全日病ニュース
地域をデザインする病院
地域をデザインする病院
【学会企画シンポジウム3】
学会企画のシンポジウム「地域をデザインする病院」には、病院経営者、地域医療連携のコーディネーター、学者の3人が登壇、地域における病院の役割を論じた。座長は西澤寬俊名誉会長。
株式会社「麻生」代表取締役会長の麻生泰氏は福岡県飯塚市で株式会社「飯塚病院」を経営する。ビジネスマンの観点から発言したいと前置きしたうえで、病院は「労働集約型の最たるものだ」と規定。病院経営に乗り出した時「日本一のまごころ病院を作る」と自らにミッション(使命)を課したことを明らかにした。
親戚筋に当たる故武見太郎日本医師会会長に相談した。「どういう病院を作りたいのか」と聞かれ、麻生氏の返答に「なんだそれ、君の発想は過去からの延長じゃないか。リーダーは未来からものを考えないとダメだ」と一喝されたエピソードを紹介し「大切にしている言葉だ」と述べた。
当時、飯塚病院は「西日本一のおんぼろ病院」と言われ、医師数42人だった。今は医師は300人を数え、全国か業は安定的に進むのか」「メリットは何か」などの議論を繰り返した。共同事業には、人事交流、電子カルテの共有なども視野に入れている。佐藤氏は「ブランド力、経営効率を向上して地域医療のモデルを目指したい」と語った。
松田晋哉・産業医科大学教授は、学者の立場から発言。高齢者を孤立させない住まいの提供が今後、大切になってくると指摘した。
人口減少社会における街づくりに行政は相変わらず無計画だと批判し、「高齢者は楽しいと思える場所があればそこに出かける」。具体例としておばあら見学に来る。カギは、患者の満足度を上げる、医療スタッフがハッピーの2点。「いいスタッフを集めると、患者は自然と集まってくる」。それが病院経営安定の好循環をもたらすと語る。
労働集約型の企業は無駄が多くなる。
「明るく、楽しく、無駄をなくす」を標語に、患者の待ち時間を減らす、薬局では1分以内の受け渡しなどを目標に改善努力している。高齢者が住みやすい街づくりのため、フレイル予防にも力を入れていると語り「病院を中心に街づくりをしていきたい。飯塚のブランドを高めたい」と締めくくった。
佐藤俊男氏は地方独立行政法人山形県酒田市病院機構日本海病院の法人管理部参事として山形県庄内地方の地域医療連携構想の中心的コーディネーターだ。人口28万人を切り、高齢化率35%の庄内地方で、医療機関を再編しなければ病院経営が成り立たなくなるとの危機感から、管内9法人を集約して地域医療連携に向けて、「日本海ヘルスケアネット(仮称)」を進めている。
連合体にするからには、誰もがメリットを共有しなければ意味がない。「事ちゃんの原宿として知られる東京・巣鴨の「とげぬき地蔵通り商店街」を挙げ「あの商店街では店員とお年寄りの会話があるからだ」と述べた。高齢者が楽しめる街づくりは、街の中心部の再活性がポイントだとする一方、施設周囲の田んぼで入居者が農作業する「半農半患」構想を実践している例も紹介した。
松田氏は、「良い病院はその地の地域品質を高める。地域品質の高いところに人は集まる」という神野正博学会長の言葉を紹介して、テーマをまとめた。
全日病ニュース2017年10月1日号 HTML版