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費用対効果の評価基準で技術的な論点示す

【中医協・費用対効果評価専門部会】厚労省は慎重に議論進める姿勢

　中医協の費用対効果評価専門部会（荒井耕部会長）は９月13日、費用対効果評価の試行的導入における価格改定手法について議論を深めた。費用対効果評価の「よい・悪い」を決める評価基準について、技術的な論点が示されたが、委員からは費用対効果評価への具体的な影響がわからないとの意見が出て、結論には至らなかった。厚生労働省は議論を慎重に進める姿勢で、制度設計が予定より遅れている。
　試行的導入では、総合的評価（アプレイザル）の増分費用効果比（ICER）の評価基準で、一般国民に対する支払い意思額調査は実施しないことをすでに決めている。健康に生きられる生存年を延ばすために、いくらまで費用を支払うべきかを尋ねる調査の設計で合意が得られていないためだ。このため、試行的導入では、研究者の過去の調査を参考にすることになった。
　今回厚労省は、主要な４つの調査のうち、どれを参考にすべきかの基準を論点とした。具体的には、◇「個人の自己負担（全額）」ではなく、「社会（税金・社会保険料、自己負担）としての負担」を尋ねる◇支払うべき金額を直接尋ねるのではなく、バイアスが少ないとされる二段階二項選択法を用いる◇より最近に行われた調査とする─とした。これらに従うと、国立保健医療科学院の白岩健主任研究員らが実施した2010年の調査が参考になる。
　あわせて、諸外国の費用対効果評価の仕組みで用いている評価基準について、どれを参考にすべきかの論点も示した。厚労省は「具体的な評価基準が公開されている国のうち、できるだけ医療体制や生活の状況等が日本と近い国を参考にする」とし、諸外国の状況を示した。
　それによると、具体的な評価基準を公表している主要国はイギリス、ポーランド、アイルランド、スロバキアで、イギリスが比較的日本に近いといえる。
　イギリスの費用対効果の「よい・悪い」の分水嶺は２万～３万ポンド。１ポンド138円で換算すると、276万円～ 414万円となる。ただし一定期間の為替レートで換算する方法と、１人当たりGDP等の比率で算出する方法がある。
　１人当たりGDPの比率で算出するほうが、為替レート変動の影響は小さいと厚労省は説明した。
　また、試行的導入の対象品目である抗がん剤のオプジーボや脳深部刺激装置のアクティバRCのように、適応疾患が複数ある場合の対応も論点になった。各適応疾患でICERを計算すると複数の結果が出る。一つの医薬品、医療機器として評価するため、◇もっともよい結果と悪い結果を用いる◇複数のICERの結果を患者割合等で加重平均する◇適応疾患ごとに総合的評価を行い、その結果を患者割合等で加重平均する─の３案が示された。
　これらの論点に対しては、「費用対効果評価への具体的な影響がわからず判断できない」との意見が委員から相次いだ。参考にすべき評価基準の論点では、意見が分かれた。
　全日病会長の猪口雄二委員は、議論を前に進める観点から、「参考にすべき評価基準の調査は『個人の自己負担（全額）』ではなく、『社会としての負担』とし、イギリスの仕組みを参考にした場合は、１人当たりGDPの比率で日本円に換算し、適応疾患が複数ある場合の対応では、複数のICERの結果を患者割合等で加重平均するべき」と述べ、論点の方向性に賛意を示した。