2023年12月1日号 HTML版

 

 

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