全日病ニュース

地域医療構想では関係者の納得と合意が重要

【特別講演】武田俊彦　厚生労働省医政局長

　医政局には医師確保策や専門医制度、働き方改革への対応など、様々な課題があるが、地域医療構想と病床機能報告制度に絞って話す。
　人口問題では、高齢化の「率」より「量」の問題が大きくなっている。これまで高齢化に対して、全国一律の対応をとってきたが、地域差が大きく、同じモノサシは当てはまらない。地域医療構想を推進する上で、各地域の課題が異なることを理解する必要がある。
　地域医療構想調整会議では、具体的な対応方針の速やかな策定に向けて、２年間程度で集中的な検討を進めていただきたい。その際、医療介護総合確保基金の活用を視野に入れ、個別の病院の機能の転換なども話し合ってほしい。厚生労働省として、協議に役立つデータも提供するので活用してほしい。
　地域医療構想実現のプロセスには、３ステップがある。①調整会議における協議で、政策医療を担う中心的な医療機関の役割を明確化した上で、その医療機関との連携やその他の機能の役割分担を図る②基金を活用し、病床機能の転換等に伴う施設整備・設備整備の補助などを実施する③医療機関の自主的な取組みが進まない場合の対応として、都道府県知事による機能分化・連携の推進がある。都道府県知事には、一定の権限がある。しかし重要なのは、地域の実情を踏まえた関係者の納得と合意に基づく決定である。
　厚労行政を眺めると、10年単位で施策のターニングポイントがある。1990年代は高齢者介護の時代、2000年代は急性期を中心とした医療機能の分化・連携の時代、2010年度は地域包括ケアの時代だ。今も医療機能の分化・連携の推進は重要な政策課題で、例えば疾病ごとに機能を集約化する方針がある。
　しかし、今後需要が増大する地域包括ケアを担う医療機関は、集約化よりも地域ごとに包括的な医療を提供することが重要になる。
　従来どおりの診療を続けると、病床が次第に空き、医師を確保できず、経営が悪化する例がみられる。その場合に、統合・合併ではなく、地域医療連携推進法人の活用という選択肢もある。
　例えば、人事や電子カルテ、ICT機器の投資など単体では非効率な部分が改善される。人材確保面でもメリットがある。
　調整会議の協議で心配なのは、公的病院など大きな病院から先に機能を決めてしまい、残った機能をその他の病院が分け合うという誤解があることだ。
　これでは議論は進まない。同時並行的に進める必要がある。公的医療機関改革プランの策定についても、病院単体で役割を考えるのではなく、地域のつながりの中で機能を考えてもらう。そして、策定後は速やかに調整会議に提示する。
　病床機能報告制度については、病棟が様々な機能を担う中で、一つの機能を選ぶことになっている。回復期を選んでも、一定の急性期の機能がある。
　療養病床も一部は回復期を担う。地域の中では、むしろ多様な機能を担う病院が必要であると考えている。