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実効性のある医師偏在対策の議論を再開

実効性のある医師偏在対策の議論を再開

【厚労省・医師需給分科会】無床診療所への規制も検討課題

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」(片峰茂座長)は9月13日、次期通常国会での法案提出を視野に、実効性のある医師偏在対策の議論を再開した。医師確保に関して都道府県の関与を強くすることや医療機関が主体的に協議する場の位置づけ、無床診療所の開業に対する一定の制限、医師の養成段階での対策など、幅広い検討課題について、年末までに結論をまとめる考えだ。
 同分科会は昨年9月に検討すべき医師偏在対策をまとめ、その後、本格的な議論に入る予定だったが、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が開催されたことで、議論が止まった。ほぼ1年が経過し、ようやく再開した。厚労省は今回、◇都道府県の計画的な医師確保対策◇都道府県の医師確保対策の実施体制の強化◇医師養成過程(医学部・臨床研修・専門研修)について、現状と課題、検討の方向性を示した。
 検討の方向性は示さなかったが、外来医療提供体制も検討課題とした。
 都道府県の計画的な医師確保対策では、「医師の多寡を把握できる指標の導入」をあげた。全国ベースで比較できる指標により、どの都道府県・地域で医師が足りないかを明らかにする。
 足りない場合は、医師確保の実効的な対策を進められるよう都道府県の関与を強くする。現状では、都道府県がとれる手段が限られており、権限を強める。指標を導入する場合は、次期医療計画との調整も必要になる。
 都道府県の医師確保対策の実施体制の強化では、地域医療対策協議会を中心とした医療機関が協議する体制を整える。地域医療対策協議会は法律に位置づけられた会議だが、都道府県で開催状況に格差があり、開催ゼロが7県あるとの報告もあった。一方、全日病副会長の神野正博委員は、「協議会と名のつく会議体が都道府県・地域で数多く、混乱する。統合してミッションを明確化すべき」と指摘した。
 外来医療提供体制については、無床診療所の開設に一定の制限を設けることが課題になる。病院の病床には基準病床数制度という規制があるが、無床診療所には規制がなく、その結果、都市部に開設が偏る傾向がある。神野委員は、「地域の医療審議会で無床診療所の開設を認めないと判断することは、あり得るのではないか」と提案した。一方、日本医師会の委員は、「開設は認めないという厳しいものではなく、適切な配置を促すための情報提供がより重要」と述べた。
 医師養成過程については、医学部・臨床研修・専門研修のそれぞれで検討の方向性を明示した。
 医学部に関しては、医学部に地元出身者が増える仕組みを課題にした。医師不足に対応するため、地方の医学部では地域枠を設定し、卒業生の定着を期待しているが、都会出身の医師の定着率が必ずしも高くないという結果が出ている。むしろ、地域枠ではない地元出身の医師の定着率が高く、入学定員の仕組みを工夫する。
 臨床研修に関しては、都道府県に臨床研修病院の指定・定員設定に主体的に関わり、格差是正を進める役割を求める。また、臨床研修制度では、研修医の都市部偏在を防ぐため、2010年度から臨床研修の都道府県別の募集定員に上限を設けている。2020年までに、募集定員を研修希望者の1.1倍まで縮小させる過程にあるが、これをさらに圧縮することを検討する。加えて、臨床研修後も研修医が他の地域に出て行かない対応が必要とした。
 専門研修に関しては、「医師が将来の診療科別の医療需給を見据えて、適切に診療科選択ができる情報提供の仕組みが必要」と指摘。あわせて、働き方改革の観点からも、診療科偏在を是正する仕組みを検討するとした。また、塩崎恭久前厚生労働大臣の談話にあるように、「専門研修がこれ以上偏在を助長しないようにすることが不可欠」とした。具体策の検討の方向性としては、◇将来の診療科ごとの専門医の需要の明確化◇法律上、地方自治体の意見を踏まえる仕組みとする─をあげた。
ビジョン検討会報告書を説明
 同日の分科会では、ビジョン検討会座長の渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科教授が、医師偏在対策に関わるビジョン検討会報告書の内容を説明。
 その上で、「これまでの経過に関して、不快に感じた方もいると思うが、報告書をうまく活用してほしい。医師不足という課題に対し、単に医師を増やす、医師を強制配置するという解決策ではなく、意欲を引き出すことを重視した」と述べた。
 神野委員は、「ビジョン検討会では、医師の働き方調査を行なった。今後の医師需給についてはどう考えるか」と質問した。渋谷参考人は「医師数を抑制すべきか増やすべきかの議論は神学論争になる。一概に結論は出ない。その時々のファクトで判断したい」と答えた。また、医師不足地域での診療実績を医療機関の管理者要件とすることに渋谷参考人は反対したが、別の委員は引き続き検討課題にすべきと主張した。

 

全日病ニュース2017年10月1日号 HTML版

 

 

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  • [2] 第58回全日本病院学会in熊本 開催を決定

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  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年10月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/161001.pdf

    2016年10月1日 ... 在宅医療の目標は都道府県と市町村が協議して設定. 在宅医療等WG ..... 日本専門医
    機構. 表 今後の主要な検討テーマ. 医師偏在対策. 「医師需給分科会」で年末に向けて
    検討を進め、とりま ..... 施設で394施設減少した。無床診療所. は9万3,034施設で、
    928施設増えた。 有床から無床への変更が増えていると. みられる。

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