全日病ニュース

来年１月の中間整理に向けた検討課題示す

【厚労省・医師の働き方検討会】医師の勤務実態を把握する調査を検討

　厚生労働省は９月21日の「医師の働き方に関する検討会」（岩村正彦座長）に、来年１月の中間整理に向けた今後の検討課題を示した。医師の勤務実態を精緻に把握した上で、医師の仕事の特殊性を踏まえた時間外労働規制のあり方の議論につなげる。医師偏在対策と関連する勤務環境改善策もあわせて検討する。厚労省は、医療機関や診療科など属性別にタイムスタディを実施し、勤務実態を精緻に把握する働き方調査の検討に入る意向を示した。
　厚労省は年内の検討課題として、◇医師の勤務実態の精緻な把握と労働時間の捉え方◇勤務環境改善策◇応召義務のあり方や医師の労働の適正化に関する国民の理解◇時間外労働規制のあり方─などをあげた。医師偏在対策の法案を来年の通常国会に提出する予定であるため、それと関連する勤務環境改善策などの議論を先に進める。
　厚労省は検討課題の一つとして、「勤務実態の精緻な把握」をあげている。
　医師の勤務時間の中で、労働とみなせる部分とみなせない部分を見分けるために不可欠な材料となる。今年１月、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」は大規模な医師の働き方調査を初めて実施し、約１万６千人から回答を得た。
　この調査結果から、勤務実態の様々な側面を明らかにすることができる。
　しかし「精緻な把握」のためには、対象数を少なくして、医療機関や診療科、地域別の属性でタイムスタディを実施する必要があるという。同日の検討会では、調査の実施を求める意見が出され、厚労省は具体的な検討に入る意向を示した。
　また、今回厚労省は、最近の裁判例などで、医師の労働者性がどう捉えられているかを示した。例えば、「産科医の宿日直勤務について、実際に診療していた時間だけでなく、全体が労働時間に当たるとみなされた判決」や「研究という自己研鑽の時間外労働について、病院の利益に関連するため、私的な活動との主張が退けられた判決」を紹介した。
裁量労働制を求める意見相次ぐ
　医師の労働者性を考える前提として、「（法人の代表ではなく、病院等で働く医師は）労働基準法上の労働者である」ということを明確にした。委員から、「医師の労働者性に曖昧さがあるのではないか」との質問が出たが、岩村座長は、「そこに疑問の余地はない」と断言した。さらに、現在、法案化が進んでいる「高度プロフェッショナル制」についても岩村座長は、診療する時間と場所の強制力が強く、その意味での裁量性が低いため、同制度の対象にはなりにくいとの見解を示した。
　それでも委員からは、医師の働き方の特殊性を踏まえた新たな裁量労働制の検討を行うべきとの意見が相次いだ。
　例えば、手術などで特殊な技術を持っている場合などで、裁量労働制を検討する余地があるとの指摘があった。
　また、医師の時間外労働規制の運用が厳格になれば、国民が期待する医療が提供されなくなる可能性があり、そのことに関する「国民の理解」や応召義務の取扱いを課題とした。