全日病ニュース

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中小病院が提供する在宅医療のあり方

中小病院が提供する在宅医療のあり方

【学会企画シンポジウム1】織田病院がMBCの運用状況を報告

 学会企画の「在宅医療と病院」では、地域における実際の取り組みを通して、病院が提供する在宅医療について議論。
 地域包括ケアシステムの中で、病院による直接的・間接的な在宅医療や在宅で療養する患者の緊急時の対応で、民間の中小病院が大きな役割を果たしていることが示された。座長は池端幸彦副学会長。
 厚生労働省医政局地域医療計画課在宅医療推進室長の松岡輝昌氏は、地域包括ケアの見取り図や、在宅医療を必要とする高齢者が今後どれくらい見込まれるかを示した。
 地域包括ケアシステムにおける在宅医療の課題では、①退院支援②日常の療養③緊急時の対応④看取り─をどう確保するかが重要と指摘。一例として、介護保険の地域支援事業として始まった在宅医療・介護連携推進事業で、市町村が在宅医療に関与することになったため、医療機関との連携が必要になっているとした。
 また、高齢化の進展で在宅医療の需要は増大する。松岡氏は、現在の需要を2025年の高齢者増に対応させると約100万人、医療機能の分化・連携による需要増で約30万人の在宅医療の需要が発生する見通しを示した。
地域医療介護支援病院を説明
 日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏は、「大病院ではなく、中小病院、有床診療所、診療所が在宅医療を提供する機能を担う」と強調。日医と四病院団体協議会の合同提言で提唱した「地域医療介護支援病院」の内容を説明し、「これこそが今後の地域包括ケアシステムの中核を担う病院」と位置づけた。
 地域医療介護支援病院は、地域に密着した200床以下の民間病院を想定。
 その機能は、「急性期病床からの転院を受け入れ、在宅復帰を支援するとともに、在宅医・介護施設と連携して在宅患者・施設入所者等の急変を24 時間体制で受け入れ、在宅療養を支援すること」。医療・介護連携の役割も強調している。また、かかりつけ医機能を担う医師について、鈴木氏は日医の認証制度の養成状況を説明し、在宅医療でも重要な役割を果たすとした。
 地域医療機能推進機構(JCHO)高岡ふしき病院副院長の宮﨑幹也氏は、同病院が提供する在宅医療の状況を紹介。
 JCHOはその名称のとおり、地域医療に貢献する目的で組織されている病院で、地域医療に関する研修も行っていると説明した。高岡ふしき病院は、積極的に在宅医療に取り組み、訪問看護ステーションとあわせ、在宅等に訪問診療を行っている。
 病院が直接、在宅医療を提供する利点としては、◇病状悪化時やレスパイトでの入院が容易◇他科の医師を含め往診の代理を頼める◇自院で在宅医療の研修ができる◇多職種連携が迅速にできる─をあげた。課題としては、医師の高齢化も進み、医師確保が困難であることや、介護を必要とする患者の増大への対応、手厚い評価となっている在宅時医学総合管理料を算定することによる患者の負担感などを指摘した。
 全日病副会長の織田正道氏は自院(祐愛会織田病院)の取組みを紹介した。特に、院内のフラット型の医療従事者の連携とメディカル・ベース・キャンプ(MBC)が、在宅医療の支援で、重要な役割を果たしているとした。
 院内のフラット型の医療従事者の連携は、医師を頂点にした従来のピラミッド型の連携に対比されるもの。生活を支える機能が重要になる中で、介護を含めた多職種がその専門性を活かす上でも、フラット型である利点は大きいとした。
 MBCは、患者宅や訪問診療の人の動きに関する位置情報をリアルタイムで視覚化し、把握するシステムを用いて、退院患者の在宅医療を支援するシステム。テレビを介して、在宅の患者と連絡できる体制を整えた。織田氏は、「退院後にかかりつけ医に戻すまでの1週間~ 10日間は、病院が訪問診療を行い、補助的にICTを用いた遠隔的な支援を行っている」と説明。さらに、今後は患者のバイタルサインを含めた患者の状況をより詳しく把握できるシステムの検討を進めているという。

 

全日病ニュース2017年10月1日号 HTML版